【解決事例】他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引き下ろした窃盗事件で逮捕①

【解決事例】他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引き下ろした窃盗事件で逮捕①

他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引き下ろした窃盗事件で逮捕された事件の解決事例を、本日と明日の2日間にわたって、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。


事件の概要

泉佐野市内の老人介護施設で介護士をしているAさんは、この施設に入居している老人の身の回りのお世話をしていました。
そんな中、Aさんは老人に頼まれて、複数回にわたって施設近所のコンビニエンスストアにあるATM機から、老人から預かったキャッシュカードを利用して、現金を引き下ろす老人のお使いをしていました。
引き下ろした現金は、その都度老人に手渡していたのですが、認知症を患っている老人は、その事実を忘れてしまい、家族に預金通帳から現金が減っていると訴えたのです。
老人の家族は、Aさんが老人の預金から勝手にお金を引き出しているのではないか勘違いし、大阪府泉佐野警察署に被害を訴えたことから、警察が窃盗事件として捜査を開始しました。
そんなある日、Aさんは事情聴取のため警察署への任意同行を求められましたが、Aさんは全く無実の罪を疑われていることに腹を立てて任意同行を拒否しました。
そうしたところ、Aさんは他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引き下ろした窃盗の事実で、逮捕、勾留されてしまったのです。
(実際に起こった事件を基に、一部変更を加えています。)

他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引き下ろすと…

他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引き下ろすと窃盗罪が成立してしまいます。
銀行等の金融機関は、預金者だけが使用することを前提にキャッシュカードを発行しているので、それ以外の人がキャッシュカードを利用してATM機から現金を引き下ろすと、銀行に対する窃盗罪が成立してしまうのです。

なぜ銀行に対する窃盗罪なの?

余り知られていませんが、口座を開設する際に、銀行と預金者は、銀行が預金者が預け入れた現金については銀行が自由に消費することができ、銀行は、預金者が預け入れた現金と同額の現金を預金の引出しという形で預金者に返還することという契約を結んでいます。
つまり、預金者が預け入れた現金は、銀行がすでに消費してしまっており、これについて預金者が占有しているとは言えず、預金者は預金残高に相当する金員の返還請求権を有しているだけとなります。
しかし返還請求権を有する預金者は、いつでも預貯金口座から金員を引き出す権限を持っており、実際いつでも自由に金員を引き出すことができるため、口座にある金員を占有していると理解することができます。
ただ、そのように考えた場合であっても、預金口座の残高に相当する金員については、銀行が保有している資金の一部として占有していることになるので、銀行の当該金員に対する現実的な占有が認められます。
そのため、他人のキャッシュカードを使用してATM機から現金を引出した場合、ATM機内の現金を保管管理している銀行の現実的な占有を侵害したものとして、銀行に対する窃盗罪が成立してしまうのです。

~明日のコラムに続く~

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