~刑法を解説~ 第18章の2 支払用カード電磁的記録に関する罪

~刑法を解説~20回目の本日は、第18章の2支払用カード電磁的記録に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

支払用カード電磁的記録に関する罪

第18章の2には支払用カード電磁的記録に関する罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。

第163条の2 ①支払用カード電磁的記録不正作出罪
        ②不正作出支払用カード電磁的記録供用罪
        ③不正電磁的記録カード譲渡し等罪
第163条の3 不正電磁的記録カード所持罪
第163条の4 ①前段 支払用カード電磁的記録情報取得罪
         後段 支払用カード電磁的記録情報提供罪

        ②支払用カード電磁的記録情報保管罪
        ③支払用カード電磁的記録不正作出準備罪
第163条の5 第163条の2~第163条の4第1項の未遂罪

この章では、クレジットカードキャッシュカードだけでなく、イコカ等の交通系ICカードやワオン等の電子マネーカード、その他にもETCカードやデビットカードなどの、各種電磁的記録の付随するカードに関する規制がなされています。
この章で規制されている法律は、クレジットカード等の、利用者の増加に伴い、スキミング等の被害が増加した平成13年の刑法改正によって新たに追加されており、刑法の中では比較的新しい法律です。
まず第163条の2第1項の「支払用カード電磁的記録不正作出罪」では、上記したようなカードの情報を不正に作り出すことを規制した法律です。
この犯罪が成立するには、人の財産上の事務処理を誤らせる目的が必要とされていますが、ここでいう人の財産上の事務処理を誤らせる目的とは、簡単に言うと、偽造したカードを使用して財産上の利益を得る目的を意味します。
そして不正に作り出した情報の入ったカードを利用することを規制したのが、第2項の「不正作出支払用カード電磁的記録供用罪」で、不正に作り出した情報の入ったカードを譲渡したり、人に貸したり、輸入するのを規制したのが、第3項の「不正電磁的記録カード譲渡し等罪」です。
また、不正に作り出した情報の入ったカードを持っていると、第163条の3の「不正電磁的記録カード所持罪」となります。

最後に第164条の4では、不正なカードを作り出すのに必要な情報について規制されており、この情報を取得(前段)したり、提供(後段)する、いわゆるスキミング行為を規制しています。
そして2項では、情報の保管が、3項では情報を取得するための機械や原料を準備することが規制されています。

支払用カード電磁的記録に関の罪の罰則

①支払用カード電磁的記録不正作出罪の法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
②不正作出支払用カード電磁的記録供用罪の法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
③不正電磁的記録カード譲渡し等罪の法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
④不正電磁的記録カード所持罪の法定刑は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑤支払用カード電磁的記録情報取得罪、支払用カード電磁的記録情報提供罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑥支払用カード電磁的記録情報保管罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑦支払用カード電磁的記録不正作出準備罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第19章印章偽造の罪」に続く

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