Archive for the ‘刑事事件’ Category

~刑法を解説~ 第22章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~④~

2022-10-26

~刑法を解説~28回目の本日は、第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~④~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~①~については こちらをクリック
~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~②~については こちらをクリック
~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~③~については こちらをクリック

わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~④~

第22章に規定されている、わいせつ、強制性交等及び重婚の罪の中から、本日は

第182条 淫行勧誘罪
第184条 重婚罪

について解説します。

まず第182条の淫行勧誘罪とは、営利の目的で、淫行の常習のない女子勧誘して姦淫させることによって成立する犯罪です。
ここでいう「営利の目的」とは、自らの財産上の利益を図る場合だけでなく、第三者に利得させる場合も含みます。
また、一時的な利得を図る目的でもよく、現実に利得することまでは必要とされていません。

続いて第184条の重婚罪とは、配偶者のある者が重ねて婚姻することを禁止している法律です。
簡単に言うと、結婚している人が、別の人と婚姻することを規制している法律で、ここでいう婚姻関係とは事実婚ではなく、法律上でなければなりません。
ちなみに、日本人が外国で婚姻した場合、それが日本でも有効なものであれば、再び婚姻すれば重婚罪が成立します。
戸籍が厳しく管理されている日本において起こりにくい犯罪かと思われがちですが、最近では、偽装した現妻との離婚届を役所に提出して、その後、別の女性と婚姻した男性が重婚罪で警察に逮捕された事件が存在します。
また、重婚する者の相手方となって婚姻した者も処罰の対象となります。

淫行勧誘罪と重婚罪の罰則

淫行勧誘罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
重婚罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。

「~刑法を解説~第23章賭博及び富くじに関する罪」に続く

~刑法を解説~ 第22章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~③~

2022-10-25

~刑法を解説~27回目の本日は、第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~③~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

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わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~③~

第22章に規定されている、わいせつ、強制性交等及び重婚の罪の中から、本日は

第178条 準強制わいせつ罪・準強制性交等罪
第179条 監護者わいせつ罪・監護者性交等罪
第180条 第176条~第180条の未遂罪
第181条 強制わいせつ罪致死傷罪・強制性交等致死傷罪

について解説します。

まず第178条の準強制わいせつ罪準強制性交等罪について解説します。
これらは、心神喪失若しくは抗拒不能な状態の被害者に対して、わいせつな行為や性交等に及んだり、被害者を心神喪失や、抗拒不能な状態に陥らせて、わいせつな行為や性交等に及ぶことによって成立する犯罪です。
酒に酔って泥酔している被害者にわいせつ(性交等)行為に及んだり、治療を受けている患者等に対してわいせつ(性交等)行為に及んだり、睡眠薬を飲ませて意識もうろうとしている被害者に対してわいせつ(性交等)行為に及んだ場合に成立するのですが、この犯罪が成立するには、行為者が、被害者がそういった状態に陥っていることを認識していなければなりません。

続いて第179条の監護者わいせつ罪監護者性交等罪は、18歳未満の被害者に対して、この被害者を現に監護する立場にある者が、その立場を利用してわいせつ(性交等)行為に及ぶことで成立する犯罪です。
ここでいう「現に監護する」とは、18歳未満の者を現に監督し、保護している立場の者を意味し、法律上の監護権を有している者であっても、実際に監護している実態がなければ「現に監護する」には該当しません。

強制わいせつ(性交等)罪・準強制わいせつ(性交等)罪・監護者わいせつ(性交等)罪については未遂であっても処罰の対象となります。(刑法第180条)

強制わいせつ罪や強制性交等罪に関する法律の最後に解説するのは、第181条の強制わいせつ罪致死傷罪強制性交等致死傷罪です。
これらの犯罪は、強制わいせつ強制性交等の際(未遂を含む)に、被害者に怪我を負わせたり、被害者を死亡させると成立する犯罪です。

準強制わいせつ(性交等)罪・監護者わいせつ(性交等)・準強制わいせつ(性交等)致死傷罪の罰則

①準強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」です。
②準強制性交等罪・監護者性交等罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」です。
③強制わいせつ致死傷罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
④強制性交致死傷罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」です。

「~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~④~」に続く

~刑法を解説~ 第22章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~②~

2022-10-24

~刑法を解説~26回目の本日は、第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~①~については こちらをクリック

わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~②~

第22章に規定されている、わいせつ、強制性交等及び重婚の罪の中から、本日は

第176条 強制わいせつ罪
第177条 強制性交等罪

について解説します。

まず第176条の強制わいせつ罪について解説します。
強制わいせつ罪は

①13歳以上の男女に対して、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をすること
②13歳未満の男女に対して、わいせつな行為をすること

を禁止した法律です。
強制わいせつ罪でいうところの「わいせつな行為」とは、前回解説した公然わいせつ罪等と同じく、性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものを意味しますが、その判断基準は、その行為が被害者の性的自由を侵害するかどうかです。
また①の「暴行や脅迫」についてですが、暴行や脅迫の程度は、被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度とされており、強盗罪のように被害者の反抗を抑圧するほど激しいものだったり、強制性交等罪のように被害者の反抗を著しく困難にする程度までも必要とされていません。
また急に背後から女性に抱き付いたような強制わいせつ事件のように、わいせつ行為そのものが、ここでいう暴行ととらえられる場合もあります。
②については、こういった暴行や脅迫が必要とされておらず、単に、わいせつ行為に及ぶと強制わいせつ罪が成立し、例え、相手の同意があったとして強制わいせつ罪が成立することに変わりありません。
ちなみに行為者が、相手が13歳未満であることを知らずにわいせつ行為に及んだ場合は、強制わいせつ罪は成立しないとされています。

続いて第177条の強制性交等罪について解説します。
強制性交等罪

①13歳以上の男女に対して、暴行や脅迫を用いて、性交等すること
②13歳未満の男女に対して、性交等すること

を禁止した法律です。
強制性交等罪でいうところの、暴行や脅迫の程度は、前に解説した強制わいせつ罪におけるものよりも強いものが必要となりますが、被害者の反抗を抑圧する程度までは必要とされていません。
また強制性交等罪で禁止されている行為は、性交だけでなく、肛門性交口腔性交も含まれており、被疑者となる可能性は、男性だけでなく女性であります。
男性が女性に対して無理矢理に、口淫させる行為は当然のこと、女性が男性に対して無理矢理に、口淫しても強制性交等罪となり得るので注意が必要です。

強制わいせつ罪、強制性交等罪の罰則

強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」です。
強制性交等罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」です。

「~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~③~」に続く

~刑法を解説~ 第21章 虚偽告訴の罪

2022-10-20

~刑法を解説~24回目の本日は、第21章虚偽告訴の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

虚偽告訴の罪

第21章は、虚偽告訴の罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第172条 虚偽告訴罪
第173条 虚偽告訴罪の自白による刑の減免について

この章では、人に刑罰又は懲戒処分を受けさせる目的で、虚偽申告をする虚偽告訴罪について定められています。
虚偽告訴罪は、人に刑罰や懲戒処分を受けさせることを目的にして行われたことを必要とする目的犯で、少年事件における保護処分を受けさせる目的であっても成立します。
またここでいう「告訴」には、被害届は含まれません。
また何をもって「虚偽」というかは、申告等の内容をなす事実が客観的真実に反するかどうかです。
虚偽告発も処罰の対象となります。
「告発」とは、犯人又は告訴権者以外の第三者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その訴追を求める意思表示を意味し、単なる犯罪事実の申告では虚偽告訴罪は成立しません。
ちなみに虚偽告訴罪は、故意犯ですので、虚偽告訴罪が成立するには、申告した事実が客観的に虚偽であるだけでは足らず、申告者が、申告した内容が虚偽であることを認識していることが必要とされています。

ちなみに虚偽告訴罪は、 偽証罪 と同じく、自白による刑の減免が規定されており、刑が減刑されるか免除されるかは裁判官の裁量によります。(第173条)

虚偽告訴罪の罰則

この章に規定されてされている虚偽告訴罪の法定刑は「3月以上10年以下の懲役」です。

「~刑法を解説~第22章わいせつ、強制性交等及び重婚の罪~①~」に続く

~刑法を解説~ 第20章 偽証の罪

2022-10-18

~刑法を解説~23回目の本日は、第20章偽証の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

偽証の罪

第20章は、偽証の罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第169条 偽証罪
第170条 偽証罪の自白による刑の減免について
第171条 虚偽鑑定罪・虚偽通訳罪・虚偽翻訳罪

