Archive for the ‘刑事事件’ Category
~刑法を解説~ 第32章 脅迫の罪
~刑法を解説~41回目の本日は、第32章脅迫の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
脅迫の罪
本日は、第32章脅迫の罪に規定されている
第222条 脅迫罪
第223条 強要罪
について解説します。
この章では、脅迫罪と強要罪が規定されています。
脅迫罪とは、生命、身体、自由や名誉、財産に危害を加える旨を告げて、人を脅迫することで成立する犯罪で、告知相手の親族の生命、身体、自由や名誉、財産に危害を加える旨を告げて脅迫した場合も成立します。
脅迫罪は個人の意思の自由を保護法益をしており、脅迫行為そのものを規制するための法律なので、脅迫によって相手が畏怖したかどうかは、脅迫罪の成立に影響を与えません。
ただ脅迫の内容は、相手を畏怖させる程度の内容が必要とされており、不快感や困惑、気味悪さ等を感じるにとどまる内容の場合は、脅迫罪とならないこともあります。
ちなみに相手への告知方法は、言葉によるもの、手紙等による文書であるものでも脅迫罪は成立し、最近ではSNSや、ネット上の掲示板への投稿が脅迫罪となる事件が増加傾向にあります。
続いて223条の強要罪について解説します。
強要罪とは、前条の脅迫罪に該当するような脅迫行為や、暴行を用いて、人に義務のないことをさせたり、人が権利を行使することを妨害することによって成立する犯罪で、未遂についても処罰の対象とされています。
「土下座を強要する」といった内容の強要事件をよく耳にしますが、相手に土下座をさせただけでは、単に義務なきことをその人の意思に反してやらせているだけで、必ず強要罪が成立するとは限りません。
ただ土下座をさせる際に、相手や相手の親族に対する脅迫行為や、暴行行為があれば間違いなく強要罪が成立するでしょう。
脅迫の罪の罰則
①脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
②強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第33章略取、誘拐及び人身売買の罪」に続く
~刑法を解説~ 第31章 逮捕及び監禁の罪
~刑法を解説~40回目の本日は、第31章逮捕及び監禁の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
逮捕及び監禁の罪
本日は、第31章逮捕及び監禁の罪に規定されている法律の中から
第220条 逮捕罪・監禁罪
第221条 逮捕致死(傷)罪・監禁致死(傷)罪
について解説します。
この章では、逮捕と監禁に関する法律が規定されています。
逮捕罪も監禁罪も、個人の行動の自由を保護法益としている法律です。
それではまず第220条に規定されているのが、逮捕罪と監禁罪について解説します。
不法に人を逮捕した場合に成立するのが逮捕罪で、不法に監禁した場合に成立するのが監禁罪です。
逮捕とは、人の身体に対して直接的な拘束を加えて、その行動の自由を奪うことで、監禁とは、人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にして、その行動の自由を奪うことを意味します。
分かりやすく説明すると、人の身体をロープで縛るなど、有形力を用いる方法によって自由を奪うのが「逮捕」に当たり、鍵を閉めて部屋に閉じ込めたりして、行動の自由を場所的に制限するのが「監禁」に当たると言えます。
ちなみに監禁罪の成立は、必ずしも、その場所から脱出することが不可能であることまでは必要とされておらず、著しく困難である程度で足りるとされています。
例えば、バイクの後部に乗せた人がバイクから降車したがっているのに、そのままバイクを停止させずに走行を続けていれば、監禁罪が成立する可能性があるのです。
逮捕、監禁行為によって人を死傷させると、第221条の逮捕致死(傷)罪や監禁致死(傷)罪が成立します。
逮捕・監禁致死(傷)罪が成立するには、逮捕、監禁行為と人の死傷との間に因果関係が必要です。
因果関係さえ認められれば、人を死傷することの故意まで必要とされないので、例えば、建物の2階の部屋に閉じ込めていた被害者が、逃走するために2階の窓から飛び降りて傷害を負った場合などは、監禁致傷罪が成立することになります。
逮捕及び監禁の罪の罰則
①逮捕罪・監禁罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
②逮捕致死(傷)罪・監禁致死(傷)罪の法定刑は、傷害の罪と比較して、重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第32章脅迫の罪」に続く
