Archive for the ‘刑事事件’ Category
外国人による窃盗事件
◇事件◇
ブラジル人のAさんは、去年来日し、大阪市大正区の飲食店で働いています。
来日してから日本語を勉強し、ある程度の日常会話は話せるようになりましたが、難しい日本語はまだ理解することができません。
ある日、Aさんは仕事帰りに立ち寄ったコンビニで、缶酎ハイ等の食料品2000円相当を万引きしてしまいました。
店員に捕まったAさんは、通報で駆け付けた大阪府大正警察署の警察官によって警察署に連行されて、取調べを受けた後に留置場に収容されています。
Aさんの働いている飲食店の店長は、外国人による窃盗事件を扱った経験のある刑事事件に強い弁護士を探しています。
(フィクションです)
◇窃盗事件◇
Aさんの犯した万引きは、刑法第235条の窃盗罪に当たります。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
被害額が2000円程度の偶発的犯行による万引き事件ですと、逮捕される可能性は低く、不拘束による取調べが行われた後に検察庁に事件書類が送致されます。
そして検察官が起訴するかどうかを判断するのですが、被害品を買い取る等して被害弁償している場合は、初犯であれば不起訴処分となるでしょう。
◇外国人による刑事事件◇
外国人の方が、日本国内で犯罪を犯し警察に逮捕された場合、日本人と同じように刑事手続きが進められる事になります。
窃盗事件を起こして警察に逮捕された場合、逮捕から48時間までは警察の留置場に拘束される事となり、その間に勾留を請求するか否かが判断されます。
勾留が請求されない場合は、逮捕から48時間以内に釈放され、その後は不拘束状態での捜査が継続されますが、勾留が請求された場合は、検察庁に送致されて、そこで検察官の取調べを受けた後に、裁判所に勾留請求される事となります。
そして裁判官が勾留を認めると、その日から10日~20日間は再び警察の留置場若しくは拘置所に拘束されたまま取調べを受ける事となります。
勾留の最終日に検察官が起訴するか否かを決定し、起訴されなければ釈放となりますが、起訴された場合は、その後の刑事裁判で最終的な処分が決定します。
ただ同じ犯罪でも、日本人の被疑者よりも外国人の方が、逮捕されるリスクや、その後の身体拘束を受けるリスクは高くなるでしょう。
また取調べを受ける中でも様々なリスクが生じてしまいます。
その代表的なのが言葉の壁です。
日本語が通じなければ、通訳を介して取調べが行われますが、自身の主張が書類になっているかに不安を感じてしまう外国人の方は少なくありません。
また生活習慣の違いも大きな壁となるでしょう。
もし逮捕、勾留された場合は、警察署の留置場に収容されることになります。
留置場での生活は、宗教上の理由等が、ある程度考慮されると言われていますが、日本との生活習慣の違いが精神的なストレスになることは間違いありません。
◇強制退去◇
日本で刑事事件を起こしてしまった外国人の方が一番心配されているのが強制退去についてです。
実際に、日本で生活する外国人が刑事事件を起こした場合、処分が決定し、その刑を終えた時点で日本から強制退去される可能性があります。
入管法によると、有罪判決が強制退去に結び付くのは、1年を超える実刑判決とされていますが、薬物事件や、窃盗罪、詐欺罪等の財産犯事件を起こした外国人の場合、その方の在留資格によっては、執行猶予付の判決であっても判決の確定と共に強制退去になる事があります。
刑事事件を専門にしている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、これまで多くの外国人の方の刑事弁護活動を行ってまいりました。
刑事事件を起こした外国人の精神的なストレスを少しでも軽減できるように配慮した刑事弁護活動を心がけておりますので、大阪市大正区で起こった刑事事件でお困りの外国人の方や、外国人の知人が窃盗罪で警察に逮捕されてしまった方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府大正警察署までの初回接見費用:36,600円(別途通訳料を頂戴します)
覚せい剤の密売
◇事件◇
大阪市西成区に住むAさんは近所の居酒屋でアルバイトしています。
この居酒屋では、店長が仕入れてきた覚せい剤を、常連のお客さんに密売しており、Aさんも覚せい剤の密売を手伝っていました。
ある日、Aさんが一人でお店にいる時に、厚生労働省近畿麻薬取締局の捜査員が、捜索差押許可状を持って来て、店内を捜索されました。
そして、厨房に隠していた覚せい剤が見つかってAさんは、覚せい剤所持罪で現行犯逮捕されたのです。
時を同じくして店長も、覚せい剤の譲渡違反で逮捕されていたようです。
Aさんは、20日間の勾留後に、覚せい剤の営利目的所持で起訴されてしまいました。
(このお話はフィクションです。)
◇営利目的の覚せい剤所持事件◇
覚せい剤取締法で、覚せい剤の所持を禁止しています。
自分で使用する目的などの、非営利目的の単純な所持事件ですと、起訴されて有罪が確定すれば10年以下の懲役が科せられます。
特別な事情がない限りは、初犯だと執行猶予判決となる可能性が高く、刑務所に服役することは免れますが、再犯の場合は、実刑判決の可能性が高くなります。
