~刑法を解説~30回目の本日は、第24章礼拝及び墳墓に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
礼拝及び墳墓に関する罪
第24章 礼拝及び墳墓に関する罪には
第188条1項 礼拝所不敬罪
第188条2項 説教妨害罪・礼拝妨害罪・葬式妨害罪
第189条 墳墓発掘罪
第190条 死体遺棄罪・死体損壊罪・死体領得罪
第191条 墳墓発掘死体遺棄罪・墳墓発掘死体損壊罪・墳墓発掘死体領得罪
第192条 変死者密葬罪
です。
まず第188条1項に規定されている「礼拝所不敬罪」は、神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所に対して、公然と不敬な行為をすることで成立する犯罪です。
「公然と」とは、不特定又は多数の者が認識できる状態を意味し、「不敬な行為」とは、神聖ないし尊厳を害すべき行為だとされています。
そして第188条2項に規定されている「説教妨害罪」等は、説教や礼拝、葬式を妨害することで成立する犯罪です。
続いて第189条の「墳墓発掘罪」について解説します。
墳墓発掘罪とは、その罪名のとおり、墳墓を発掘することで成立する犯罪です。
簡単に言うと、墓を掘り起こすことを禁止している犯罪です。
前2条についてはあまり馴染みのない法律でしたが、続いての第190条に規定されている「死体遺棄罪」等については、新聞等で事件が報じられることもある馴染みのある犯罪ではないでしょうか。
まず死体を遺棄すれば「死体遺棄罪」となります。
ここでいう「遺棄」とは、社会通念上埋葬とは認められにような態様で死体を放棄することです。
そして、死体を損壊すれば「死体損壊罪」が、死体を領得すれば「死体領得罪」が成立します。
ここで注意しなければならないのは、死体遺棄罪等の客体となるのは、死体や遺骨だけでなく、遺髪そして、棺に納められている物であることです。
またお墓を掘り起こして、遺棄や損壊、領得すれば、第191条に規定されている墳墓発掘死体遺棄罪等が成立することになります。
そして最後に解説するのが、第192条に規定されている「変死者密葬罪」です。
この法律は、検視を経ていない変死者を葬った場合に成立する犯罪で、ここでいう「検視」には司法検視だけでなく、行政検視も含みます。
この章の他の法律は宗教的感情を保護法益としたものですが、変死者密葬罪は、犯罪捜査目的の行政取締規定だといえます。
礼拝及び墳墓に関する罪の罰則
①礼拝所不敬罪の法定刑は「6月以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金」です。
②説教妨害罪・礼拝妨害罪・葬式妨害罪の法定刑は「1年以下の懲役若しくは禁錮又は10万円以下の罰金」です。
③墳墓発掘罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。
④死体遺棄罪・死体損壊罪・死体領得罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
⑤墳墓発掘死体遺棄罪・墳墓発掘死体損壊罪・墳墓発掘死体領得罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
⑥変死者密葬罪の法定刑は「10万円以下の罰金又は科料」です。
「~刑法を解説~第25章汚職の罪」に続く