~刑法を解説~ 第30章 遺棄の罪
~刑法を解説~39回目の本日は、第30章遺棄の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
遺棄の罪
本日は、第30章遺棄の罪に規定されている法律の中から
第217条 遺棄罪
第218条 保護責任者遺棄罪
第219条 遺棄致死傷罪、保護責任者遺棄致死傷罪
について解説します。
この章では、「遺棄」に関する犯罪が規定されています。
遺棄とは、保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことです。
まず第217条に規定されている遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを遺棄した場合に成立する犯罪です。
この法律の主体には制限がありませんが、客体となるのは、条文に列挙されているとおり・老年・幼年・身体障害又は疾病で扶助を必要とする者に限られます。
遺棄とは、前で解説したように保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことですが、遺棄罪でいうところの遺棄行為は、被遺棄者を場所的に移転させることが必要とされます。
続いて第218条の保護責任者遺棄罪について解説します。
保護責任者遺棄罪の客体となるのは、遺棄罪と同様に老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちですが、主体が、こういった人たちを保護する責任のある人たちとなります。
つまり保護責任者遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを保護する責任のある者が遺棄した場合に成立する犯罪で、その行為は、生存に必要な保護をしないことです。
遺棄罪のように、被遺棄者を場所的に移転させるだけでなく、場所的な移転をしなくてもその場所で生存に必要な措置をせずに放置すれば保護責任者遺棄罪が成立する可能性があるのです。
そして遺棄罪や、保護責任者遺棄罪の行為によって、被遺棄者を死傷させた場合に成立するのが、第219条の遺棄致死傷罪や、保護責任者遺棄致死傷罪といった犯罪です。
遺棄の罪の罰則
①遺棄罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②保護責任者遺棄罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
③遺棄致死傷罪や保護責任者遺棄致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第31章逮捕及び監禁の罪」に続く
~刑法を解説~ 第29章 堕胎の罪
~刑法を解説~38回目の本日は、第29章堕胎の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
堕胎の罪
本日は、第29章堕胎の罪に規定されている法律の中から
第212条 堕胎罪
第213条 同意堕胎罪、同意堕胎致死傷罪
第214条 業務上堕胎罪、業務上堕胎致死傷罪
第215条 不同意堕胎罪
第216条 不同意堕胎致死傷罪
について解説します。
この章では、「堕胎」に関する犯罪が規定されています。
この章で規定されている法律は、胎児の生命、身体を保護するとともに、妊娠中の女性の生命、身体を保護しているものもあります。
まず各法律を解説する前に、この章でメインとなる「堕胎」について簡単に説明します。
刑法でいうところの「堕胎」とは、自然分娩に先だって人為的に胎児を母体から分離、排出させることで、その手段、方法は問われません。
それではまず、第212条の堕胎罪について解説します。
堕胎罪は、妊娠中の女性が、薬物を使用するなどして堕胎した場合に成立する犯罪です。
妊娠中の女性自らが堕胎行為に及んだ場合は当然ですが、第三者に堕胎を依頼して堕胎させた場合も女性に対しては堕胎罪が成立し、実際に堕胎した者には、同意堕胎罪や業務上堕胎罪が成立します。
第213条には同意堕胎罪が規定されています。
この法律は、妊娠中の女性から嘱託を受けたり、承諾を得て堕胎させることで成立する犯罪で、堕胎行為によって女性に死傷を負わせた場合は、同意堕胎致死傷罪が成立します。
そして、堕胎したのが、医師や助産師、薬剤師や医薬品販売業者の場合は、第214条の業務上堕胎罪等となります。
最後に解説する第215条に規定されている不同意堕胎罪は、これまでの規定と異なり妊娠している女性の嘱託や承諾なく堕胎することで成立する犯罪です。
ちなみに、不同意堕胎罪等については未遂であっても刑事罰の対象となります。
また不同意の堕胎によって、女性が死傷した場合は第216条の不同意堕胎致死傷罪が成立します。
