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~刑法を解説~ 第10章 出水及び水利に関するの罪

2022-10-02

~刑法を解説~10回目の本日は、第10章出水及び水利に関するの罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

出水及び水利に関するの罪

第10章には出水及び水利に関するの罪について規定されています。
規定されている内容は

第119条 現住建造物等浸害罪
第120条 非現住建造物等浸害罪
第121条 水防妨害罪
第122条 過失建造物等浸害罪
第123条 水利妨害及び出水危険罪

まず第119条の現住建造物等浸害罪についてですが、この法律は、出水によって現住建造物等を浸害することで成立する犯罪です。
出水とは、制限されている水の自然力を解放させて氾濫させることです。
つまりこの法律を分かりやすく言うと、意図的に水害を起こして、現住建造物等を流失させたり損壊させる他、建造物の効用を減損させることで成立する犯罪です。
また、ここでいう現住建造物等については、以前解説した、現住建造物等放火罪と同じです。
そして客体が非現住建造物等になると、第120条の非現住建造物等浸害罪が成立します。
非現住建造物等浸害罪の成立には、出水によって公共の危険が生じなければ犯罪は成立しません。
続いて第121条の水防妨害罪について解説します。
水防妨害罪は、感覚的には消火妨害罪とよく似ており、水害の際に、水害防止の道具を隠匿したり、損壊する等して、水害の被害拡大措置を妨害することで成立する犯罪です。
第122条の過失建造物等浸害罪ですが、この法律は、不注意(過失)によって出水させてしまって、建造物等を流失させたり損壊させる他、建造物の効用を減損させることで成立する犯罪で、その成立には公共の危険が生じていることが必要となります。
第123条の水利妨害及び出水危険罪ですが、堤防や水門を破壊して水利を妨害したり、出水させた場合に成立する犯罪です。
あまり聞きなれない罪名ですが、今年、福岡県では、水利妨害罪を適用された事件が発生しています。⇒こちらをクリック

出水及び水利に関するの罪の罰則

現住建造物等浸害罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは3年以上の懲役」です。
非現住建造物等浸害罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
水防妨害罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
過失建造物等浸害罪「20万円以下の罰金」です。
水利妨害及び出水危険罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第11章往来を妨害する罪」に続く

~刑法を解説~ 第9章 放火及び失火の罪②

2022-10-01

~刑法を解説~9回目の本日は、前回に引き続き9章放火及び失火の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

放火及び失火の罪

~第113条までは前回を参照~

第114条 消火妨害罪
第115条 他人所有の非現住建造物等放火罪と建造物等以外放火罪の特例
第116条 失火罪
第117条 激発物破裂罪
第117条の2 業務上失火罪
第118条 ガス漏出等及び同致死傷罪

まず第114条の消火妨害罪について解説します。
消火妨害罪とは、消火作業を妨害した場合に成立する犯罪です。
単に消火作業に協力しないというだけであれば軽犯罪法違反が成立するにすぎません。
また消火妨害罪の成立には、妨害行為によって鎮火が遅れたり、火災が拡大したという結果の発生までは必要とされておらず、消化を妨害する可能性のある行為をした時点で既遂となります。
第115条については省略します。
続いて第116条の失火罪について解説します。
失火罪とは失火によって、現住建造物等や非現住建造物等を焼損させてしまった場合に成立する犯罪です。
失火とは、不注意(過失)によって出火させることを意味します。
代表的な事件例ですと、タバコの吸い殻を後始末が原因で発生した火災に失火罪が適用される場合があります。
続いて第117条の激発物破裂罪について解説します。
激発物破裂罪は、火薬等の激発物を破裂させて現住建造物等や非現住建造物等を焼損させた場合に成立する犯罪で、不注意(過失)によって破裂させた場合も成立する可能性があります。
業務上必要な注意を怠ったり、重大な不注意(過失)によって第116条の失火罪と、第117条の1項の当たる激発物破裂罪を犯してしまった場合の加重規定が、第117条の2にされています。
最後に第118条のガス漏出等及び同致死傷罪について解説します。
この法律は、ガスや電気、蒸気を漏出させたり、遮断させて人の生命身体や財産に危険を生じさせた場合に成立する犯罪です。

