Archive for the ‘暴力犯罪’ Category
少年事件の不服申し立て
少年事件の不服申し立て
少年事件の不服申し立てについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
~事例~
大阪府高槻市で主婦をしていたA子は息子が傷害事件を起こしてしまったと高槻警察署から連絡を受けました。
事件は在宅で進んでいくことになりましたが、逮捕もされていないのでそんなに重い処分ではないだろうと思い、特に何の行動もせずに流れに任せていました。
しかし、家庭裁判所に送致されると、観護措置をとられ大阪少年鑑別所で身体拘束されることになってしまいました。
さらに審判では少年院送致となってしまい、保護処分がA子の予想とは全く違ったものとなってしまいました。
A子はこの保護処分に納得がいかず、不服申し立てをする手段はないかと少年事件に強い弁護士に弁護活動を依頼しました。
依頼を受けた弁護士は少年鑑別所へ接見に向かい、抗告に向けて弁護活動を始めることにしました。
(この事例はフィクションです)
刑法第204条
傷害罪
「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」
保護処分に対する不服申立て
一般の刑事事件の場合、判決に対する不服申立ての手段としては控訴、上告があります。
そして、成人と同じように少年事件であっても少年審判で下された保護処分に対する不服申し立て手段があります。
それが抗告です。
抗告 少年法第32条
「保護処分の決定に対しては、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を理由とするときに限り、少年、その法定代理人又は付添人から、2週間以内に、抗告をすることができる。」
抗告の対象となる保護処分には、「保護観察」、「児童自立支援施設・児童養護施設送致」、「少年院送致」があります。
保護処分に納得できない場合は「処分の著しい不当」で抗告していくことになります。
ただ、成人事件の控訴と違って特に処分の著しい不当を理由とする少年事件の抗告は簡単には認められません。
そこで、抗告が認められるかどうかの判断については専門家である弁護士の見解を聞く必要があるでしょう。
なお、抗告したからといって,保護処分の効力が停止されるわけではありませんので裁判所に対し、執行停止の職権発動を求めて認められなければ、抗告している最中でも少年院に行くことになってしまいます。
このように不服申し立てについてはどうしても専門的な知識が必要になってきますので、少年事件に強い弁護士に依頼するようにしましょう。
少年事件には弁護士を
今回の事件は当初、在宅事件として進んでいくことになりました。
このような在宅事件の場合、被疑者段階での国選弁護人は付かないことになります。
少年事件では刑事罰の重さだけでなく、周囲の環境や更生の可能性など様々な要素が保護処分の判断の基準となりますので、周囲の環境を整えるためにも少年事件に強い弁護士を選任するようにしましょう。
また、今回のような傷害事件の場合、被害者との示談交渉が重要になってきます。
刑事事件に強い弁護士ならば、被害者との示談交渉の経験も豊富ですので、示談が締結できる可能性を高めることができます。
少年事件も通常の刑事事件と同じように、弁護活動を早く依頼することによって活動の幅も広がっていきますので、何か事件を起こしてしまったり、事件に巻き込まれたりした場合にはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では審判後の抗告からでも対応させていただくことが可能です。
そのほか、刑事事件、少年事件に強い弁護士をお探しであれば、弊所にご連絡ください。
初回接見、無料法律相談をご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますのでお気軽にお問い合わせください。
大阪府高槻警察署までの初回接見費用37,000円
大阪少年鑑別所までの初回接見費用34,900円
取調べの適法性
長時間の取調べ
長時間の取調べについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
ある日、暴力事件や窃盗事件などであなたが何らかの犯罪の嫌疑をかけられ、警察官から呼び出しを受けたり、警察署までの同行を求められたりした際、取調べが行われます。
警察官は犯罪の嫌疑のある者に対して、任意に取調べを行うことは日常的に行われていますが、任意の取調べの限界については様々な問題点があり、その問題についてご紹介します。
条文
~刑訴法197条1項~
捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定めのある場合でなければ、これをすることができない。
◇深夜の取調べ◇
長時間の取調べが深夜の時間帯まで及ぶ場合には、違法と評価される可能性が高くなるように思われます。