密売等の営利の目的で覚せい剤を所持していたと認められた場合は、営利目的の覚せい剤所持罪となり、この罪で起訴されて有罪が確定すれば、1年以上の有期懲役が科せられることとなり、情状によっては300万円以下の罰金を併せて科せられます。
~営利の目的~
覚せい剤取締法では、大きく分けて所持、譲渡、譲受、使用、輸出入、製造を禁止しており、それぞれの違反形態は、非営利目的と営利目的とに分かれています。
そして営利目的には加重処罰規定を設けているのです。
このような加重処罰規定が設けられたのは、財産上の利得を目当てとして犯罪を行うことが道義的に厳しく非難に値するというだけでなく、一般にその行為が反復され、覚せい剤の濫用を助長・増進させ国民の保健衛生上の危害を増大させる危険性が高いからです。
営利の目的は、犯人が自ら財産上の利益を得、又は第三者に得させることを動機・目的とする場合を意味します。
警察等の捜査当局は、押収した覚せい剤の量や、実際に覚せい剤を買った人物がいるかどうか(密売履歴)、覚せい剤を密売して得た財産等から営利目的を立証するのですが、単に覚せい剤を有償で譲り渡すことだけで営利目的と認められるわけではありません。
営利目的の覚せい剤所持罪は、非営利目的の単純な所持罪に比べて非常に重たい法定刑が定められています。
営利目的の覚せい剤所持事件で逮捕、起訴された場合は、初犯であっても刑務所に服役する可能性があるので、早期に薬物事件に強い弁護士を選任する事をお勧めします。
◇麻薬取締官◇
麻薬取締官は、警察官とは異なり、違法薬物の捜査がのみが許されてる、厚生労働省の職員のことで、巷では「麻薬Gメン」と呼ばれています。
麻薬取締官は、薬物捜査に限って捜査権が与えられており、拳銃や警棒等の武器の所持も法律で認められています。
麻薬取締官は、麻薬及び向精神薬取締法やあへん法、麻薬特例法で、警察捜査では許可されていない「おとり捜査」がある程度許されています。
そのため麻薬取締官は薬物に対する専門的な知識を有しており、麻薬取締官の多くは薬剤師の国家資格を有しています。
麻薬取締官の扱う薬物事件は、大規模な組織的な密売、密輸、栽培事件や、有名人、著名人が起こした事件が多く、最近では、大阪府内で大規模な大麻の密造事件が摘発されました。
麻薬取締官に逮捕された場合でも、基本的な捜査手続きは警察に逮捕された場合と同じですが、麻薬取締官が所属する厚生労働省の地方厚生局麻薬取締部にある留置場は、勾留中の被疑者を収容する事ができないので、拘置所で身体拘束を受ける場合がほとんどです。
大阪市西成区で営利目的の覚せい剤所持事件に強い弁護士をお探しの方、ご家族、ご友人が麻薬取締官に逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府西成警察署までの初回接見料金:35,400円
大阪拘置所までの初回接見料金:36,200円
殺人罪で裁判員裁判
昨年7月、堺市において、バイクに対して約100キロのスピードであおり運転をした後、車を衝突させてバイクの運転手を死亡させた死亡事故が発生しました。
衝突させた車を運転していた男性(被告人)に対して殺人罪が適用され、この事件の裁判員裁判が大阪地方裁判所堺支部で開かれています。
この事件は、あおり運転に殺人罪が適用された極めて稀な事件で、被告人に殺意があったか否かが争点となりそうです。
(平成31年1月15日付 新聞各社の記事を参考にしています。)
◇あおり運転◇
皆さんもご存知のように、2年前に、東名高速道路において、あおり運転に起因する死亡事故が発生してから、あおり運転が社会問題となり、世間を騒がせています。
警察等の捜査当局は、あおり運転に対して道路交通法以外を適用して取締りを強化しており、これまで、暴行罪や傷害罪、危険運転致死罪等が適用されています。
しかし警察の発表によりますと、あおり運転の摘発は増加傾向にあるようです。
その要因の一つとして、車に搭載されたドライブレコーダーがあります。
今回の事件でも、被告人の車に踏査されたドライブレコーダーの映像と音声が有力な証拠となって検察側は殺人罪での起訴に踏み切ったと思われます。
◇殺人罪◇
殺人罪は、刑法第199条に定められた法律で、皆さんが身近に感じる中で最も重い犯罪ではないでしょうか。
殺人罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の有期懲役」です。
事件の内容にもよりますが、殺人罪で起訴されて有罪が確定した事件のほとんどは、10年以上の長期服役が言い渡されており、その中では数件の死刑判決も言い渡されています。
しかし、殺人罪で起訴された事件でも、適切な弁護活動を行うことによって執行猶予判決を得たり、傷害致死罪等、殺人罪よりも軽い法律の適用を受ける可能性があります。
◇殺人罪の量刑◇
皆さんが気になるのが殺人罪で有罪が確定した場合の量刑ではないでしょうか。
殺人罪は、人の命を奪うという結果の重大性から、非常に厳しい判決が予想されますが、死刑判決が言い渡されることは滅多にないのが現状です。
