新聞やテレビ、インターネットで、東京オリンピックを目指すカヌーの選手が、ライバル選手の飲み物に禁止薬物を混入した事件が報道されています。
被害を受けたライバル選手はドーピング検査で陽性反応を示し、資格停止処分を受けていたものの、事件の発覚によってその処分は取り消されました。
今回のドーピング問題を起こした選手に、傷害罪を問えるのでしょうか?
大阪の刑事事件専門の弁護士が解説します。
傷害罪
今回のドーピング問題が、刑事事件として扱われる場合、その一つとして傷害罪が考えられます。
刑法で、傷害罪は「人の身体を傷害する事」と定義されており、これを分かり易く言い換えると「人を怪我させる事」です。
傷害の方法
傷害の方法については、暴行のように有形的方法は当然の事、人を恐怖に陥れて精神障害を起こさせるような無形的方法でも傷害罪は成立します。
また、病人に薬を与えないで病状を悪化させるような不作為による方法でも傷害罪が認められる可能性があります。
傷害の意義
ちなみに傷害の意義は
①人の身体の完全性を害すること
②人の生理的機能に障害を与えること
の何れかとされていますが、刑事手続きの実務上は、医師の診断書によって傷害罪が成立するか否かが判断されるケースがほとんどです。
今回のドーピング問題を起こした選手に傷害罪が適用されるか否かを検討すると、「飲み物に禁止薬物を入れる行為」に関しては、傷害の方法として傷害罪が成立すると考えられます。
しかし傷害罪が成立するか否かは、誤って禁止薬物を飲んだ被害者が傷害を負ったか否かが問題となります。
つまり、誤って禁止薬物を飲んだ選手の身体に傷害が生じたと、医師が判断した場合、このドーピング問題を起こした選手は、傷害罪を問われる可能性があります。