深夜までの取調べについて、犯罪捜査規範に「取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり行うことを避けなければならない。」と規定されています。
もちろん、取調べが深夜に及べば必ず違法だと評価されるということではなく、深夜での取調べが適法であると判断された事例も存在します。
◇具体的事例◇
では、事例をもとに、長時間にわたる取調べが違法となる場合と、適法とされる場合についてご紹介したいと思います。
~違法と判断されたケース~
警察官は、午後10時ころ、路上で値札が付いた酒を所持しているAを発見し、交番に任意同行しました。その後、交番内で取調べを受け、当初否認していましたが、追及を受けて駐輪されていたオートバイの前カゴから盗んだ酒であることを供述しました。
その後、Aの所持品を入れたロッカー等へAを同行した後、午前2時ころから再び、交番において酒を盗んだ場所などについて取調べしました。
Aは、供述を翻し、酒をスーパーから盗んだ旨を供述したものの、その後、再度、買ったものであると弁解し、結局、午前4時ころ、酒をスーパーから盗んだことを供述し、午前5時30分ころ、緊急逮捕されました。
上記事例と同様の事案では、Aに対する取調べは、任意捜査として許容される社会通念上相当な限度を逸脱し、違法であると判断されました。(大阪地方裁判所判決)
判断のポイントについては
①取調べが徹夜にわたる長時間のものである
②被疑事実が重大な事案と言えない
③Aは帰宅したい旨などを警察官に告げてはいないが、積極的に取調べを希望していたわけではなかったこと
上記事例では、Aが酒の窃盗について、当初否認した後、供述を変遷させていたことから、警察官としても、その真偽を見極めようと取調べが長引き、緊急逮捕まで時間を要したものと思われます。
やはり、取調べが長時間かつ深夜にわたるような場合には、被疑者に対し、帰宅の意思を確認すべきでしょうし、取調べに対する明示の承諾を得たり、おおむねの自白を得られたりした段階で、出来るだけ早期の緊急逮捕を検討するといった措置が必要だと思われます。
~適法と判断されたケース~
マンションの一室において男性が殺害され、金品がなくなっていたという事案について、警察官が、午後11時過ぎから、同居の友人であったBの任意取調べを開始しました。
当初、Bは「早く犯人を捕まえて欲しいですし、私も取調べをお願いします。」と述べていました。
その後、Bの取調べは徹夜で行われ、翌午前8時過ぎころ、Bは被害者を殺害して金品を持ち出したことを自供しました。
しかし、この自供は客観的事実と異なる部分があったため、強盗の犯意についても曖昧であったため、警察官が取調べを続けたところ、Bは、強盗の範囲も認め、午後9時ころ逮捕されました。
上記事例と同様の事案では、Bに対する取調べは、任意捜査の限界を超えた違法なものとはいえないと判断されました。(最高裁判決、ただし、反対意見あり)
判断のポイントについては
①事案の重大性
②取調べの冒頭において、Bから進んで取調べをお願いします等との申出があったこと
③取調官は、Bの当初の自白が客観的状況と合致しないことから追及の必要性があったこと
④自白強要や逮捕の際の時間制限潜脱の意図はなかったこと
⑤Bから取調べを拒否したり、帰宅・休息を求めたりするなどの言動がなかったこと
上記事例では、徹夜での取調べが適法とされた事案として著名なものですが、この判示中には、通常、このような長時間の取調べは是認できませんし、本事例についても、Bが被害者の殺害を自供した時点で逮捕手続きをとるなどの方法もあったことなどが指摘された上で、本件取調べの適法性判断は慎重を期すべきであるとされており、長時間の取調べの適法性についての限界事例となります。
大阪市で取調べに関する相談を含め刑事事件に強い弁護士をお探しの方、ご家族、ご友人が逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
初回接見料金:32,400円~
物を隠すと器物損壊
物を隠すと器物損壊
物を隠す器物損壊について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
大阪府交野市に住むAはマンションの隣人Vに対して音がうるさいと腹を立てていました。
何度も注意に行きましたが、一向に改善されなかったため、ある日、Vが家の玄関前に停めていた自転車を近くの空き地に持っていき、放置しました。
後日、大阪府交野警察署から器物損壊の件で話を聞きたいと電話がありましたが、Aは何のことを話しているのか分かりませんでした。
しかし、話をしていくうちに放置した自転車の件だということが分かりました。
マンションと空き地の近くにある防犯カメラに自転車を押すAの姿が映っていたことからAが特定され、器物損壊の容疑者として捜査されることになってしまいました。
困ったAは刑事事件に強い弁護士の無料法律相談へ行くことにしました。
(この事例はフィクションです)
【器物損壊罪】
刑法第261条
器物損壊
