あおり運転に殺人罪が適用②

2019-01-27

~事件~

堺市で昨年7月に、あおり運転の後、バイクに車を衝突させて、バイクを運転していた男子大学生を死亡させたとして、大阪地方裁判所堺支部は、車を運転していた男性に、殺人罪の成立を認め、懲役16年の判決を言い渡しました。(平成31年1月26日付讀賣新聞朝刊を参考)

昨日は、あおり運転殺人罪における手段と方法について解説しました。
本日は、殺人罪故意、つまり殺意と、今回のあおり運転による殺人事件の刑事裁判について解説します。

◇殺人罪の故意~殺意~◇

殺人の故意、つまり殺意がなければ、殺人罪は成立しません。
いかに人の死亡という重大な結果が生じたとしても、故意(殺意)がなければ殺人罪は成立せずに、傷害致死罪や、過失致死罪にとどまるのです。
殺人罪でいう故意(殺意)の内容は、客体に対して単に生命ある人であることの認識で足ります。
行為に関しては、殺人の手段である行為によって死の結果が発生する可能性があることの認識があればよいとされています。
殺人故意(殺意)は、確定的な故意に限られず、未必的な故意、条件付故意、あるいは包括的な故意であっても殺人罪は成立します。
そもそも故意とは、罪を犯す意思のことで、刑法第38条に規定されているように、法律に規定のある場合を除いては、故意のない行為については刑罰を科すことができません。
故意は、大きく「確定的故意」と「不確定的故意」に分けられます。
行為者が、犯罪事実の実現を確定的に認識、認容していることを確定的故意といいます。
不確定的故意の一つに未必の故意があります。
未必の故意とは、行為者が犯罪事実の実現を可能なものとして認識、認容していることです。
相手の頭を鈍器で殴って殺害した事件を例えると、もし行為者に「この凶器で頭を殴ったら相手が死ぬ」という確定的な認識があって、それを認容して頭を殴りつけて相手を殺せば、確定的故意が認められることになります。
もし行為者が「この凶器で頭を殴れば死ぬかもしれないが、相手が死んでもかまわない」というように、死の可能性を認識しながら、その結果を受け入れて行為に及んだ場合は未必の故意となり、この場合も殺人罪が認められます。

◇刑事裁判◇

それでは今回の刑事裁判を解説します。
新聞等でも報道されているように、今回の裁判で被告人の男性は、車をバイクに衝突させた行為について「車線変更を急ぐためで、追跡していたわけではない。追突も故意ではなく、直前にブレーキをかけた。」と、故意を否認しており、あくまで過失によって起こった交通事故であることを主張していました。
しかし、検察側は、被告人が運転していた車に搭載されていたドライブレコーダーの映像や音声から
・衝突の直前にヘッドライトをハイビームにして、執拗にクラクションを鳴らして被害者に対してあおり運転をしている。
・あおり運転から逃げるために加速して車線変更した被害者のバイクを追随して加速している。
・急ブレーキや急ハンドルといった衝突を回避するための行動をとっていない。
・衝突後もすぐに停止することなく数秒間走行を続け、その後「はい、終わりー」とつぶやいている。
を根拠に、被告人が、故意的に被害者のバイクに車を衝突させていると主張した上で、100キロ近いスピードで走行する車を、同スピードで走行するバイクに衝突させれば、バイクが転倒することは明らかで、それによって運転手が死亡する危険性があることは十分に認識できていたはずだとして、未必の故意による殺人罪を訴えていたのです。
被告人は、自宅とは違う方向に車線変更した理由を「妻を迎えに行くためであって、被害者のバイクを追跡したのではない。」と主張し、急ブレーキをかける等して衝突を回避する行動をとっていないことについては「普段仕事でトラックを運転しているが、トラックは急ブレーキを踏むと荷崩れするので、その癖で急ブレーキをかけなかった。」と主張していました。
更にバイクに衝突した後に「はい、終わりー」とつぶやいた理由については「人生が終わったという落胆してしまってつぶやいた。」と弁解していましたが、裁判官は、被告人の主張をほぼ全面的に退けて、未必の故意を認定して殺人罪を言い渡したようです。

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