まず第169条の偽証罪について解説します。
偽証罪とは「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をした」場合に成立する犯罪です。
この犯罪の主体となるのは「法律により宣誓した証人」に限られている身分犯で、あくまでも対象となるのは「証人」ですので、裁判にかけられている当事者は対象となりません。
ここでいう「法律により」とは、宣誓について法律の根拠があることを意味します。
「宣誓」とは、良心に従って、真実を述べ何事も隠さず、また何事も付け加えないことを誓うことをいいます。
ところで何をもって「虚偽の陳述」となるのか気になるかと思います。
証人が自分の記憶とは異なる証言、つまり嘘を言うことが、虚偽の陳述なのか、それとも、証人が、客観的な事実と異なる証言を行うことを、虚偽の陳述というのかについては、前述した主観説が採用されています。
つまり証人がそうだと思い違いをしている内容を記憶に基づいて証言していれば、その内容が客観的な事実と異なっていたとしても、偽証罪でいうところの虚偽の陳述には該当しません。
偽証罪は、虚偽の陳述によって誤った裁判等が行われることを防止するための法律ですので、裁判等の確定前に虚偽陳述を自白すれば刑が減刑されたり免除されたりします。
この事が規定されているのが第170条です。
そして法律により宣誓した鑑定人や、通訳人翻訳人が、虚偽の鑑定や通訳、翻訳をした場合に成立するのが、第171条の虚偽鑑定等罪です。

偽証の罪の罰則

この章に規定されてされている偽証罪虚偽鑑定罪虚偽通訳罪虚偽翻訳罪の法定刑は「3月以上10年以下の懲役」です。

「~刑法を解説~第21章虚偽告訴の罪」に続く

~刑法を解説~ 第19章の2 不正指令電磁的記録に関する罪

2022-10-17

~刑法を解説~22回目の本日は、第19章の2不正指令電磁的記録に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

不正指令電磁的記録に関する罪

第19章には不正指令電磁的記録に関する罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第168条の2 不正指令電磁的記録作成罪不正指令電磁的記録供用罪
第168条の3 不正指令電磁的記録取得罪

この章で規定されている犯罪は、平成23年の刑法改正によって新設された刑法の中では比較的新しい法律です。
世の中にパソコンやインターネットが急速に普及し、コンピューターウィルスによって電子計算機で使用者の意図に反する情報処理がなされることを防止することを目的に、この章ではコンピューターウィルス作成提供使用等の行為を規制しています。
この章で規定されている犯罪の保護法益は、コンピューターウイルスの被害にあったコンピューターの使用者だけでなく、社会的法益である世の中のコンピューターの安全性に対する信用とされています。

まず第168条の2では、正当な理由なく、他人のコンピューターに対して、使用者の意図に反する情報処理を行わせることを目的で、そういった情報処理をさせるソフト(コンピューターウィルス)を作成したり、そういった類のソフトを提供することを禁止しています。
他人のコンピューターに対して、使用者の意図に反する情報処理を行わせるソフト(不正指令電磁的記録)とは、俗にいう「コンピューターウィルス」のことです。
分かりやすく言うと、コンピューターウィルスを作成したり、提供したりするのを規制しているのが、第168条の2の「不正指令電磁的記録作成罪」「不正指令電磁的記録供用罪」なのです。
当然ですが、コンピューターウィルスを他人のコンピューターに対して実行する行為も処罰の対象となります。
また不正指令電磁的記録作成罪不正指令電磁的記録供用罪は未遂の場合も処罰の対象となります。(第168条の2第3項)

そして第168条の3の不正指令電磁的記録取得等罪では、コンピューターウィルスを取得したり保管したりすることを禁止しています。

不正指令電磁的記録に関する罪の罰則

不正指令電磁的記録作成罪不正指令電磁的記録供用罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
不正指令電磁的記録取得等罪の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第20章偽証の罪」に続く

~刑法を解説~ 第19章 印章偽造の罪

2022-10-16

~刑法を解説~21回目の本日は、第19章印章偽造の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

印章偽造の罪

第19章には印章偽造の罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第164条1項 御璽等偽造罪
     2項 御璽等不正使用罪
第165条1項 公印偽造罪
     2項 公印不正使用罪
第166条1項 公記号偽造罪 
     2項 公記号不正使用罪
第167条1項 私印偽造罪
     2項 私印不正使用罪
第168条   第164条~167条の各2項の未遂罪