殺人罪の量刑は、殺人を犯す動機、殺人の手段方法、殺した人数等によって左右されます。被害者側に問題があったり、介護疲れ等が動機となって殺人を犯した場合は、比較的軽い刑が言い渡されますが、逆に、自己中心的な動機で、残虐な手口で人を殺してしまった場合は、非常に厳しい刑が予想されます。
◇裁判員裁判◇
かつては年間10人以上の死刑判決が言い渡されていましたが、裁判員裁判制度が導入されてからは死刑判決が減少傾向にあります。
裁判員裁判とは、平成21年から始まった裁判の制度で、ある一定の重い罪の刑事裁判においては、裁判所によって無作為に選出された国民が、裁判に参加し、裁判官と共に被告人の処分を決定する裁判のことです。
それまでは裁判官が判決を決定していましたことから、法律家目線からの刑事罰しか決定していませんでしたが、裁判員裁判制度が導入されてからは、一般人も審議に参加するようになり、少なからず一般人の意思が刑事罰に反映されるようになったのです。
◇今回の事件を検討◇
新聞各社から報道されているように、今回の刑事裁判で、殺人罪で有罪判決が言い渡されるかどうかは「殺意」を認めるかどうかが争点となります。
殺人罪における「殺意」とは殺人の故意を意味します。
人が死亡するという結果が生じたとしても、この故意がなければ殺人罪は成立しません。
殺人罪の故意は、確定的な殺意までの必要はなく、人の死が発生する可能性を認識していれば足りるとされています。
今回の事件では、検察側は、被告人が
・約100キロのスピードで、被害者が運転するバイクに対してあおり運転を続けていること
・衝突後に被告人が「はい、終わり」と言っていること
を重要視し、少なくとも未必の故意が認められると判断し殺人罪での起訴に踏み切ったのでしょう。
それに対して被告人側は、ブレーキを踏んだが間に合わず衝突したと、過失運転致死罪を主張しているようです。
警察等の捜査当局だけでなく世間全体が、あおり運転に対して非常に厳しい反応になっていることを考慮すれば、今回の刑事裁判で検察側の主張が認められる可能性は十分に考えられます。
堺市におけるあおり運転でお困りの方、殺人罪の裁判員裁判に強い弁護士をお探しの方は、大阪で刑事事件に強いと評判の「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」にご相談ください。
初回法律相談:無料
器物損壊罪と親告罪
◇事件◇
Aさんは南海電鉄岸和田駅周辺で、月極駐車場やコインパーキングを管理、運営しています。
Aさんの管理する駐車場に自転車を無断駐輪する駅の利用客が絶えず、これまで張り紙をするなどの対策をとってきましたが、一向に無断駐輪の自転車はなくなりません。
そこでAさんは、事前に、駐車場の目立つ部分に「平成31年1月1日以降、駐車場内に無断駐輪している自転車を施錠します。施錠の解除には10,000円を徴収いたします。」という張り紙をして、実際に平成31年1月1日に、駐車場内に無断駐輪している自転車のタイヤに通した鎖をフェンスに固定し自転車を動かせないように固定したのです。
その結果、それ以降は無断駐輪する自転車が激減しましたが、先日、大阪府岸和田警察署から、この件で話を聞きたいと電話がかかってきました。
Aさんが大阪府岸和田警察署に出頭したところ、警察官から、Aさんの行為は器物損壊罪に当たると言われました。
自転車を壊したわけでもないのに、自分の行為が器物損壊罪に当たることに納得ができないAさんは、大阪の刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
◇器物損壊罪~刑法第261条~◇
他人の物を壊せば器物損壊罪となります。
器物損壊罪でいう「損壊」とは、「毀棄」と同義で、物質的に物そのものの形を変更させたり滅失させる場合だけでなく、広くその物の効用を害する一切の行為が損壊に当たります。
これまで効用滅失行為として器物損壊罪が適用された例としては
・看板を取り外して数百メートル先に放棄した事件
・他人の物置場所を勝手に変更した事件
・食器へ放尿し、食器を再び本来の目的に供することのできない状態にした事件
等があります。
今回の事件でAさんは、自転車その物を壊したわけではありませんが、自転車のタイヤに通した鎖をフェンスに固定していることによって、自転車の所有者が、鎖を破壊しなければ自転車を使用できない状態にしています。
この行為は、自由に運行の用に供するという自転車本来の効用を事実上失わせた行為であるから、器物損壊罪にいう損壊に当たると解されて、Aさんの行為が器物損壊罪に当たる可能性は十分に考えられます。
◇親告罪◇
親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪です。
Aさんの行為に適用されるであろう器物損壊罪をはじめ、名誉毀損罪、侮辱罪、秘密漏示罪、過失傷害罪、私用文書等毀棄罪、略取誘拐罪や親族間の窃盗罪等がこれに当たります。
ちなみに平成29年の刑法改正までは、強制わいせつ罪や強姦罪(現在の強制性交等罪)等も親告罪とされていましたが、現在は非親告罪となっています。
親告罪には、告訴不可分の原則があります。
これは、共犯の1人または数人に対してした告訴または告訴の取消しは、他の共犯に対してもその効力を生じることです。
これを告訴の主観的不可分と言います。
また犯罪事実の一部に対してした告訴または告訴の取消しは、その全部について効力が生じます。
