飲酒運転の発覚をおそれて、交通事故の身代わり出頭をした事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
参考事件
会社員のAさんは、休日を利用して大阪市箕面市に住んでいる知人の家をマイカーで訪ねました。
そこで知人に酒を勧められたAさんは断り切れずに、お酒を飲んでしまいました。
飲酒後しばらく休憩して酔いがさめたと思ったAさんは、知人を誘ってドライブに出たのですが、その道中で、停車している車に後方から追突する交通事故を起こしてしまったのです。
気が動転したAさんは、そのまま逃走しました。
そして助手席に座っていた知人と相談して、飲酒運転を隠ぺいするために、お酒を飲んでいない知人が車を運転していたことにして、運転を代わって事故現場に戻りました。
そこで、既に現場に駆け付けていた大阪府箕面警察署の警察官に「知人が運転していた。」と申告したのです。
(この事例はフィクションです。)
交通事故を起こしてしまった際に、気が動転して、警察に事故を届け出たり、怪我人を救護せずに、その場から逃走してしまうと「当て逃げ」や「ひき逃げ」となり、場合によっては逮捕されたり、厳しい刑事罰が科せられることもありますので、交通事故を起こしてしまった時は、必ず警察に届け出ましょう。
さて本日のコラムでは、お酒を飲んでいたために、交通事故後に逃走してしまったAさんの事件を紹介します。
まず交通事件としてAさんが問われる罪は
①飲酒運転
②「当て逃げ」若しくは「ひき逃げ」
です。
飲酒運転
体内のアルコール量が呼気1リットルにつき0.15mg以上であれば酒気帯び運転となり、有罪の場合は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられるます。
また運転手の酒酔い状況から、酒に酔った状態で正常な運転ができないおそれがあると判断された場合は、アルコール量に関係なく酒酔い運転となり「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられます。
Aさんの場合、酒酔い運転と認定される可能性は低いでしょうが、飲酒検知結果次第では、酒気帯び運転に該当するでしょう。
ちなみに今回の事故で負傷者がいたかどうかは分かりませんが、仮に負傷者がいた場合は、通常の人身事故に適用される過失運転致死傷罪(7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金)よりも厳しい刑事罰が科せられる可能性があるので注意が必要です。
「当て逃げ」若しくは「ひき逃げ」
交通事故を起こしてしまった際に、警察に通報したり、怪我人を救護せずに事故現場から立ち去ると「当て逃げ」や「ひき逃げ」となってしまいます。
怪我人がいない場合(「当て逃げ」の場合)は、道路交通法でいうところの、交通事故を警察に報告する義務を怠った罪に問われ「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。
ただ交通事故で怪我人がいた場合は、ひき逃げ事件となり、当て逃げのように軽い罪では済まされず、場合によっては逮捕される可能性もあります。
ひき逃げは、道路交通法でいうところの救護義務違反となり、その法定刑は「10年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と非常に厳しいもので、これに交通事故を起こしたことに対する「過失運転致死傷罪」が加わると、有罪となった場合の刑事罰は「15年以下の懲役又は200万円以下の罰金」と非常に厳しくなってしまいます。
~明日に続く~