~刑法を解説~9回目の本日は、前回に引き続き9章放火及び失火の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
放火及び失火の罪
第114条 消火妨害罪
第115条 他人所有の非現住建造物等放火罪と建造物等以外放火罪の特例
第116条 失火罪
第117条 激発物破裂罪
第117条の2 業務上失火罪
第118条 ガス漏出等及び同致死傷罪
まず第114条の消火妨害罪について解説します。
消火妨害罪とは、消火作業を妨害した場合に成立する犯罪です。
単に消火作業に協力しないというだけであれば軽犯罪法違反が成立するにすぎません。
また消火妨害罪の成立には、妨害行為によって鎮火が遅れたり、火災が拡大したという結果の発生までは必要とされておらず、消化を妨害する可能性のある行為をした時点で既遂となります。
第115条については省略します。
続いて第116条の失火罪について解説します。
失火罪とは失火によって、現住建造物等や非現住建造物等を焼損させてしまった場合に成立する犯罪です。
失火とは、不注意(過失)によって出火させることを意味します。
代表的な事件例ですと、タバコの吸い殻を後始末が原因で発生した火災に失火罪が適用される場合があります。
続いて第117条の激発物破裂罪について解説します。
激発物破裂罪は、火薬等の激発物を破裂させて現住建造物等や非現住建造物等を焼損させた場合に成立する犯罪で、不注意(過失)によって破裂させた場合も成立する可能性があります。
業務上必要な注意を怠ったり、重大な不注意(過失)によって第116条の失火罪と、第117条の1項の当たる激発物破裂罪を犯してしまった場合の加重規定が、第117条の2にされています。
最後に第118条のガス漏出等及び同致死傷罪について解説します。
この法律は、ガスや電気、蒸気を漏出させたり、遮断させて人の生命身体や財産に危険を生じさせた場合に成立する犯罪です。
放火及び失火の罪の罰則
①現住建造物等放火罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」です。
②他人所有の非現住建造物等放火罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」で、自己所有の非現住建造物等放火罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
③他人所有の建造物等以外放火罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」で、自己所有の建造物等以外放火罪の法定刑は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
④延焼罪の法定刑は「3月以上10年以下の懲役」ですが、自己所有の建造物等以外に放火して、現住建造物等や、他人所有の非現住建造物等、建造物等以外に延焼させた場合の法定刑は「3年以下の懲役」です。
⑤消火妨害罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
⑥失火罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。
⑦激発物破裂罪の法定刑は①及び②③と同様です。
⑧業務上失火罪の法定刑は「3年以下の禁固または150万円以下の罰金」です。
⑨ガス漏出等及び同致死傷罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第10章出水及び水利に関する罪」に続く