放火及び失火の罪の罰則

現住建造物等放火罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
②他人所有の非現住建造物等放火罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」で、自己所有の非現住建造物等放火罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
③他人所有の建造物等以外放火罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」で、自己所有の建造物等以外放火罪の法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
延焼罪の法定刑は「3月以上10年以下の懲役」ですが、自己所有の建造物等以外に放火して、現住建造物等や、他人所有の非現住建造物等、建造物等以外に延焼させた場合の法定刑は「3年以下の懲役」です。
消火妨害罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
失火罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。
激発物破裂罪の法定刑は①及び②③と同様です。
業務上失火罪の法定刑は「3年以下の禁固または150万円以下の罰金」です。
ガス漏出等及び同致死傷罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第10章出水及び水利に関する罪」に続く

~刑法を解説~ 第9章 放火及び失火の罪①

2022-09-30

~刑法を解説~8回目は、本日から二日間にわたって第9章放火及び失火の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

放火及び失火の罪

第9章には放火及び失火の罪について規定されています。
規定されている内容は、以下のとおりです。

第108条 現住建造物等放火罪
第109条 非現住建造物等放火罪
第110条 建造物等以外放火罪
第111条 延焼罪
第112条 現住建造物等放火罪及び他人所有の非現住建造物等放火罪の未遂罪
第113条 現住建造物等放火罪及び他人所有の非現住建造物等放火罪の予備罪

~第114条以降は次回を参照~

放火については大きく分けて4つの法律が定められて定められています。
まず第108条の現住建造物等放火罪についてですが、現に人が住居として使用したり、現に人がいる建造物等に放火した場合に成立する犯罪です。
現住建造物等放火罪は、未遂(刑法第112条)や予備行為(刑法第113条)であっても処罰の対象となります。
続いて第109条の非現住建造物等放火罪について解説します。
現に人が住居として使用せず、かつ現に人がいない建造物等に放火した場合に成立する罪ですが、放火した建造物等が他人所有の場合と自己所有の場合によって刑事罰が異なります。
また自己所有の非現住建造物等に放火した場合、公共の危険が生じなかった場合には刑事罰の対象となります。
例えば、周辺に家屋がなく人気のない場所にある自己所有の倉庫に放火した場合は、公共の危険が生じなければ処罰の対象とならないのです。
そして3つ目の放火の罪が第110条に規定されている建造物等以外放火罪です。
この法律は、現住及び非現住建造物に該当しない物に放火した場合に成立する犯罪ですが、建造物等以外放火罪も、非現住建造物等放火罪と同様に、他人所有の物に放火する場合と、自己所有の物に放火する場合で刑事罰が異なります。
また建造物等以外放火罪については、他人所有の物であっても、自己所有の物であっても公共の危険が生じなければ成立しない犯罪で、仮に、放火によって公共の危険が生じなかった場合には器物損壊罪が成立するにとどまります。
そして本日最後に解説するのが延焼罪です。
延焼罪とは、自己所有の非現住建造物等や、自己所有の建造物等以外に放火して、その火が、現住建造物等や、他人所有の非現住建造物等、建造物等以外に延焼した場合に成立する犯罪です。

「次回~刑法を解説~第9章放火及び失火の罪②に続く」

~刑法を解説~ 第8章 騒乱の罪

2022-09-28

~刑法を解説~7回目の本日は、第8章騒乱の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

騒乱の罪

第8章には騒乱の罪について規定されています。
規定されている内容は

第106条 騒乱罪
第107条 多衆不解散罪

第106条の騒乱罪とは、多衆で集合して暴行や脅迫をすることで成立する犯罪で、首謀者だけでなく、集合に参加した者も処罰の対象となり、そこで行われた単純な暴行や脅迫行為は騒乱罪に吸収されますが、暴行や脅迫以外の犯罪行為については、観念的競合の関係となります。
騒乱罪は、暴行や脅迫罪のように被害者を保護するための法律ではなく、社会的法益に対する罪という位置づけにあり、公共の平穏保護法益とした犯罪です。
この法律でいう「多衆」とは、単に人数が多いということだけで判断されるわけではなく、構成員の質や、凶器の有無や、凶器の種類、集合した目的や時間、場所等の事情が考慮されます。