この章では、世の中に存在するあらゆる印章に関する規制がなされています。
まず第164条1項の御璽等偽造罪では、御璽(天皇の印章)国璽(日本国の印章)御名(天皇の署名)を偽造することを規制しており、2項の御璽等不正使用罪では、これらを不正使用することを規制しています。
続いて第165条では公印に関する規制がなされています。
この法律で対象となるのは、公務所の印章又は公務員の署名で、第165条1項の公印偽造罪で、公務所の印章又は公務員の署名を偽造することを規制されており、公務所の印章又は公務員の署名を不正使用すれば、2項の公印不正使用罪となります。
同じ公務所でも印章ではなく、公務所の記号を偽造すれば、第166条1項の公記号偽造罪となり、公記号を不正使用すれば2項の公記号不正使用罪となります、
そして公的機関ではなく、個人(他人)の印章や署名について定められているのが、第167条です。
ここでは第1項で他人の印章や署名を偽造することを、そして2項で他人の印章や署名を不正使用することを規制しています。
この章で規定されている偽造罪が成立するには、全て行使の目的が必要とされています。
またこの章で規定されている不正使用罪は、未遂罪も処罰の対象となります。(第168条)

印章偽造の罪の罰則

①御璽等偽造罪と御璽等不正使用罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
②公印偽造罪と公印不正使用罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
③公記号偽造罪と公記号不正使用罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
④私印偽造罪と私印不正使用罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。

「~刑法を解説~第19章の2不正指令電磁的記録に関する罪」に続く

~刑法を解説~ 第18章の2 支払用カード電磁的記録に関する罪

2022-10-15

~刑法を解説~20回目の本日は、第18章の2支払用カード電磁的記録に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

支払用カード電磁的記録に関する罪

第18章の2には支払用カード電磁的記録に関する罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第163条の2 ①支払用カード電磁的記録不正作出罪
        ②不正作出支払用カード電磁的記録供用罪
        ③不正電磁的記録カード譲渡し等罪
第163条の3 不正電磁的記録カード所持罪
第163条の4 ①前段 支払用カード電磁的記録情報取得罪
         後段 支払用カード電磁的記録情報提供罪

        ②支払用カード電磁的記録情報保管罪
        ③支払用カード電磁的記録不正作出準備罪
第163条の5 第163条の2~第163条の4第1項の未遂罪

この章では、クレジットカードキャッシュカードだけでなく、イコカ等の交通系ICカードやワオン等の電子マネーカード、その他にもETCカードやデビットカードなどの、各種電磁的記録の付随するカードに関する規制がなされています。
この章で規制されている法律は、クレジットカード等の、利用者の増加に伴い、スキミング等の被害が増加した平成13年の刑法改正によって新たに追加されており、刑法の中では比較的新しい法律です。
まず第163条の2第1項の「支払用カード電磁的記録不正作出罪」では、上記したようなカードの情報を不正に作り出すことを規制した法律です。
この犯罪が成立するには、人の財産上の事務処理を誤らせる目的が必要とされていますが、ここでいう人の財産上の事務処理を誤らせる目的とは、簡単に言うと、偽造したカードを使用して財産上の利益を得る目的を意味します。
そして不正に作り出した情報の入ったカードを利用することを規制したのが、第2項の「不正作出支払用カード電磁的記録供用罪」で、不正に作り出した情報の入ったカードを譲渡したり、人に貸したり、輸入するのを規制したのが、第3項の「不正電磁的記録カード譲渡し等罪」です。
また、不正に作り出した情報の入ったカードを持っていると、第163条の3の「不正電磁的記録カード所持罪」となります。

最後に第164条の4では、不正なカードを作り出すのに必要な情報について規制されており、この情報を取得(前段)したり、提供(後段)する、いわゆるスキミング行為を規制しています。
そして2項では、情報の保管が、3項では情報を取得するための機械や原料を準備することが規制されています。

支払用カード電磁的記録に関の罪の罰則

①支払用カード電磁的記録不正作出罪の法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
②不正作出支払用カード電磁的記録供用罪の法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
③不正電磁的記録カード譲渡し等罪の法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
④不正電磁的記録カード所持罪の法定刑は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑤支払用カード電磁的記録情報取得罪、支払用カード電磁的記録情報提供罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑥支払用カード電磁的記録情報保管罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑦支払用カード電磁的記録不正作出準備罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第19章印章偽造の罪」に続く

