~事件~
ある大学のアメリカンフットボール(アメフト)の定期戦で起こった反則行為について、負傷した選手が大阪府警察に被害届を提出しました。
今後、警察が傷害罪で捜査を開始します。(平成30年5月21日に配信された新聞各社のネットニュースを参考)
アメフトの試合中に起こった反則行為が、刑事事件に発展するのでしょうか?大阪の刑事事件に強い弁護士の見解です。
~傷害罪~
みなさんもご存知のように、暴行等によって他人にケガを負わせると傷害罪に当たります。
傷害罪は刑法第204条に定められた法律で、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金の罰則が規定されています。
暴行による傷害罪が成立するには、「相手が怪我をする」という傷害の認識や、「相手にケガをさせてやろう」という傷害の故意まで必要とされていませんが、少なくとも暴行の故意は必要とされます。
~違法性の阻却~
今回の事件となっているアメフトや、ラグビー、ボクシング等、相手選手と激しく接触するスポーツには、怪我がつきものです。
この様なスポーツで相手選手にケガをさせられても刑事事件に発展することはありません。
それは刑法第35条で「法令又は正当な業務による行為は罰しない」と違法性阻却事由について規定しているからです。
ここで違法性を阻却しているのは、業務上の正当行為だけでなく、スポーツも社会通念上「正当」と認められる行為ですので、当然、競技中の傷害は違法性が阻却されます。
ただしスポーツにはルールが定められており、そのルールはスポーツを円滑に進め、競技として成立させるためだけでなく、選手の安全にも配慮して定められています。
そのルールを著しく無視した反則行為に対しては、競技中とはいえ、違法性が阻却されない可能性があります。
ただ競技中に起こった反則行為が刑事事件に発展したのは、野球の乱闘で相手選手を殴って怪我をさせた事件など数件しかありません。
しかし今回の事件では、残された映像から故意的に反則行為に及んでいる可能性があり、既に警察が被害届を受理していることから、警察が、反則した選手や、監督等の関係者に対して事情聴取することは間違いなく、その内容によっては、傷害罪が適用される可能性があります。