「前3条に規定するもの(公用文書等毀棄、私用文書毀棄、建造物等損壊及び同致死傷)のほか、他人の物を損壊し、又は死傷した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」
他人の物を損壊した場合と、他人の動物を傷害した場合に器物損壊罪が成立します。
損壊とは、物の効用を喪失させることをいいます。
つまり、嫌がらせで物を隠すといった隠匿する行為についても、その物を使えなくしている点で効用を喪失させているので損壊に当たるのです。
今回のような物を隠匿するという器物損壊の事例は、一見すると窃盗罪のように見えますが、窃盗罪には権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、利用し又は処分するという不法領得の意思がなければ窃盗罪にはなりません。
今回の事例の様に物を隠すという行為以外にも器物損壊に当たる少し意外な行為として、他人が飼育している魚を放流したり、食器に放尿したり、落書きしたりといった行為が器物損壊にあたるとされた例もあります。
ちなみに器物損壊罪の公訴時効は3年となっておりますので、過去の犯罪行為が発覚して事件になるということも十分にあり得ます。
【器物損壊罪の弁護活動】
器物損壊罪は親告罪ですので、弁護活動としては示談交渉を行っていくことになります。
親告罪とは告訴がなければ、公訴を提起できない罪のことをいいます。
告訴は告訴権者(犯罪により害を被った者)が書面又は口頭で検察官か司法警察員に対してしなければいけません。
なお、告訴の期間は犯人を知った日から6ヶ月以内となります。
親告罪の場合は告訴をされてしまっても被害者との示談を締結し、告訴を取り下げることができれば起訴されることはありません。
しかし、今回の事例のように近隣トラブルが刑事事件に発展したような場合には加害者からの直接の謝罪や示談の要求は受け入れられないことが多いです。
そんな時は専門家である弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。
示談交渉に強い弁護士に頼んで示談を締結することができれば、不起訴処分となり、前科はつかないことになります。
【近隣トラブル】
今回のAは逮捕されていませんが、近隣トラブルが刑事事件化した場合、被害者の近くに住んでいることになるので、被害者との接触によって証拠隠滅を図る可能性が高いと判断され、逮捕・勾留される可能性は通常の事件よりも高くなります。
もしも、逮捕されてしまった場合には弊所の初回接見サービスをご利用ください。
ご依頼から24時間以内に弁護士が接見に向かいます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件、示談交渉に強い弁護士が初回接見、無料法律相談を行っています。
ご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お早めにお問い合わせください。
大阪府交野警察署までの初回接見費用 39,100円
凶器準備集合罪で逮捕
凶器準備集合罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
◇事件◇
Aさんの息子(20歳)は、高校を中退後、仕事をせずに地元の友達と、いわゆる半グレグループを結成して、大阪市中央区の歓楽街を中心に活動しています。
半年ほど前から、この半グレグループのメンバーが、傷害罪や、恐喝罪で次々と警察に逮捕されていましたが、Aさんの息子は何れの事件にも関与しておらず、これまで逮捕されていませんでした。
しかし、ついに昨日、大阪府南警察署の捜査員が自宅に来て、凶器準備集合罪で息子は逮捕されてしまいました。
あまり聞きなれない法律の名前に戸惑ったAさんは、刑事事件に強いと評判の弁護士に「息子さんが起こした凶器準備集合事件」について相談しました。
◇凶器準備集合罪~刑法第208条の2第1項~◇
2人以上の者が、他人の生命、身体、財産に対して共同して危害を加える目的で集合した場所において、凶器を準備し、又はその準備があることを知って集合すれば凶器準備集合罪となります。
◇凶器準備結集罪~刑法第208条の2第2項~◇
同様の目的で、凶器を準備し、又はその準備があることを知って人を集合させれば凶器準備結集罪となります。
Aさんの息子は、対立する半グレグループが経営するお店を襲撃する目的で、仲間たちと近所の公園に金属バットやゴルフクラブ等の凶器を持って集合していましたが、パトロール中の警察官に目撃されたことから、その日は襲撃を諦めて解散していました。
Aさんの息子は、仲間に呼び出されて公園に行ったようですので、上記の凶器準備集合罪が適用されたようです。
Aさんの息子を呼び出した仲間には、凶器準備結集罪が適用されるでしょう。
~共同して害を加える目的とは~
集合した2人以上の者が、凶器を用いて人の殺傷、物の破壊を共同して行う共通の目的をもつだけでなく、そのことをお互いに認識していることが必要です。
ここでいう共同加害の目的は、積極的な攻撃を目指すのでなく、相手からの襲撃に備えて、それに応戦して共同殺傷しようとする受動的な目的でもよいとされています。