これを告訴の客観的不可分と言います。
◇親告罪の刑事弁護活動◇
親告罪には
・告訴がなければ起訴できない
・一度取消した告訴は、同じ事実で再び告訴できない
という決まりがあります。
そのため器物損壊罪のような親告罪の刑事弁護活動は、被害者との示談が最優先されます。
未だ被害者が告訴していない場合は、示談書の中で告訴しないことを約束してもらい、既に告訴してしまっている場合は、告訴を取消すことを約束してもらうのです。
そういった内容の示談を、起訴されるまでに締結することができれば、器物損壊罪のような親告罪で警察の捜査を受けていても、刑事罰が科せられることはありません。
岸和田市の刑事事件でお困りの方、器物損壊罪のような親告罪で警察の捜査を受けておられる方は、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府岸和田警察署までの初回接見費用:38,600円
公訴時効と盗品等無償譲受罪
◇事件◇
Aさんは、数日前に、友人から「もう10年以上前に盗んだバイクで時効が成立しているから大丈夫」と言われて、友人からバイクを無償で譲り受けました。
このバイクを運転中にAさんは、大阪市此花区の路上で信号無視をしてしまい、大阪府此花警察署の警察官に取締りを受けました。
その際に、Aさんのバイクの車体番号が削られていたことを不審に思った警察官から、バイクについて追及を受けたAさんは、もう時効が成立しているので大丈夫だろうと思って、バイクを友人から無償で譲受けた経過を警察官に説明したのです。Aさんは、大阪府此花警察署に連行されて取調べを受けました。
(フィクションです)
◇公訴時効◇
刑法では、犯罪が行われた後、公訴されることなく一定期間が経過した場合には、公訴が提起できなくなる公訴時効が規定されています。
公訴時効が成立する時期は、その犯罪の法定刑の大小を基準として規定されており、以下の通りです。
①人を死亡させた罪:法定刑に応じて、公訴時効なし,または30年、20年、10年
②死刑に当たる罪:25年
③無期懲役または禁錮:15年
④長期15年以上:10年
⑤長期15年未満:7年
⑥長期10年未満:5年
⑦長期5年未満または罰金:3年
⑧拘留または科料:1年
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」ですので、上記⑤に当たり、窃盗罪の公訴時効は7年です。
ですから友人が言うように、バイクを盗んだのが10年以上前であれば、バイクを盗んだ窃盗事件については時効が成立していることになり、バイクの窃盗犯人に刑事罰が科せられることはありません。
◇盗品等無償譲受罪◇
盗品等無償譲受罪とは、盗品その他財物に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けることで、刑法第256条で「3年以下の懲役」の罰則が規定されています。
盗品その他財物に対する罪とは、窃盗罪や横領罪によって不法領得した財物は当然のこと、詐欺罪や恐喝罪によって不正に取得した財物も対象になります。
また、財産罪によって領得された財物が盗品等となるのですが、ここにいう犯罪行為は、構成要件に該当する違法行為であれば足り、必ずしも有責であることを必要としません。
つまり財産罪を犯した犯人が、刑事未成年者であったり、親族間の犯罪に関する特例の適用によって刑の免除を受たりしている場合や、本犯の公訴時効が完成している場合でも、盗品等無償譲受けの罪は成立してしまうのです。
財産罪の実行行為に加担していた者は、財産罪の共犯となるので、盗品等の罪の主体にはなり得ませんが、財産罪の教唆者や幇助者は、財産罪の実行行為を分担するのではないので、盗品等の罪の主体となり得ます。
盗品等無償譲受罪は故意犯です。
この罪が成立するには、行為者に盗品であることの認識がなければなりません。
この認識は、いかなる財産罪によって取得した物なのか、犯人や被害者が誰なのか等の詳細まで必要とされませんが、その財物が何らかの財産罪によって領得された物であることの認識は必要です。
つまり今回の事件を検討すれば、Aさんにバイクを譲った友人の窃盗事件について公訴時効が成立していたとしても、Aさんが盗品としてバイクを譲り受けているので、Aさんに盗品等無償譲受罪が適用されてしまいます。
大阪市此花区の刑事事件でお困りの方、盗品バイクの盗品等無償譲受罪で警察の取調べを受けておられる方は、刑事事件に強いと評判の、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府此花警察署までの初回接見費用:35,300円
盗聴器設置で住居侵入罪
30歳男性からの法律相談
数ヶ月前から、職場の男性同僚に「妻が浮気しているかもしれない」という相談をされており、10日ほど前に、この同僚に頼まれて、同僚の家に盗聴器を仕掛けました。
同僚が奥さんを連れて買い物に行っている間に、同僚から借りた家の鍵を使って同僚の家に入り、寝室とリビングに盗聴器を仕掛けました。
仕掛けた盗聴器は、同僚が日本橋の電気街で購入し、事前に渡されていました。
先日、同僚の奥さんが盗聴器を発見して、大阪府門真警察署に届け出たようです。
私の行為は、犯罪になるのでしょうか?