堕胎の罪の罰則
①堕胎罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②同意堕胎罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。
③同意堕胎致死傷罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
④業務上堕胎罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
⑤業務上堕胎致死傷罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑥不同意堕胎罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑦不同意堕胎致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第30章遺棄の罪」に続く
~刑法を解説~ 第28章 過失傷害の罪
~刑法を解説~37回目の本日は、第28章過失傷害の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
過失傷害の罪
本日は、第28章過失傷害の罪に規定されている法律の中から
第209条 過失傷害罪
第210条 過失致死罪
第211条 業務上過失傷害罪、業務上過失致死罪
重過失傷害罪、重過失致死罪
について解説します。
この章では、「故意」による犯罪を原則としている刑法では珍しく「過失」を処罰するための法律が規定されています。
まず第209条に規定されている過失傷害罪は、過失によって人に傷害を負わせた場合に成立する犯罪です。
過失とは、行為時の客観的状況下において、結果の発生を予見し、これを回避するために何らかの対処をすべきだったにもかかわらず、そういった対処を怠ること、いわゆる不注意を意味します。
簡単に言うと、きちんと注意して行動していたら、人が怪我をすることはなかったであろう時に成立するのが過失傷害罪です。
過失傷害罪は親告罪ですので、被害者等の刑事告訴がない場合は起訴されることはありません。
そして過失によって人を死亡させた場合に成立するのが、第210条に規定されている過失致死罪です。
過失傷害罪が親告罪であるのに対して、過失致死罪は非親告罪ですので、被害者等の告訴がなくても起訴されることがあります。
そして第211条に規定されているのが、業務上過失傷害罪と業務上過失致死罪(前段)、そして重過失傷害罪と重過失致死罪(後段)です。
まず業務上過失傷害罪と業務上過失致死罪について解説します。
これらの犯罪は、行為者の過失が業務上のものである場合に成立する犯罪です。
ここでいう「業務」とは、本来、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であり、かつ、その行為は他人の生命、身体に危害を加えるおそれのあることを要しますが、収入を得るための行為である必要はありません。
続いて重過失傷害罪と重過失致死罪について解説します。
これらは、重大な過失によって人に怪我をさせたり、人を死亡させたりした場合に成立する犯罪です。
ここでいう「重大な過失」とは、過失が重大なことを意味し決して、結果の重大なることをいうのではありません。
過失傷害の罪の罰則
①過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金又は科料」です。
②過失致死罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。
③業務上過失傷害罪、業務上過失致死罪、重過失傷害罪、重過失致死罪の法定刑は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第29章堕胎の罪」に続く
~刑法を解説~ 第27章 傷害の罪~②~
~刑法を解説~35回目の本日は、第27章傷害の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
傷害の罪~②~
本日は、第27章傷害の罪に規定されている法律の中から
第206条 現場助勢罪
第207条 同時傷害の特例
第208条 暴行罪
第208条の2 1項 凶器準備集合罪
2項 凶器準備結集罪
について解説します。
傷害罪と傷害致死罪については こちらをクリック
まず第206条の現場助勢罪について解説します。
現場助勢罪は、傷害や傷害致死の現場において、実際に暴行行為等に加わらず自ら人を傷害していなくても、現場で勢いを助けた場合に成立する犯罪です。
「勢いを助ける」とは具体的にどういった行為でしょうか?