ですから、対立する半グレグループが、事前に襲撃を察知して、お店に凶器を持って集合した場合にも凶器準備集合罪が成立するでしょう。
~準備~
凶器準備集合罪でおける「準備」とは、凶器を用意することです。
これは必要に応じていつでも本罪の加害行為に使用できる状態におくことで、その準備は、自分で準備しても、他人と準備しても、他人に指示して自分のために準備させてもよいとされています。
ちなみに「~を知って人に~」の「知って」とは、凶器が準備されていることを認識しての意味で、その認識は未必的なものでもよいとされています。
~集合~
2人以上の者が共同加害の目的をもって、同じ時間、同じ場所に集まることです。
◇凶器準備集合罪・凶器準備終決罪の量刑◇
~凶器準備集合罪~
凶器準備集合罪の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
~凶器準備結集罪~
凶器準備結手罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
凶器準備集合罪と凶器準備結集罪の法定刑は上記のとおりですが、凶器準備結集罪は、凶器準備集合をさせた教唆的な立場にあるために、罰金刑が規定されていない厳しい法定刑が定められているのです。
ご家族、ご友人が凶器準備結集罪で逮捕されてしまった方、大阪市中央区の刑事事件でお困りの方、大阪で刑事事件に強い弁護士をお探しの方は「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談、初回接見サービスのご予約をフリーダイヤル0120-631-881にて24時間承っておりますので、お気軽にお電話ください。
初回法律相談:無料
大阪府南警察署までの初回接見料金:35,400円
公務執行妨害罪で現行犯逮捕
◇事件◇
無職のAさんは、家の近所にあるコンビニまで自転車で行く道中に、よく大阪府西淀川警察署の警察官から職務質問をされます。
毎回、自転車の防犯登録番号から盗品自転車でないか調べられるのですが、何度も職務質問されることに腹を立てたAさんは、昨夜、パトカーに停止を求められた際に、持っていたペットボトルをパトカーに投げつけました。
パトカーのフロントガラスが割れてしまい、Aさんは、公務執行妨害罪で現行犯逮捕されました。
(フィクションです)
◇公務執行妨害罪~刑法95条1項~◇
公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行・脅迫を加えた者は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
~ペットボトルをパトカーに投げつける行為は、公務執行妨害罪の「暴行」に当たるか~
刑法の規定の中には「暴行」という言葉がよくつかわれますが、その意味は各罪名によって異なりますから注意が必要です。刑法の「暴行」は次の4種類に分けられます。
=最広義の暴行=
有形力の行使すべてを含み、対象は人であっても物であってもよいとされています。
=広義の暴行=
人に対する有形力の行使をいいますが、直接暴行だけではなく、間接暴行も含むとされてます。
=狭義の暴行=
人の身体に対する有形力の行使をいいます。
=最狭義の暴行=
人の身体に対する有形力の行使で、人の反抗を抑圧するか、著しく困難にする程度のものとされています。
このうち、公務執行妨害罪の「暴行」は上記②に当たります。
直接暴行とは、人の身体に直接に有形力を加えることですが、間接暴行とは、物に対する有形力で、それにより間接的に一定の人に物理的・心理的に感応を与えるようなものを意味します。
すなわち、後者の場合、直接人の身体に暴行を加える必要はありません。Aさんの「パトカーにペットボトルを投げつけ、フロントガラスを割った」という行為も、この間接暴行に当たるでしょう。
~ペットボトルをパトカーに投げつけただけで、公務執行妨害の「公務の妨害」に当たるか~
上の暴行の程度ですが、当然、職務執行の妨害となる程度のものである必要がありますが、それによって現実に職務の執行が妨害されたことを必要とされません。
これは、公務執行妨害罪の目的が公務の円滑な執行を保護するためにあるからです。
パトカーは、警察官が様々な警察業務を遂行するに当たって必要不可欠なものです。
フロントガラスが割れたパトカーでは、その後の警察業務に従事することができませんので、警察官の業務を妨害したことになるでしょうから公務執行妨害罪が成立する可能性は極めて高いといえます。
業務の妨害が認められなかった場合は、器物損壊罪が成立するにとどまるでしょう。
大阪市西淀川区における刑事事件でお困りの方、ご家族、ご友人が公務執行妨害罪で、警察に逮捕された方が、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府西淀川警察署までの初回接見費用:34,900円
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談、初回接見サービスのご予約は0120-631-881で24時間承っておりますので、お気軽にお電話ください。