同僚夫婦が住んでいるのは、門真市の賃貸住宅で、ここの賃貸契約は同僚がしており、住んでいるのは同僚と奥さんの二人だけです。
盗聴器を仕掛けるために家に入ることは、事前に同僚の承諾を得ています。
(この相談はフィクションです)
◇住居侵入罪~刑法第130条前段~◇
正当な理由なく他人の住居に侵入すれば住居侵入罪が成立します。
住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
住居侵入罪は、「住居の平穏」を保護法益にした法律で、この法律でいう「住居」とは、人の起臥寝食に使用される場所を意味します。
そして住居侵入罪でいう「正当な理由なく」とは、社会的に相当であるかどうかによって判断されており、平穏公然に立ち入った場合でも、その立ち入りが住居者の意思に反するときは、住居侵入罪が成立する場合があります。
住居侵入罪は、その行為の特性から未遂罪の規定はなく、実務上は、身体の大部分が入った時に成立するとされる説が有力です。
◇住居者の承諾◇
住居者等の意思に反することが、住居侵入罪が成立するための要件となります。
つまり、住居者等の承諾、又は推定的承諾がある場合は、住居侵入罪は成立しないというのが判例です。
この承諾は、明示、暗示を問いませんが、住居者の真意に基づくものでなければなりません。
また、住居者の承諾が得て住居に入った場合でも、承諾を得ていない他の部屋に入ることは許されません。
~推定的承諾~
推定的承諾は、住居者が侵入することを承諾したであろうと推定される場合を意味します。
例えば、破損した水道管の修理のために、知人宅へ無断で立ち入ったなどは、推定的承諾があるものと考えられ、住居侵入罪は成立しないでしょう。
不法な目的は、通常、推定的承諾が認められないと考えられますし、また目的が特に不法でなくとも、立ち入る方法等を総合して管理者が同意してなかったであろうと推測される場合は、その推定的承諾を欠くことになります。
◇Aさんの事件を検討◇
それではAさんの行為に住居侵入罪が成立するかどうかを検討します。
かつての家長制度下における判例では、住居侵入罪における保護法益を「住居権」にあるとし、この住居権は一家の家長である夫が専有するものであるとされていたので、夫の承諾さえ得れば、同居している妻の承諾がなくても住居侵入罪に問われることはありませんでした。
しかし現在の憲法下では、男女の本質的平等を保障しており、夫婦は平等に住居権を有するとされています。
この点から、Aさんが、夫の承諾を得て、夫から預かった鍵を使用して住居に立ち入っているとしても、その目的が「盗聴器を仕掛ける」といった社会通念上、認められない不法行為を行うためで、さらにそれによって、承諾を得ていない妻の住居の平穏を犯していると考えられます。
そのためAさんの行為に対して、住居侵入罪が成立すると考えるのが妥当でしょう。
◇盗聴器の設置◇
盗聴器を設置する行為自体を禁止する法律はありませんが、盗聴器を設置する方法によっては様々な犯罪に抵触する可能性があるので注意しなければなりません。
Aさんの事件のように住居侵入罪が成立する他にも、電話機等に仕掛けた場合は電気通信事業法違反に、家具等に細工して仕掛けた場合は器物損壊罪に抵触するおそれがあります。
門真市の刑事事件にお困りの方、盗聴器設置で住居侵入罪に問われるおそれのある方は、事前に刑事事件に強いと評判の「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」の無料法律相談をご利用ください。
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覚せい剤使用事件で強制採尿
~事件~
大阪市西成区でタクシー運転手をしているAさんは、3年前に覚せい剤使用事件を起こして有罪判決を受けており、つい先日、執行猶予期間が終わったばかりです。
年末年始で忙しくて寝不足が続いたAさんは、仕事中の居眠り運転を防止するために覚せい剤を再び使用してしまいました。
1週間ほど前に、Aさんは大阪市西成区の路上に立っている覚せい剤の密売人から1万円分の覚せい剤を購入し、それを3回に分けて使用したのです。
最後に使用したのは昨日の夜です。
仕事前に、自宅において、水に溶かした覚せい剤を注射器で血管に射って使用したのですが、その後、仕事中に交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは事故現場に駆け付けた警察官に任意採尿を求められましたが、これを拒否しています。(フィクションです)
~覚せい剤の使用~
覚せい剤取締法では、覚せい剤の使用、所持、譲渡、輸出入等を禁止しています。
覚せい剤を使用したとして、覚せい剤取締法違反で起訴されて有罪が確定した場合、10年以下の懲役が科せられます。
初犯の場合は、起訴されてもほとんどの方が執行猶予付の判決を言い渡されていますが、前刑から相当期間経過している場合や、情状に酌むべき相当な事情がある等、特別な理由がない限り、再犯の場合は実刑判決の可能性が非常に高いでしょう。
~採尿~
覚せい剤の使用は、検査によって尿から覚せい剤成分が検出されるか否かによって判断されます。
その検査を尿鑑定といいますが、その前段の手続きとして採尿があります。