法律的には、勢いを助ける行為とは「せん動的行為」だと言われており、具体的には、傷害の行為者をはやし立て、行為者の気勢を高めるものであれば、言語によるものと動作によるものとを問われません。
そして第207条には、同時傷害の特例が規定されています。
この特例は、共犯関係にない複数の者が、同時に暴行行為に及んで相手に怪我をさせた場合、被害者の傷害の区別(どの怪我を誰が負わせたかの区別)ができないことから、複数の者は共犯として扱われるといった内容の特例です。
続いて第208条の暴行罪を解説します。
暴行罪は、人に暴行を加えることで成立する犯罪です。
ここでいう「暴行」とは、殴る、蹴る、掴む、突き飛ばす等、人の身体に対する有形力の行使だけでなく、人の方に向かって石等を投げつける行為(人に当たらなくても暴行罪となり得る)や、最近では走行中の車やバイクを急接近させる行為でも、暴行罪でいうところの「暴行」に当たります。
暴行によって、人に傷害を負わせた場合は、前回解説した「傷害罪」となります。
最後に解説するのは、第208条の2に規定されている「凶器準備集合罪」「凶器準備結集罪」です。
この法律は、2人以上の者が、他人の生命、身体や財産に共同して危害を加える目的で集合した際、凶器を準備したり、凶器が準備されていることを知って集合した場合に成立する犯罪が凶器準備集合罪です。
そして集合させることによって成立するのが凶器準備結集罪です。
傷害の罪~②~の罰則
①現場助勢罪の法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」です。
②暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
③凶器準備集合罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金」です。
④凶器準備結集罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第28章過失傷害の罪」に続く
~刑法を解説~ 第27章 傷害の罪~①~
~刑法を解説~34回目の本日は、第27章傷害の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
傷害の罪
本日は、第27章傷害の罪に規定されている法律の中から
第204条 傷害罪
第205条 傷害致死罪
について解説します。
まず刑法第204条の傷害罪について解説します。
傷害罪は、人の身体を傷害する事、つまり人に怪我をさせることで成立する犯罪です。
まずここでいう「傷害」とは、外傷的な怪我(身体の完全性の侵害)だけでなく、生理的な障害を意味します。
また、傷害を負わせるための方法は、殴る蹴る等といった暴行行為、つまり人の身体に対する有形力の行使が一般的ですが、こういった方法に限られず、無形的な方法や、不作為による傷害もあり得ます。
続いて傷害罪が成立するために必要となる「故意」についてみていきます。
傷害罪の「故意」は、暴行による傷害の場合、暴行の故意があれば相手に怪我を負わせる意思(傷害の故意)までは必要とされないのが一般的ですが、暴行によらない傷害の場合は、傷害の故意まで必要とされます。
続いて刑法第205条の傷害致死罪について解説します。
傷害した相手が死亡してしまうと傷害致死罪となります。
人が亡くなるという結果だけをみると殺人罪と同じですが、殺人罪が成立するのには殺人の故意、つまり殺意が必要不可欠となるのに対して、傷害致死罪の成立には殺意は必要とされません。
殺人罪については、こちらをクリック
傷害の罪~①~の罰則
①傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
②傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」です。
「~刑法を解説~第27章傷害の罪~②~」に続く
~刑法を解説~ 第26章 殺人の罪~②~
~刑法を解説~33回目の本日は、第26章殺人の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
殺人の罪
本日は、第26章殺人の罪に規定されている法律の中から
第202条 自殺教唆罪
自殺幇助罪
嘱託殺人罪
承諾殺人罪
について解説します。
刑法202の前段では、人を教唆したり幇助して自殺させたことに関する規定(自殺関与)が、そして後段では、人から頼まれたり(嘱託殺人)、許可を得ての殺人行為に関する(同意殺人)規定がされています。
まず自殺関与の自殺教唆罪と、自殺幇助罪について解説します。
自殺教唆罪とは、自殺の意思がない者に対して自殺を決意させて自殺させることによって成立する犯罪です。
そして自殺幇助罪とは、既に自殺の意思がある者に対して自殺行為を援助することによって成立する犯罪です。
最近ではインターネット等で自殺に関するサイトや、書き込み等が多く見受けられますが、こういったサイトやSNSに投稿した場合、その内容によっては自殺関与の罪に問われる場合があるので注意が必要です。
続いて第202条後段の同意殺人に関する法律について解説します。
まず嘱託殺人罪とは、相手から頼まれて(依頼されて)殺害することで成立する犯罪で、同意殺人罪は、相手の同意を得て殺害することで成立する犯罪です。
殺人の罪~②~の罰則
自殺教唆罪・自殺幇助罪・嘱託殺人罪・承諾殺人罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」です。
殺人罪~①~については こちらを クリック
「~刑法を解説~第27章傷害の罪」に続く