あおり運転に殺人罪が適用②
~事件~
堺市で昨年7月に、あおり運転の後、バイクに車を衝突させて、バイクを運転していた男子大学生を死亡させたとして、大阪地方裁判所堺支部は、車を運転していた男性に、殺人罪の成立を認め、懲役16年の判決を言い渡しました。(平成31年1月26日付讀賣新聞朝刊を参考)
昨日は、あおり運転と殺人罪における手段と方法について解説しました。
本日は、殺人罪の故意、つまり殺意と、今回のあおり運転による殺人事件の刑事裁判について解説します。
◇殺人罪の故意~殺意~◇
殺人の故意、つまり殺意がなければ、殺人罪は成立しません。
いかに人の死亡という重大な結果が生じたとしても、故意(殺意)がなければ殺人罪は成立せずに、傷害致死罪や、過失致死罪にとどまるのです。
殺人罪でいう故意(殺意)の内容は、客体に対して単に生命ある人であることの認識で足ります。
行為に関しては、殺人の手段である行為によって死の結果が発生する可能性があることの認識があればよいとされています。
殺人の故意(殺意)は、確定的な故意に限られず、未必的な故意、条件付故意、あるいは包括的な故意であっても殺人罪は成立します。
そもそも故意とは、罪を犯す意思のことで、刑法第38条に規定されているように、法律に規定のある場合を除いては、故意のない行為については刑罰を科すことができません。
故意は、大きく「確定的故意」と「不確定的故意」に分けられます。
行為者が、犯罪事実の実現を確定的に認識、認容していることを確定的故意といいます。
不確定的故意の一つに未必の故意があります。
未必の故意とは、行為者が犯罪事実の実現を可能なものとして認識、認容していることです。
相手の頭を鈍器で殴って殺害した事件を例えると、もし行為者に「この凶器で頭を殴ったら相手が死ぬ」という確定的な認識があって、それを認容して頭を殴りつけて相手を殺せば、確定的故意が認められることになります。
もし行為者が「この凶器で頭を殴れば死ぬかもしれないが、相手が死んでもかまわない」というように、死の可能性を認識しながら、その結果を受け入れて行為に及んだ場合は未必の故意となり、この場合も殺人罪が認められます。
◇刑事裁判◇
それでは今回の刑事裁判を解説します。
新聞等でも報道されているように、今回の裁判で被告人の男性は、車をバイクに衝突させた行為について「車線変更を急ぐためで、追跡していたわけではない。追突も故意ではなく、直前にブレーキをかけた。」と、故意を否認しており、あくまで過失によって起こった交通事故であることを主張していました。
しかし、検察側は、被告人が運転していた車に搭載されていたドライブレコーダーの映像や音声から
・衝突の直前にヘッドライトをハイビームにして、執拗にクラクションを鳴らして被害者に対してあおり運転をしている。
・あおり運転から逃げるために加速して車線変更した被害者のバイクを追随して加速している。
・急ブレーキや急ハンドルといった衝突を回避するための行動をとっていない。
・衝突後もすぐに停止することなく数秒間走行を続け、その後「はい、終わりー」とつぶやいている。
を根拠に、被告人が、故意的に被害者のバイクに車を衝突させていると主張した上で、100キロ近いスピードで走行する車を、同スピードで走行するバイクに衝突させれば、バイクが転倒することは明らかで、それによって運転手が死亡する危険性があることは十分に認識できていたはずだとして、未必の故意による殺人罪を訴えていたのです。
被告人は、自宅とは違う方向に車線変更した理由を「妻を迎えに行くためであって、被害者のバイクを追跡したのではない。」と主張し、急ブレーキをかける等して衝突を回避する行動をとっていないことについては「普段仕事でトラックを運転しているが、トラックは急ブレーキを踏むと荷崩れするので、その癖で急ブレーキをかけなかった。」と主張していました。
更にバイクに衝突した後に「はい、終わりー」とつぶやいた理由については「人生が終わったという落胆してしまってつぶやいた。」と弁解していましたが、裁判官は、被告人の主張をほぼ全面的に退けて、未必の故意を認定して殺人罪を言い渡したようです。
堺市で刑事事件に強い弁護士をお探しの方、あおり運転で警察の捜査を受けておられる方、ご家族、ご友人が殺人罪で警察に逮捕されてしまった方は、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
あおり運転に殺人罪が適用①
~事件~
堺市で昨年7月に、あおり運転の後、バイクに車を衝突させて、バイクを運転していた男子大学生を死亡させたとして、大阪地方裁判所堺支部は、車を運転していた男性に、殺人罪の成立を認め、懲役16年の判決を言い渡しました。(平成31年1月26日付讀賣新聞朝刊を参考)
以前にもこのコラムで紹介した事件の判決が昨日言い渡されました。
全国的に厳しい取締りが行われているあおり運転に対して、ついに殺人罪が認定されましたが、その決め手となったのは、被告人の運転する車に搭載されていたドライブレコーダーで撮影された映像のようです。