採尿には、任意採尿と強制採尿があるのですが、被採尿者が警察官等の指示に従って自ら自然排尿した尿を警察等の捜査機関に任意提出することを「任意採尿」といい、任意採尿を拒否した被採尿者から強制的に尿を採ることを「強制採尿」といいます。
任意採尿で採取された尿と、強制採尿で採取された尿に証拠能力の差異はありません。
~強制採尿~
警察官等の捜査員が被採尿者から強制採尿するには、裁判官の発した捜索差押許可状(以下「令状」とする。)が必要です。
令状は、警察官等の捜査員が、疎明資料を作成した上で裁判官に対して請求します。
疎明資料には、被採尿者が任意採尿に応じない旨と、被採尿者が覚せい剤を使用している蓋然性がある旨が記載されているのですが、警察等の捜査機関は「任意採尿を拒否するということは覚せい剤をしようしているのだろう」と考えており、人が住んでいる居宅や、人が管理している建物等に対する捜索差押を許可する令状に比べると、強制採尿の令状は比較的発付されやすい傾向にあり、裁判官が強制採尿の令状を発付しないことは滅多にありません。
強制採尿は、病院の医師によって、尿道にカテーテルを通して膀胱から直接的に尿を採取する方法で行われます。
令状の効力で、強制採尿を行う病院まで被採尿者を強制的に連行することが許されているので、病院以外の場所で強制採尿の令状を示されて執行されると、警察官等の捜査員によって強制的に病院まで連行されるので注意しなければなりません。
~尿鑑定~
尿鑑定は、警察官等が行う簡易鑑定と、科学捜査研究所の職員が行う本鑑定の2種類があります。
大阪府警は「インスタントビュー」という専用の薬物検査キットを使用する鑑定と、警察署に設置されている「ガスクロマトグラフィー 」という大型機械を使用する鑑定の2種類の簡易鑑定を採用しています。
採尿した方全てに簡易鑑定が実施されるわけではなく、被採尿者が覚せい剤を使用している可能性が高い場合や、本鑑定の鑑定結果を待っていては、被採尿者が逃走して、その後の逮捕が困難になることが予想される場合(緊急性がある場合)などは簡易鑑定が実施される傾向にあります。
~薬物事犯と保釈~
覚せい剤の使用事件は、逮捕・勾留される可能性が非常に高く、起訴されるまでの身柄解放されるケースは非常に稀です。
それは、捜査段階では、被疑者の身柄を拘束し、覚せい剤使用の常習性や薬物の入手ルート等を捜査し事案の全容を解明する必要が高いためと考えられます。
他方で、起訴後は、それらの捜査はある程度終了していると考えられます。
したがって、保釈請求をして、身柄を解放できる可能性も高まると言えます。
保釈が許可され、身柄を解放することができれば、本人の肉体的・精神的負担の軽減につながるだけではなく、裁判に向けた打ち合わせをじっくり行うことができるなどのメリットがあります。
大阪市西成区の薬物事件でお困りの方、再び覚せい剤の使用事件を起こしてしまった方は、大阪で薬物事件に強いと評判の「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」にご相談ください。
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公務執行妨害罪を否認
◇事件◇
大阪市東住吉区に住む会社員Aさんは、自宅近くの路上において車を運転中、対向から走行してきた車の運転手と、どちらが道を譲るかで通行トラブルになりました。
そして相手の運転手が道を譲らないことに腹を立てたAさんは、相手の顔面を殴打して唇を擦過する傷害を負わせてしまったのです。
その後、怪我をした運転手が110番通報しましたが、Aさんは警察官が到着する前に帰宅しました。
しばらくして大阪府東住吉警察署の警察官が自宅を訪ねてきて任意同行を求められましたが、Aさんは「確かに殴ったが、相手が悪いのに何で俺が警察署に行かないといけないんだ。」といって任意同行に応じなかったところ、警察官は、傷害事件の被疑事実と、急速を要し、裁判官に逮捕状を請求する余裕がないことを告げてAさんを緊急逮捕しようとしたのです。
Aさんは、「逮捕状がないのにどうして逮捕できるんだ。」と言い、腕を掴んできた警察官を押し倒してしまいました。
その後の取調べで、Aさんは傷害事件については事実を認めているものの、緊急逮捕した警察官に対する暴行行為について、公務執行妨害罪の適用を否認しています。
(フィクションです。)
◇緊急逮捕◇
逮捕には、①通常逮捕②現行犯逮捕(準現行犯逮捕を含む)③緊急逮捕の3種類があります。
今回の事件でAさんは傷害罪で緊急逮捕されました。
緊急逮捕は、犯罪を犯したからといって誰に対してでも、できる逮捕ではありません。
緊急逮捕できる要件として
(1)死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由があること
(2)急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
(3)逮捕の必要性があること
です。
Aさんの事件を検討すると、まずAさんの犯した傷害罪は、刑法第204条に規定された法律で、その法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
そのため緊急逮捕の要件の一つである「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」に該当します。