107条の多衆不解散罪は、集合した多衆が、権限のある公務員から解散の命令を3回以上受けtにもかかわらず解散しなかった場合に成立する犯罪です。

騒乱の罪の罰則

騒乱の首謀者には「1年以上10年以下の懲役又は禁錮」の法定刑が設けられています。

騒乱の指揮者や、他人に率先して勢いを助けた者には「6月以上7年以下の懲役又は禁錮」の法定刑が設けられています。

騒乱に付和随行した者には「10万円以下の罰金」の法定刑が設けられています。

集合した多衆を解散させなかった首謀者には「3年以下の懲役又は禁錮」の法定刑が設けられています。

集合した多衆を解散しなかった者には「10万円以下の罰金」の法定刑が設けられています。

「~刑法を解説~第9章放火及び失火の罪」に続く

~刑法を解説~ 第7章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪

2022-09-27

~刑法を解説~6回目の本日は、第7章犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪

第7章には犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪について規定されています。
規定されている内容は

第103条 犯人蔵匿・犯人隠避罪
第104条 証拠隠滅等罪

まず第103条の犯人蔵匿犯人隠避についてですが、この法律は、罰金以上の刑に当たる犯罪を犯した犯人や、拘禁中に逃走した逃走犯を蔵匿したり、隠避した場合に成立する犯罪です。
ここでいう「蔵匿」とは、隠れ場所を提供することを意味し、「隠避」とは、蔵匿以外の方法で、警察等の捜査当局の、犯人や逃走犯の逮捕、発見を妨げる一切の行為を意味します。
例えば、逃走用の車を用意したり、逃走資金を提供するのは当然のこと、携帯電話を貸したりするだけでも犯人隠避罪に問われる可能性があるので注意が必要です。

続いて第104条の証拠隠滅等罪とは、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅したり、偽造、変造することや、偽造や変造された証拠を使用することで成立する犯罪です。
例えば、過去には、ひき逃げ事件を起こした車両を修理する行為が証拠隠滅罪に問われた例があります。

親族は除外される

第105条 親族による犯罪に関する特例

上記した犯人蔵匿罪や犯人隠避罪、証拠隠滅等罪に当たる行為を、犯人又は逃走した人の親族が行った場合は刑が免除されます。

犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪の罰則

犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。

証拠隠滅等罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第8章騒乱の罪」に続く

過去の~刑法を解説~はこちらから

第2章 内乱に関する罪
第3章 外患に関する罪
第4章 国交に関する罪
第5章 公務の執行を妨害する罪
第6章 逃走の罪

~刑法を解説~ 第6章 逃走の罪

2022-09-26

~刑法を解説~5回目の本日は、第6章逃走の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

逃走の罪

第5章には逃走の罪について規定されています。
規定されている内容は

第97条 逃走罪
第98条 加重逃走罪
第99条 被拘禁者奪取罪
第100条 逃走援助罪
第101条 看守等による逃走援助罪

です。

まず第97条の逃走罪についてですが、この犯罪は裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走した場合に成立する犯罪です。
そして逃走の際に物を壊したり、看守に暴行や脅迫を加えたり、仲間と通謀して逃走した場合は第98条の加重逃走罪となります。
皆さんの記憶に新しいかと思います、約4年前に大阪府富田林警察署の留置場にある接見室から逃走し、約1か月半にわたって逃亡生活をしていた男が、この加重逃走罪で有罪判決を受けています。
この事件では、接見室のアクリル板を壊して逃走していたので加重逃走罪が適用されいました。
第97条と98条が 被拘禁者が逃走すること を処罰するための法律であるのに対して、第99条から101条まででは 被拘禁者を逃走させること を処罰するための規定がされています。
拘禁者を奪取する行為をすれば、被拘禁者奪取罪になり、被拘禁者を逃走させる目的で道具を提供する等の援助をした場合は逃走援助罪となります。
また101条は特殊で、被拘禁者を逃走させるという点では前2条と同じですが、その主体が被拘禁者の看守や護送に携わる者に限定されています。

逃走の罪の罰則

逃走罪の法定刑「1年以下の懲役」です。

加重逃走罪の法定刑「3月以上5年以下の懲役」です。

被拘禁者奪取罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。

逃走援助罪の法定刑は「3年以下の懲役」ですが、被拘禁者を逃走させる目的で看守等に暴行や脅迫をした場合の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。

看守等による逃走援助罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。

「~刑法を解説~第7章犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪」に続く

~刑法を解説~ 第5章 公務の執行を妨害する罪

2022-09-25

~刑法を解説~4回目の本日は、第5章公務の執行を妨害する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