今日から二日間にわたって、あおり運転と殺人罪、そして今回の裁判を特集します。
◇あおり運転◇
東名高速道路で一家4人が死傷した事件で世間の注目を集めてからあおり運転が大きな社会問題となりました。
そのため全国の警察ではあおり運転の取締りを強化しています。
そもそもあおり運転とは、危険な追い越しや、前の車に急接近して車間距離を詰めたり、後続車がいるにもかかわらず不必要な急ブレーキをかけて衝突させようとしたり、前方を走行する車両にパッシングや、ハイビーム。クラクションを鳴らす等の危険な運転行為をいいます。
自動車を運転しての行為なので、通常は道路交通法違反による取締りが行われます。
例えば、急接見する行為は、車間距離不保持違反となりますし、危険な追い越しは、追い越し方法違反、幅寄せ行為は安全運転義務違反、執拗にクラクションを吹鳴する行為は、警音器使用制限違反によって取締りを受けますが、刑事事件化されない限りは、交通反則通行制度に則って、違反点数が累積されて、反則金の納付することで刑事罰が科せられることはありません。
しかし、警察庁は、より罰則の重い法令を積極的に適用するように全国の警察に指示しており、暴行罪(刑法第208条~2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料~)や傷害罪(刑法第204条~15年以下の懲役又は50万円以下の罰金~)といった法律が適用されたケースがあります。
ちなみに、新聞等の報道によりますと、昨年1年間で、あおり運転に対してこれらの法令が適用されて刑事事件化されたのは、暴行容疑24件、傷害容疑1件とのことです。
◇殺人罪◇
今回の事件で認定されたのは刑法第199条に定められた殺人罪です。
殺人罪は、人の命を奪うという結果の重大性から、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役と、非常に厳しい法定刑が定められています。
殺人罪は、殺意(故意)をもって人を死に至らしめることで、その手段・方法に制限はありません。
射殺・撲殺・絞殺・毒殺等およそ他人の生命を断絶し得る手段、方法を用いた一切の行為について、殺人罪の実行行為が認められます。
また作為、不作為も問われませんので、幼児を養育する義務を負う者が、殺意をもって、殊更にその生存に必要な食べ物を与えず死に至らしめたような場合は、不作為による殺人罪が成立します。
更に間接正犯による殺人罪も認められます。
例えば、医師が患者を殺そうとして、薬と偽って看護師を使って毒薬を飲ませた場合は、間接正犯による殺人罪が成立するのです。
明日は、殺人罪における「故意」つまり殺意と、今回の裁判を解説します。
堺市で刑事事件に強い弁護士をお探しの方、あおり運転で警察の捜査を受けておられる方、ご家族、ご友人が殺人罪で警察に逮捕されてしまった方は、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府西堺警察署までの初回接見費用:37,700円
殺人罪で裁判員裁判
昨年7月、堺市において、バイクに対して約100キロのスピードであおり運転をした後、車を衝突させてバイクの運転手を死亡させた死亡事故が発生しました。
衝突させた車を運転していた男性(被告人)に対して殺人罪が適用され、この事件の裁判員裁判が大阪地方裁判所堺支部で開かれています。
この事件は、あおり運転に殺人罪が適用された極めて稀な事件で、被告人に殺意があったか否かが争点となりそうです。
(平成31年1月15日付 新聞各社の記事を参考にしています。)
◇あおり運転◇
皆さんもご存知のように、2年前に、東名高速道路において、あおり運転に起因する死亡事故が発生してから、あおり運転が社会問題となり、世間を騒がせています。
警察等の捜査当局は、あおり運転に対して道路交通法以外を適用して取締りを強化しており、これまで、暴行罪や傷害罪、危険運転致死罪等が適用されています。
しかし警察の発表によりますと、あおり運転の摘発は増加傾向にあるようです。
その要因の一つとして、車に搭載されたドライブレコーダーがあります。
今回の事件でも、被告人の車に踏査されたドライブレコーダーの映像と音声が有力な証拠となって検察側は殺人罪での起訴に踏み切ったと思われます。
◇殺人罪◇
殺人罪は、刑法第199条に定められた法律で、皆さんが身近に感じる中で最も重い犯罪ではないでしょうか。
殺人罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の有期懲役」です。
事件の内容にもよりますが、殺人罪で起訴されて有罪が確定した事件のほとんどは、10年以上の長期服役が言い渡されており、その中では数件の死刑判決も言い渡されています。
しかし、殺人罪で起訴された事件でも、適切な弁護活動を行うことによって執行猶予判決を得たり、傷害致死罪等、殺人罪よりも軽い法律の適用を受ける可能性があります。
◇殺人罪の量刑◇
皆さんが気になるのが殺人罪で有罪が確定した場合の量刑ではないでしょうか。
