公務執行妨害罪を否認

2019-01-08

◇事件◇

大阪市東住吉区に住む会社員Aさんは、自宅近くの路上において車を運転中、対向から走行してきた車の運転手と、どちらが道を譲るかで通行トラブルになりました。
そして相手の運転手が道を譲らないことに腹を立てたAさんは、相手の顔面を殴打して唇を擦過する傷害を負わせてしまったのです。
その後、怪我をした運転手が110番通報しましたが、Aさんは警察官が到着する前に帰宅しました。
しばらくして大阪府東住吉警察署の警察官が自宅を訪ねてきて任意同行を求められましたが、Aさんは「確かに殴ったが、相手が悪いのに何で俺が警察署に行かないといけないんだ。」といって任意同行に応じなかったところ、警察官は、傷害事件の被疑事実と、急速を要し、裁判官に逮捕状を請求する余裕がないことを告げてAさんを緊急逮捕しようとしたのです。
Aさんは、「逮捕状がないのにどうして逮捕できるんだ。」と言い、腕を掴んできた警察官を押し倒してしまいました。
その後の取調べで、Aさんは傷害事件については事実を認めているものの、緊急逮捕した警察官に対する暴行行為について、公務執行妨害罪の適用を否認しています。
(フィクションです。)

◇緊急逮捕◇

逮捕には、①通常逮捕②現行犯逮捕(準現行犯逮捕を含む)③緊急逮捕の3種類があります。
今回の事件でAさんは傷害罪で緊急逮捕されました。
緊急逮捕は、犯罪を犯したからといって誰に対してでも、できる逮捕ではありません。
緊急逮捕できる要件として
(1)死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること
(2)急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
(3)逮捕の必要性があること
です。
Aさんの事件を検討すると、まずAさんの犯した傷害罪は、刑法第204条に規定された法律で、その法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
そのため緊急逮捕の要件の一つである「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」に該当します。
そしてAさんが傷害事件を犯したことを疑うに足りる充分な理由があるかについては、Aさんが逮捕前に、警察官に対して被害者を殴った事実を認めていること等から認められるでしょう。
続いて、犯行後、警察官が現場に到着する前にAさんが自宅に逃げ帰っていることや、その後自宅を訪ねてきた警察官の任意同行に応じないこと等から上記(2)(3)の要件も満たしているでしょう。

◇公務執行妨害罪◇

刑法第95条は「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と公務執行妨害罪を規定しています。
公務執行妨害罪は、公務員を保護するための法律ではなく、公務員によって執行される公務を保護するための法律です。
当然、保護の対象となる公務は正当なものでなくてはいけませんが、上記で検討したように、警察官の緊急逮捕は適法だといえるでしょう。
Aさんは緊急逮捕の手続きを知らなかったために、警察官が、Aさんを傷害罪で緊急逮捕したことが違法だったと誤信していた旨を主張しています。
このように公務員の適法な職務執行を違法な職務執行であると誤信した錯誤は、事実の錯誤ではなく、自らの違法行為を適法行為として認識する「違法性の錯誤」であることから、故意を阻却する事由には当たらないでしょう。
この錯誤は、法令の不知に基づく誤信であるにすぎず、したがって「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」との刑法第38条第3項本文の規定により、Aさんは公務執行妨害罪の故意が認められること37となるでしょう。

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