【弁護士にインタビュー】懲役刑と禁錮刑を一元化し「拘禁刑」創設
懲役刑と禁錮刑を一元化し「拘禁刑」創設される可能性があることについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部の弁護士にインタビューしました。
明治40年から115年間も続いた刑の種類が変更される可能性があることをみなさんはご存知ですか?
現在、日本の刑罰は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料および没収の7種類が刑法で規定されていますが、この中の懲役刑と禁錮刑が一元化されて「拘禁刑」を新たに創設する法案が、来年の通常国会に提出される見通しです。
そこで本日は、「拘禁刑」が新たに創設されることについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部の弁護士にインタビューしました。
懲役刑と禁錮刑
Q.まずは懲役刑と禁錮刑について教えてください。
A.はい。
まず皆さんがよく耳にするであろう「懲役刑」について説明します。
テレビドラマや映画の裁判のシーンで、裁判官が「被告人を懲役〇年に処する。」と言っているあれです。
「懲役刑」とは、強制的に刑務所等に収容されるという身体の自由を奪う刑ですが、収容されている間は刑務作業が義務付けられています。
「禁錮刑」も、刑務所等の刑事収容施設に収容されて身体の自由を奪われるという点では懲役刑と同じですが、禁錮刑では刑務作業が義務付けられていません。
共に身体の自由を奪うという意味で、法律的には自由刑と言われており、自由刑には、懲役刑と禁錮刑の他に「拘留」という刑があります。
「拘留」は、1日以上30日未満、刑事収容施設に収容され、禁錮刑と同じく刑務作業は義務付けられていません。
Q.禁錮刑というのはあまり馴染みがありませんが、どういった犯罪を犯すと禁錮刑が科せられるのですか?
A.確かに刑事裁判で、禁錮刑の実刑が言い渡されるのは珍しいです。
実際に昨年、刑事収容施設に収監された受刑者のほとんどは懲役刑が確定した受刑者で、犯罪白書によると、その数は16,562人です。
逆に禁錮刑が確定して刑事収容施設に収監された受刑者の数は、わずか53人です。
この数字から見ても禁錮刑の実刑が言い渡されるケースが非常に少ないことが分かると思います。
ちなみに禁錮刑が規定されている法律は数多くありますが、皆さんが聞き馴染みのある法律は非常に少ないと思います。
その中でも、交通事故を起こして人に死傷を負わせた時によく適用される「過失運転致死傷罪」や、刑法でしたら「名誉棄損罪」くらいは皆さんも聞いた事があるのではないでしょうか。
拘禁刑の創設
Q.ところで、なぜ拘禁刑が創設されようとしているのですか?
A.大きな理由の一つとして、懲役刑が確定して刑務所等に収監されている受刑者の中には、高齢等様々な理由で刑務作業が困難な受刑者が増えてきていることでしょう。
また刑務作業の時間を確保するが故に、本当に必要とされる再犯防止に向けた教育プログラムや指導を受ける時間が限られてしまっていることも理由の一つではないでしょうか。
逆に禁錮刑で収監されている受刑者のほとんどが刑務作業を希望しているという事実も、拘禁刑を創設しようとする理由の一つだと思います。
Q.先生は拘禁刑の創設に賛成ですか。
A.はい。
時代の変化とともに人々の生活環境も大きく変わり、犯罪も多様化しています。
それなのに100年以上前に制定された法律が維持されていることに疑問を持ちます。
当然犯罪を起こしてしまった人は罰を受けるために刑務所に収容されているのですが、本当に大切なのは、刑務所の中でしっかりと更生して、出所してから再犯しないことです。
そういった意味で、懲役刑と禁錮刑を区別しないことで、それぞれの受刑者に合った更生プログラムを取り入れることができ、その処遇についても柔軟に対応できるようになる期待が持てます。
もちろんそれを実現するにはまだまだ課題も多いかと思います。
特に、全ての受刑者が限られた時間内に、公平に更生プログラムを受けれるような具体的なシステムを構築することは必要不可欠でしょう。