殺人罪は、人の命を奪うという結果の重大性から、非常に厳しい判決が予想されますが、死刑判決が言い渡されることは滅多にないのが現状です。
殺人罪の量刑は、殺人を犯す動機、殺人の手段方法、殺した人数等によって左右されます。被害者側に問題があったり、介護疲れ等が動機となって殺人を犯した場合は、比較的軽い刑が言い渡されますが、逆に、自己中心的な動機で、残虐な手口で人を殺してしまった場合は、非常に厳しい刑が予想されます。
◇裁判員裁判◇
かつては年間10人以上の死刑判決が言い渡されていましたが、裁判員裁判制度が導入されてからは死刑判決が減少傾向にあります。
裁判員裁判とは、平成21年から始まった裁判の制度で、ある一定の重い罪の刑事裁判においては、裁判所によって無作為に選出された国民が、裁判に参加し、裁判官と共に被告人の処分を決定する裁判のことです。
それまでは裁判官が判決を決定していましたことから、法律家目線からの刑事罰しか決定していませんでしたが、裁判員裁判制度が導入されてからは、一般人も審議に参加するようになり、少なからず一般人の意思が刑事罰に反映されるようになったのです。
◇今回の事件を検討◇
新聞各社から報道されているように、今回の刑事裁判で、殺人罪で有罪判決が言い渡されるかどうかは「殺意」を認めるかどうかが争点となります。
殺人罪における「殺意」とは殺人の故意を意味します。
人が死亡するという結果が生じたとしても、この故意がなければ殺人罪は成立しません。
殺人罪の故意は、確定的な殺意までの必要はなく、人の死が発生する可能性を認識していれば足りるとされています。
今回の事件では、検察側は、被告人が
・約100キロのスピードで、被害者が運転するバイクに対してあおり運転を続けていること
・衝突後に被告人が「はい、終わり」と言っていること
を重要視し、少なくとも未必の故意が認められると判断し殺人罪での起訴に踏み切ったのでしょう。
それに対して被告人側は、ブレーキを踏んだが間に合わず衝突したと、過失運転致死罪を主張しているようです。
警察等の捜査当局だけでなく世間全体が、あおり運転に対して非常に厳しい反応になっていることを考慮すれば、今回の刑事裁判で検察側の主張が認められる可能性は十分に考えられます。
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公務執行妨害罪を否認
◇事件◇
大阪市東住吉区に住む会社員Aさんは、自宅近くの路上において車を運転中、対向から走行してきた車の運転手と、どちらが道を譲るかで通行トラブルになりました。
そして相手の運転手が道を譲らないことに腹を立てたAさんは、相手の顔面を殴打して唇を擦過する傷害を負わせてしまったのです。
その後、怪我をした運転手が110番通報しましたが、Aさんは警察官が到着する前に帰宅しました。
しばらくして大阪府東住吉警察署の警察官が自宅を訪ねてきて任意同行を求められましたが、Aさんは「確かに殴ったが、相手が悪いのに何で俺が警察署に行かないといけないんだ。」といって任意同行に応じなかったところ、警察官は、傷害事件の被疑事実と、急速を要し、裁判官に逮捕状を請求する余裕がないことを告げてAさんを緊急逮捕しようとしたのです。
Aさんは、「逮捕状がないのにどうして逮捕できるんだ。」と言い、腕を掴んできた警察官を押し倒してしまいました。
その後の取調べで、Aさんは傷害事件については事実を認めているものの、緊急逮捕した警察官に対する暴行行為について、公務執行妨害罪の適用を否認しています。
(フィクションです。)
◇緊急逮捕◇
逮捕には、①通常逮捕②現行犯逮捕(準現行犯逮捕を含む)③緊急逮捕の3種類があります。
今回の事件でAさんは傷害罪で緊急逮捕されました。
緊急逮捕は、犯罪を犯したからといって誰に対してでも、できる逮捕ではありません。
緊急逮捕できる要件として
(1)死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること
(2)急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
(3)逮捕の必要性があること
です。
Aさんの事件を検討すると、まずAさんの犯した傷害罪は、刑法第204条に規定された法律で、その法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
そのため緊急逮捕の要件の一つである「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」に該当します。
そしてAさんが傷害事件を犯したことを疑うに足りる充分な理由があるかについては、Aさんが逮捕前に、警察官に対して被害者を殴った事実を認めていること等から認められるでしょう。
続いて、犯行後、警察官が現場に到着する前にAさんが自宅に逃げ帰っていることや、その後自宅を訪ねてきた警察官の任意同行に応じないこと等から上記(2)(3)の要件も満たしているでしょう。
◇公務執行妨害罪◇
刑法第95条は「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と公務執行妨害罪を規定しています。