そしてAさんが傷害事件を犯したことを疑うに足りる充分な理由があるかについては、Aさんが逮捕前に、警察官に対して被害者を殴った事実を認めていること等から認められるでしょう。
続いて、犯行後、警察官が現場に到着する前にAさんが自宅に逃げ帰っていることや、その後自宅を訪ねてきた警察官の任意同行に応じないこと等から上記(2)(3)の要件も満たしているでしょう。
◇公務執行妨害罪◇
刑法第95条は「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と公務執行妨害罪を規定しています。
公務執行妨害罪は、公務員を保護するための法律ではなく、公務員によって執行される公務を保護するための法律です。
当然、保護の対象となる公務は正当なものでなくてはいけませんが、上記で検討したように、警察官の緊急逮捕は適法だといえるでしょう。
Aさんは緊急逮捕の手続きを知らなかったために、警察官が、Aさんを傷害罪で緊急逮捕したことが違法だったと誤信していた旨を主張しています。
このように公務員の適法な職務執行を違法な職務執行であると誤信した錯誤は、事実の錯誤ではなく、自らの違法行為を適法行為として認識する「違法性の錯誤」であることから、故意を阻却する事由には当たらないでしょう。
この錯誤は、法令の不知に基づく誤信であるにすぎず、したがって「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」との刑法第38条第3項本文の規定により、Aさんは公務執行妨害罪の故意が認められること37となるでしょう。
大阪市東住吉区における刑事事件でお困りの方、ご家族、ご友人が傷害罪で緊急逮捕されてしまった方、公務執行妨害罪の故意に疑問がある方は、刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
大阪府東住吉警察署までの初回接見費用:37,300円
ダフ屋行為で詐欺罪
~事例~
大阪市淀川区に住むAはコンサートのチケットをインターネットで購入し、プレミアが付いてからインターネット上のオークションで転売するという手法でお金儲けをしていました。
商売は順調で、かなりの利益を得ていたAでしたが、ある日、淀川警察署から連絡があり、Aはチケットエージェンシー(チケットを取り扱っている業者)に対する詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
淀川警察署から連絡を受けたAの妻は刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(この事例はフィクションです)
ダフ屋
「ダフ」とはチケットや乗車券を意味する札(ふだ)を逆さにした隠語で、乗車券、入場券や観覧券などのチケット類を転売する人々のことを指します。
興行の振興を妨害することになったり、反社会的勢力の資金源になり得るなどといった理由から規制の対象であるとされています。
ダフ屋を規制する法令として、古物営業法、各都道府県の迷惑防止条例、そして詐欺罪があげられます。
ただ、迷惑防止条例は、あくまで生活の平穏を保持することが目的で公共の場所でのダフ屋行為を規制しているため、公共の場所ではないインターネット上での転売については摘発の対象外となっていました。
さらに、ダフ屋行為に対する迷惑防止条例違反では「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が規定されていますが、初犯は罰金となる可能性が高いことから、罰金を支払っても儲けが出るととしてあまり規制の効果はありませんでした。
そこで、「10年以下の懲役」と罰金刑が規定されていない詐欺罪が適用されるケースも出てきました。
ダフ屋行為が詐欺罪に
2017年9月22日の電子チケットを転売目的で取得した男に対して、神戸地裁が詐欺罪の成立を認め、懲役2年6月、執行猶予4年を言い渡しました。
男はミュージシャンなどの電子チケットを購入し、計18枚を専門サイトで転売し約12万7千円の利益を得ていたそうです。
禁止されている転売を目的としてチケットを購入しようとする者が、その目的を隠してチケット購入の申込みをし、チケットエージェンシーをだまして、チケットを送付させた行為が詐欺罪にあたるとされました。
詐欺罪で起訴されて有罪が確定すると「10年以下の懲役」に処されることになります。
近年、インターネットの普及によってオークションサイトなどで簡単にチケットなどを転売できるようになりました。
中には、未成年でチケットの転売をして利益を得ている人もいます。
今後2020年には東京オリンピックが開催されるため、チケット転売が横行することが予想され、その取締まりのためにダフ屋行為はより一層厳しく規制されていくことが予想されます。
詐欺罪で逮捕されたら
ダフ屋行為は、被害者が複数いるケースや組織的に行われているケース、共犯者がいるケースも珍しくありません。
このような事情からダフ屋行為について詐欺事件として捜査されると、複雑になる可能性が高くなり、逮捕されてしまうと身体拘束が長引く傾向にあります。
そこで、ご家族が逮捕されたような場合にはすぐに初回接見を依頼するようにしましょう。
弁護士がご本人様の下まで向かい、取調べのアドバイスや今後の見通しなどをお伝えし、ご本人の希望される範囲内でご依頼者様にお伝えします。