~刑法を解説~ 第18章 有価証券偽造の罪

2022-10-13

~刑法を解説~19回目の本日は、第18章有価証券偽造の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

有価証券の罪

第18章には有価証券偽造の罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第162条 有価証券偽造(変造)罪等
第163条 偽造(変造)有価証券行使罪等

この章では、有価証券の偽造等について定められています。
有価証券は、権利・義務に関する文書ですが、経済上、手形や小切手のように通貨に代わるものとして使用されていることから、単なる証明書にとどまらず通貨に近い機能を有していることから、違反した場合は文書偽造の罪よりも厳しい法定刑が規定されています。
第162条の有価証券偽造等罪では、有価証券を偽造(第1項)することと、有価証券に虚偽の記載をすること(第2項)を規制しています。
この法律でいうところの「有価証券」とは、約束手形や為替手形、小切手や鉄道等の乗車券、商品券や宝くじ等です。
ちなみに有価証券は、日本の経済を左右する非常に大きな機能がありますので、その重要性から国外犯の適用を受けており、日本国外で外国人が有価証券を偽造(変造)等した場合でも処罰の対象となります。
また行使の目的がなければ有価証券偽造罪等は成立しません。
有価証券等その物を偽造すれば有価証券偽造(変造)罪(1項)となり、正規の有価証券に虚偽の記載をした場合は有価証券虚偽記入罪(2項)となります。

そして第163条の偽造有価証券行使罪等では、偽造(変造)された有価証券や、虚偽の記入がなされた有価証券を行使することが禁止されています。
この法律では偽造(変造)された有価証券や、虚偽の記載がなされた有価証券を、行使目的で交付したり、輸入することも規制しているのが特徴です。

有価証券偽造の罪の罰則

①有価証券偽造(変造)罪等の法定刑は「3月以上10年以下の懲役」です。
②偽造(変造)有価証券行使罪等の法定刑は「3月以上10年以下の懲役」です。

「~刑法を解説~第18章の2支払用カード電磁的記録に関する罪」に続く

~刑法を解説~ 第17章 文書偽造の罪~②~

2022-10-12

~刑法を解説~18回目の本日は、第17章文書偽造の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

文書偽造の罪

第17章には文書偽造の罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

~第154条~第158条は前回を参照~

第159条 私文書偽造等の罪
第160条 虚偽診断書等作成罪
第161条 偽造私文書等行使罪
第161条の2 電磁的記録不正作出及び供用罪

前回に引き続き文書偽造の罪について解説します。
本日最初に解説するのは私文書偽造の罪です。
第159条では、有印私文書偽造罪(第1項)有印私文書変造罪(第2項)無印私文書偽造(変造)罪(第3項)が規定されています。
これらの犯罪でいうところの私文書とは「権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画」のことで、借用書や、委任状、各種契約書は当然のこと、就職活動で会社に提出する自身の履歴書についても、偽った経歴を記載すると私文書偽造の罪に問われる可能性があるので注意が必要です。
また前回解説した公文書偽造等の犯罪と同じく私文書偽造の罪に関しても犯罪が成立するには行使の目的が必要とされています。
続いて第160条の虚偽診断書作成罪についてですが、この法律は主体が医師に限られている身分犯で、この医師が公務所に提出する診断書や検案書、死亡証書に虚偽の記載をした場合に成立します。
続いて第161条には、偽造された私文書や医師が偽造した診断書等を使用(行使)することを規制した偽造私文書等行使罪が規定されています。
そして人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する公・私電磁的記録を、不正に作出した場合に成立するのが第161条の2に規定されている電磁的記録不正作出及び供用罪です。

文書偽造の罪~②~の罰則

①有印私文書偽造罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
②有印私文書変造罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
③無印私文書偽造(変造)罪の法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
④虚偽診断書作成罪の法定刑は「3年以下の禁固又は30万円以下の罰金」です。
⑤偽造私文書等行使罪の法定刑は、行使した偽造文書(診断書)の法定刑によって処断されます。
⑥電磁的記録不正作出及び供用罪の法定刑は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですが、公務所又は公務員により作成されるべき電磁的記録にかかる場合は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第18章有価証券偽造の罪」に続く

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