有価証券の偽造事件

有価証券の偽造事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

~事件~

契約社員のAさんは、先日派遣先を解雇されて生活費に困窮しています。
奈良市のデパートが発行している「商品お取替え券」が金券ショップで買取りしていることを知ったAさんは、この券を偽造して金券ショップに売ることを考えました。
そこでAさんは、デパートが正規に発行している「商品お取替え券」を入手して、カラーコピー機を使用して偽造券を500枚作成したのです。
そして、偽造券を金券ショップで1枚900円で全て売ってしまいました。
金券ショップの店員が気付く事はありませんでしたが、しばらくして偽造券が出回っている旨のニュースを見たAさんは、警察が捜査していることを知って、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにしたのです。
(フィクションです)
※偽造した「商品お取換え券」は、デパートで商品を購入した際に、その購入額に応じてデパートから交付されるサービス券で、1枚当たり1000円相当の商品と引き換えることができます。
「商品お取替え券」の表面には、金額(1000円)と、デパートの記名と、同デパートの印影が朱肉で押なつされています。
そして裏面には、使用できる系列デパート名が列記され、本券は販売及び返金はしない旨が明記されています。

◇有価証券偽造罪◇

~刑法第162条第1項~
行使の目的で、公債証書、官庁の証券、会社の株券その他の有価証券を偽造し、又は変造した者は、3月以上10年以下の懲役に処する。(刑法抜粋)

~有価証券とは~
通説では、有価証券偽造罪にいう「有価証券」とは、財産権を表彰した証券であって、証券上表示された財産上の権利、行使又は処分のために、その証券の占有を必要とするものとされています。
また有価証券の表彰する財産権は、債券であると物権であると、その他の権利であるとを問わず、流通性を持つことは必ずしも必要でないと解されています。
ここでAさんが偽造した「商品お取替え券」が有価証券に当たるかを検討します。
「商品お取替え券」は、上記※のよう体裁をなしているので、商品の代価の弁済に充てる権利、つまり、具体的な物品引渡請求権が表示されていることが認められます。
また、「商品お取替え券」の使用用途を考えると、有価証券のもう一つの要件、すなわち権利行使に当たっては証券の占有を必要とする要件も満たしているといえるでしょう。
このような観点から、Aさんが偽造した「商品お取替え券」は、名称こそ異なるものの、一般のデパートで販売されている商品券と同様に、有価証券偽造罪の客体となる有価証券に該当するでしょう。
鉄道等の乗車券、定期券、クーポン券等が有価証券に該当します。

~行使の目的~
有価証券偽造罪は、その成立に行使の目的を必要とする目的犯です。
有価証券偽造罪と同じように行使の目的を必要とする法律に通貨偽造罪がありますが、通貨偽造罪の行使の目的にある、流通に置くことまでは必要とされていません。
判例によりますと、有価証券偽造罪でいうところの「行使」とは、偽造した有価証券を、その用途に従って、真正(内容が真実)である有価証券として使用することです。
Aさんは、偽造した「商品お取替え券」を金券ショップに買い取らせているので、この行為は、当然、有価証券偽造罪の「行使」に当たり、その目的で「商品お取替え券」を偽造した行為は有価証券偽造罪に該当するでしょう。

◇偽造有価証券行使罪と詐欺罪◇

~偽造有価証券行使罪(刑法第163条)~

偽造した有価証券を使用すれば、偽造有価証券行使罪が成立します。
偽造した「商品お取替え券」を金券ショップに売ったAさんの行為は、当然、有価証券行使罪に該当します。
偽造有価証券行使罪の法定刑は、有価証券偽造罪と同じく3月以上10年以下の懲役です。

~詐欺罪(刑法第246条)~

人を騙して財物の交付を受けると詐欺罪が成立します。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
Aさんは、偽造した「商品お取替え券」を、金券ショップの店員に真正(本物)と偽って買い取らせて現金を得ています。
当然、この行為は詐欺罪に当たります。

今回の事件で、Aさんは有価証券偽造罪・偽造有価証券行使罪そして詐欺罪の3つの法律を犯していることになりますが、偽造・行使・詐欺は順次手段結果の関係にあるので、牽連犯として刑法上一罪となります。
牽連犯は、該当する罪のうち、最も重い罪の法定刑によって処断されるので、今回の事件の場合、Aさんに科せられる可能性がある刑事罰は「3月以上10年以下の懲役」です。

奈良市の刑事事件でお困りの方、有価証券を偽造した事件で警察の捜査を受ける可能性がある方は、刑事事件を専門にしている「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」にご相談ください。
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