公務執行妨害罪は、公務員を保護するための法律ではなく、公務員によって執行される公務を保護するための法律です。
当然、保護の対象となる公務は正当なものでなくてはいけませんが、上記で検討したように、警察官の緊急逮捕は適法だといえるでしょう。
Aさんは緊急逮捕の手続きを知らなかったために、警察官が、Aさんを傷害罪で緊急逮捕したことが違法だったと誤信していた旨を主張しています。
このように公務員の適法な職務執行を違法な職務執行であると誤信した錯誤は、事実の錯誤ではなく、自らの違法行為を適法行為として認識する「違法性の錯誤」であることから、故意を阻却する事由には当たらないでしょう。
この錯誤は、法令の不知に基づく誤信であるにすぎず、したがって「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」との刑法第38条第3項本文の規定により、Aさんは公務執行妨害罪の故意が認められること37となるでしょう。
大阪市東住吉区における刑事事件でお困りの方、ご家族、ご友人が傷害罪で緊急逮捕されてしまった方、公務執行妨害罪の故意に疑問がある方は、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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傷害事件の教唆犯
~事件~
Aさんは、高石市で従業員十数人の建設会社を経営しています。
先日、居酒屋で従業員全員が参加して忘年会を開催したところ、酒に酔った若い従業員二人が口論を始めました。
この二人は普段から仲が悪く、仕事中にもよくトラブルを起こしており、そのことにうんざりしていたAさんは、二人の従業員を居酒屋の外に連れ出しました。
そして「二人とも思う存分殴り合え。勝った方を来年から現場監督にしてやる。やらないなら二人ともクビだ。」と言って、二人に殴り合いの喧嘩をさせたのです。
二人は、お互いに殴り合い全治2週間の傷害を負いました。
この話を聞いた従業員の家族が激怒し、この出来事を大阪府高石警察署に届け出ました。
(フィクションです。)
◇強要罪~刑法第223条~◇
今回のAさんの行為が強要罪に当たることは間違いないでしょう。
暴行、脅迫を用いて他人に義務なきことを強要するのが「強要罪」です。
Aさんの「やらないなら二人ともクビだ。」という発言は、脅迫に当たると考えられます。
そして、この脅迫を用いて、従業員の二人に殴り合いさせているので、強要罪が成立する可能性は非常に高いでしょう。
強要罪の法定刑は3年以下の懲役です。
◇間接正犯と教唆犯◇
間接正犯と教唆犯は、他人を利用して犯罪を実行させるという点では共通の性格を有していますが、間接正犯は、人を道具として犯罪を実行させていることから、原則的に実際に犯行を行った者は刑事責任を負わず、刑事責任を問われるのは利用者だけです。
その反面、教唆犯は、責任能力のある他人を教唆して、特定の犯罪の実行を決意させ、かつ実行させるもので、その刑事責任は、行為者と利用者の両方に科せられる、いわゆる共犯の一形態です。
それでは、犯罪を強要した場合、強要した者にどのような刑事責任が及ぶのかを検討します。
①強要に至る脅迫が、相手方の意思決定の自由を失わせるものであるときは、実行された犯罪(今回の事件の場合は傷害罪)の間接正犯と強要罪の刑責を負うでしょう。
②強要に至る脅迫が、意思決定の自由を抑圧するに至らないときは、実行された犯罪(今回の事件の場合は傷害罪)の教唆犯と強要罪の刑責を負うでしょう。
今回の事件でAさんは、「やらないなら二人ともクビだ。」と言って従業員を脅迫しています。
この脅迫が、二人の従業員の意思決定にどの程度影響したのかによりますが、この程度の脅迫で、二人が意思決定の自由を失ったとは考えるのは難しいでしょう。
実際にこの様な形態の間接正犯の成立を認めた判例は少なく、例えば殺傷能力の高い凶器を突き付けられて脅迫された場合や、実際に暴行されて、従わななければ更にひどい危害を加えられるかもしれないときなどのように、意思決定の自由を強度に抑圧する場合において、間接正犯が認められるものと解されています。
つまり今回の事件を考えると、Aさんに強要されて殴り合いをした二人の従業員は、傷害罪の刑責を免れることは難しく、お互いに傷害罪の刑責を負うことになります。
◇Aさんの刑事責任◇
Aさんは、傷害罪の教唆犯と、強要罪の刑責を負うことになり、この二つの罪は観念的競合となる可能性が非常に高いでしょう。
観念的競合は、刑を科する上で一罪として扱われ、数個の罪のうち、最も重い罪の法定刑によって処断されます。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は、50万円以下の懲役」で、脅迫罪の法定刑は上記のとおり「3年以下の懲役」です。
重い方の傷害罪の法定刑が適用されるので、Aさんは、起訴されて有罪が確定すれば15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。