さらに、刑事事件に強い弁護士にご依頼いただけば、身柄解放に向けて活動を行っていきますし、被害者との示談に向けても活動していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見を行っています。
まずはご予約のお電話を、0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
大阪府淀川警察署までの初回接見費用35,800円
電車内の痴漢事件
電車内の痴漢事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
~事件~
会社員Aさんは、大阪市西区の会社まで電車通勤しています。
3日前からAさんは、毎朝同じ車両に乗っている女性に対して、お尻を触る等の痴漢行為を繰り返していました。
そして今朝も、同じ女性に対して陰部を押し付ける痴漢行為をしたところ、電車内で警戒中の鉄道警察隊の警察官に現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんんは、痴漢行為が会社に発覚するのをおそれて、逮捕からこれまで容疑を否認しています。
しかし、妻からの依頼で接見に来た弁護士に「否認を続ければ勾留されて、拘束期間が長期に及ぶ可能性がある」ことを教えてもらって、犯行を認めました。
その結果、Aさんは勾留を免れることができ、逮捕の翌日には釈放されました。
(フィクションです。)
◇痴漢事件◇
これまでコラムでは何度も痴漢事件を紹介してまいりました。
大阪府内での痴漢行為は、大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「迷惑防止条例」とする)違反となり、起訴されて有罪が確定すれば6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
痴漢事件で逮捕された方の中には、Aさんのように、実際は痴漢をしているが、様々な理由で犯行を否認している方は少なくありません。
当然、身に覚えのない痴漢事件で逮捕されたのであれば、どの様なリスクがあっても否認を突き通さなければ、大きな不利益を被ることになりかねませんが、実際に痴漢してしまった場合、否認することによってどのようなリスクが生じるのでしょうか。
~痴漢事件を否認することのリスク~
①身体拘束が長くなる
警察等の捜査機関は痴漢事件を軽微な犯罪ととらえています。
痴漢事件は、犯人が性欲を満たすために衝動的に犯行に及んでいる場合がほとんどなので、警察等の捜査当局は、犯人を拘束してまで取調べをする必要のない事件が大半です。
しかし、犯行を否認している場合は違います。
犯行が明らかなのに否認している場合は、逮捕されるリスクや、勾留されるリスクが高まるのです。
法律的には「否認=(イコール)=逮捕、勾留」というわけではありませんが、否認していることによって、証拠隠滅や逃走のおそれがあると判断されて、身体拘束される可能性が高くなるのが現状です。
実際に、逮捕されてからの警察の取調べで否認していたために検察庁に送致された方が、検察官の取調べで容疑を認めて釈放されたり、裁判官が勾留請求を却下した事件は多数あります。
またAさんが心配しているような「会社に事件が発覚する」という点に関しても、痴漢事件が会社に発覚する理由として最も多いのが、逮捕の報道や、長期拘束による欠勤です。
犯行を認めているかどうかと、事件が勤務先に発覚するかどうかはあまり関係がないので注意しなければなりません。
②強制わいせつ罪の適用を受ける可能性がある
上記のように、犯行を否認することによって勾留されて身体拘束期間が長くなるリスクがあります。
勾留は、警察等の捜査機関が決定することではなく、裁判官が決定する刑事手続きですが、軽微な犯罪である迷惑防止条例違反を適用するよりも、強制わいせつ罪の方が重いので、裁判官が勾留を決定しやすい傾向にあることから、同じ行為でも強制わいせつ罪が適用される場合があります。
強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」ですので、もし起訴されて有罪が確定した場合の刑事罰に、迷惑防止条例違反と大きな違いがあるので注意しなければなりません。
③被害者感情が悪くなる
身に覚えのない痴漢事件の場合、冤罪を証明することが主な刑事弁護活動となりますが、犯行を認めた場合の主な刑事弁護活動は示談交渉になります。
被害者と示談することによって、刑罰を免れたり、減軽できたりするのですが、犯行を否認した場合の、被害者感情は非常に厳しいもので、それが原因で示談交渉にすら全く応じてもらえないこともあります。
犯行が明らかな痴漢事件は、被害者との示談がなければ刑事罰を免れるのは非常に困難となるので注意しなければなりません。
◇初回接見を利用◇
痴漢事件で警察に逮捕されてしまった方のほとんどは、どの様に警察の取調べに応じていいものか分かりません。
それ故に、不合理な弁解や、否認を続けてしまって、必要以上の不利益を被ってしまう方もいるので、その様な事態を避けるためにも、ご家族、ご友人の逮捕を知った方は、まず刑事事件に強い弁護士の初回接見をご利用ください。
弁護士の見解を聞き、取調べの対応を検討することによって、早期の釈放や、刑事罰の軽減が実現します。
刑事事件に強い弁護士の初回接見はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けております。