公務の執行を妨害する罪

第5章には公務の執行を妨害する罪について規定されています。
規定されている内容は

第95条 公務執行妨害罪及び職務強要罪
第96条 封印等破棄罪
第96条の2 強制執行妨害目的財産損壊等罪
第96条の3 強制執行行為妨害等罪
第96条の4 強制執行関係売却妨害罪
第96条の5 加重封印等破棄等罪
第96条の6 公契約関係競売等妨害罪

です。

第95条では一般的な公務員の職務執行の妨害について、第96条では特殊な公務員の職務執行に対する妨害について規定しています。
皆さんの馴染み深いのは第95条に規定されている公務執行妨害罪ではないでしょうか。
公務執行妨害罪は、公務員を保護するための法律ではなく、公務員の職務執行を保護するための法律で、ここでいう公務員とは、刑法第7条第1項に定められている「公務員」つまり「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員、その他の職員」を意味します。
また駐車監視員などのみなし公務員も公務執行妨害罪の客体となりますので、取締り中の駐車監視員に対して暴行すれば公務執行妨害罪となります。
公務執行妨害罪は、公務中の公務員に対して暴行や脅迫を加えることによって成立する犯罪で、職務執行が現実に妨害されたことまでは必要とされません。

公務の執行を妨害する罪の罰則

公務執行妨害罪や職務強要罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。

封印等破棄罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又は併科」です。
※併科とは、懲役刑と罰金刑の両方が科されることを意味します。

強制執行妨害目的財産損壊等罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又は併科」です。

強制執行行為妨害等罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又は併科」です。

強制執行関係売却妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又は併科」です。

加重封印等破棄等罪の法定刑は「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又は併科」です。

公契約関係競売等妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金又は併科」です。

「~刑法を解説~第6章逃走の罪」に続く

過去の~刑法を解説~はこちらから

第2章 内乱に関する罪
第3章 外患に関する罪
第4章 国交に関する罪

~刑法を解説~ 第4章 国交に関する罪

2022-09-24

~刑法を解説~3回目の本日は、第4章国交に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

国交に関する罪

刑法第4章には国交に関する罪について規定されています。
規定されている内容は

第92条 外国国章損壊等罪
第93条 私選予備及び陰謀罪
第94条 中立命令違反罪

です。

国交に関する罪では、国際紛争の火種となり、場合によっては外交問題にまで発展する可能性のある行為を規制しています。
まず第93条に規定されているのが、外国に対して侮辱を加える目的で、その外国の国旗や国章を損壊等にした時に成立する「外国国章損壊等罪」です。
この法律は、外国に対して侮辱を加える目的がなければ成立せず、こういった目的なく外国国章を損壊しても単に器物損壊罪が成立するにとどまります。
続いて第94条に規定されているのが、「私戦予備及び陰謀罪」です。
この法律は、外国に対する私的な戦闘行為の予備や陰謀を禁止する法律で、実は過去に適用された例があります。
中東地域の過激な武力派組織に戦闘員として参加しようと準備をしていた男性が、私戦予備罪で書類送検されたのです。
今ですと、ロシアとウクライナの戦闘に義勇兵として参加しようとすれば、私選予備罪に問われる可能性があります。
最後に第95条に規定されているのが「中立命令違反罪」です。
この法律は、交戦している外国の局外中立に関する命令に違反した場合に成立するのが「中立命令違反罪」です。

国交に関する罪の罰則

①外国に対して侮辱を与える目的で外国の国章を損壊等した者には「2年以下の懲役又は20万円以下の罰金」の罰則が設けられています。
ただし、その外国政府の要請がない場合は刑事罰を科せられません。

②私戦の予備や陰謀をした者には「3月以上5年以下の禁固」の罰則が設けられています。
ただし、自首した場合は刑事罰を科せられません。

③中立命令に違反した者には「3年以下の禁固又は50万円以下の罰金」の罰則が設けられています。

「~刑法を解説~第5章公務の執行を妨害する罪」に続く

~刑法を解説~ 第3章 外患に関する罪

2022-09-23

~刑法を解説~2回目の本日は、第3章外患に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

外患に関する罪

刑法第3章には外患に関する罪について規定されています。
規定されている内容は

第81条 外患誘致罪
第82条 外患援助罪
第87条 外患誘致罪と外患援助罪の未遂罪
第80条 外患誘致と外患援助の予備及び陰謀罪

です。

外患に関する罪には、日本国が外国から武力行使を受けた際に適用される可能性のある法律で、第81条に規定されている外患誘致罪については、法定刑に「死刑」しか規定されていない非常に厳しい犯罪ですが、これまで外患誘致罪の適用はありません。