~刑法を解説~ 第26章 殺人の罪~①~
~刑法を解説~33回目の本日は、第26章殺人の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
殺人の罪
本日は、第26章殺人の罪に規定されている法律の中から
第199条 殺人罪
第201条 殺人予備罪
について解説します。
新聞やテレビのニュース等で皆さんが一番耳にする凶悪犯罪が、殺人罪ではないでしょうか。
刑法第199条には、人を殺すことによって成立する殺人が規定されています。
殺人罪は、他人の生命を故意に断絶させる犯罪であり、刑法の保護法益のうち最も重要な法益を侵害する犯罪です。
殺人罪では、人を死に至らしめる行為については制限されておらず、幼児に食べ物を与えずに餓死させるような不作為による殺人もあれば、薬と偽って毒薬を飲ませるような間接正犯による殺人もあり得ます。
殺人罪が成立するには故意、つまり殺意が必要不可欠となります。
殺人罪の成立に必要とされる故意は、確定的故意に限られず、未必的であったり、条件付、概括的な故意でもよいとされています。
ただ故意(殺意)が認められない場合は、傷害致死罪だったり、過失致死罪といった犯罪の成立にとどまります。
殺人は、未遂であっても処罰対象となります。(刑法第203条)
そして殺人には予備罪の規定があります。
それが刑法第201条の殺人予備罪です。
殺人予備罪とは、殺人の予備行為を禁止する法律ですが、その予備行為は非常に幅広く、法律的には「殺人の実行を可能又は容易にする行為」だとされています。
凶器を準備するような有形的な行為だけでなく、被害者の行動を下見したり、犯行計画の立案などの無形的な行為であっても予備行為となります。
※ちなみに既に削除されてなくなっている法律が、かつて刑法第200条に規定されていた「尊属殺人罪」です。
尊属殺人罪とは、自分や配偶者の直系尊属(両親や祖父母)を殺害することで成立していた犯罪で、殺人罪よりも重い刑罰が規定されていましたが、平成7年の刑法改正によって削除されています。
殺人の罪~①~の罰則
①殺人罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
②殺人予備罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第26章殺人の罪~②~」に続く
~刑法を解説~ 第25章 汚職の罪~②~
~刑法を解説~32回目の本日は、第25章汚職の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
汚職の罪
本日は、第25章汚職の罪に規定されている法律の中から
第197条1項 収賄罪・受託収賄罪
第197条2項 事前収賄罪
第197条の2 第三者供賄罪
第197条の3第1項2項 加重収賄罪
第197条の3第3項 事後収賄罪
第197条の4 あっせん収賄罪
第198条 贈賄罪
について解説します。
本日は、世間で「汚職」と言われている犯罪について解説します。
まず第197条1項に規定されているのが「収賄罪」と「受託収賄罪」です。
収賄罪とは、公務員が、その職務に関して、賄賂を受け取ったり、賄賂を要求したり、約束した場合に成立する犯罪で、公務員が請託を受けて、賄賂を受け取ったり、要求したり約束することで成立するのが受託収賄罪です。
ここでいう賄賂とは、公務員の職務に関する不正な報酬としての利益を意味し、請託とは、公務員に対して、その職務に関し一定の職務行為をし、又はしないことを依頼することです。
そして公務員になろうとする者が、事前に請託を受けて賄賂を受け取ったりしていた場合には、公務員となった場合に事前収賄罪が成立します。
また請託を受けた公務員が、第三者に賄賂を供与させたり、賄賂の供与を要求、約束した場合は、第197条の2に規定されている「第三者供賄罪」となります。
更に、こういった収賄行為、供賄行為が、不正な行為や、相当な行為を怠ったことに対しての見返りとして行われた場合は、第197条の3第1項や2項に規定されている「加重収賄罪」となります。
公務員であった者が、不正な行為や、相当な行為を怠ったことに対して、公務員を辞めた後に賄賂を受け取る等した場合は、第197条の3第3項の事後収賄罪となります。
197条の4の「あっせん収賄罪」は、公務員が請託を受けて、他の公務員に対して不正な行為や、相当な行為を怠るように斡旋するなどして、賄賂を受け取る等することを規制した法律です。
これまで解説した各種収賄罪の対向する関係となる犯罪が第198条に規定されている贈賄罪です。
贈賄罪は、公務員に対して賄賂を渡す側の行為を規制した法律です。
汚職の罪~②~の罰則
①収賄罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
②受託収賄罪の法定刑は「7年以下の懲役」です。
③事前収賄罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
④第三者供賄罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
⑤加重収賄罪の法定刑は「1年以上の有期懲役」です。
⑥事後収賄罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
⑦あっせん収賄罪の法定刑は「5年以下の懲役」です。
⑧贈賄罪の法定刑は「3年以下の懲役又は250万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第26章殺人の罪~①~」に続く
« Older Entries Newer Entries »