外患誘致罪では、外国と通謀して日本国に対して武力行使させることを禁止していますが、第82条の外患援助罪は、日本国に対して武力行使してきた外国に協力することを禁止しています。
外患援助罪の法定刑は死刑だけでなく、無期懲役や2年以上の懲役が規定されています。

また先日解説した内乱に関する罪と同様に、外患に関する罪にも予備罪や陰謀罪の規定(第80条)がありますので、実際に日本国が外国からの武力行使を受けなかったとしても、日本国に対する武力行使の準備をしたり、武力行使してきた外国に対して協力する準備をしただけでも処罰の対象となります。

外患誘致罪の例

日本国の革命を夢見るAは、日本国を侵略しようと企んでいる外国の権力者に接触し、この外国の軍隊に対して、日本国の防衛情報を提供しました。(フィクションです。)

このような場合は、外患誘致罪が適用される可能性が高いでしょう。
ただ外患誘致罪には、死刑しか規定されていないという特殊性から、外患誘致罪の適用には対しては非常に慎重になることが予想されます。

外患援助罪の例

日本国の革命を夢見るAは、日本国に対して武力行使してきた外国の軍隊に接触し、外国の軍隊に対して食料を提供する等の援助を行いました。(フィクションです。)

このような場合は、外患援助罪が適用される可能性が高いでしょう。

外患に関する罪の罰則

①外国と通謀して日本国に対して武力行使させた者(外患誘致)には「死刑」しか規定されていません。つまり起訴されて有罪が確定することによって死刑が確定してしまいます。

②日本国に対して武力行使してきた国を援助した者(外患援助)には「死刑又は無期若しくは2年以上の懲役」の罰則が設けられています。

③外患誘致や外患援助の予備や陰謀をした者には「1年以上10年以下の懲役」の罰則が設けられています。

「~刑法を解説~第4章国交に関する罪」に続く

~刑法を解説~ 第2章 内乱に関する罪

2022-09-22

本日より始まる~刑法を解説~では、刑法に定めらている法律を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
第1回目の本日は、第2章内乱に関する罪について解説します。

内乱に関する罪

刑法第2章には内乱に関する罪について規定されています。
規定されている内容は

第77条 内乱罪
第78条 内乱予備及び陰謀罪
第79条 内乱等幇助罪
第80条 自首による刑の免除

です。

内乱罪とは、いわゆる革命活動、いわゆるクーデターを取り締まるための法律です。
国家の秩序を転覆させる目的で暴動を起こす重大な罪ですので、その罰則も非常に厳しく、首謀者には「死刑又は無期禁錮」の法定刑が定められています。
また内乱を準備したり、計画したりしただけでも処罰の対象(第78条)となりますし、武器を調達するなどして内乱をサポートしただけでも処罰の対象(第79条)となります。
逆に内乱が起こる前に自首した場合は刑を免除する旨も規定されています。

これまで内乱罪が適用された事件はありませんが、戦後ですとオウム真理教事件では内乱罪の適用を弁護士が求めたことがありました。
これは、殺人罪に問われた被告の弁護人が、首謀者以外は死刑が適用されない内乱罪の適用を求めたものでしたが、この主張は裁判所の判決で否定されています。

内乱罪の罰則

①暴動やクーデターなどの内乱行為の首謀者には「死刑または無期禁錮」と非常に厳しい罰則が設けられています。

②暴動やクーデターなど内乱行為を謀議したり、内乱において群衆を指揮した者には「無期禁錮または3年以上の禁錮」の罰則が設けられています。

③暴動やクーデターなどの内乱を計画している集団に対して、職務的に従事した者には「1年以上10年以下の禁錮」の罰則が設けられています。

④暴動やクーデターなどの内乱に参加した者には「3年以下の禁錮」の罰則が設けられています。

⑤暴動やクーデターなどの内乱の準備や謀議をした者には「1年以上10年以下の禁固」の罰則が設けられています。

⑥暴動やクーデターなどの内乱や、内乱の準備や謀議に際して、武器を準備したりする等の手助けをした者には「7年以下の禁固」の罰則が設けられています。

「~刑法を解説~第3章外患に関する罪」に続く

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