強制性交等罪(旧 強姦罪・準強姦罪・集団強姦罪)・強制わいせつ罪

具体例

ケース1

大阪市阿倍野区在住のAさんは、妻のBさんに性行為をするよう求めたものの、強く拒否されてしまいました。
そこで、Aさんは、Bさんの手を押さえるなど力ずくでBさんの抵抗を抑圧し、性行為を行いました。

このような場合、Aさんは強制性交等罪に問われるのでしょうか?
(フィクションです)

(問題となる条文)
【強制性交等罪(刑法177条)】
「13歳以上の者に対し」「暴行又は脅迫を用いて」「性交、肛門性交又は口腔性交(性交等)をした」場合、「5年以上の有期懲役」となります。また、「13歳未満の者に対し」「性交等をした」場合も、同様です。

(解説)
強制性交等罪というのは、被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行や脅迫を用いて、被害者の意思に反して性交渉を行うことをいいます。
性犯罪の中でも最も法定刑が重く規定されており、罰金刑がないため起訴されれば正式裁判となり長期間身体を拘束される可能性が高く、また実刑判決を受ける可能性も高いと言えます。
近年では、出会い系サイトを通じて知り合った女性に対する事件や風俗店において禁止されている本番行為を行って事件となるケースも多発しています。

今回のケースでは、AさんとBさんが婚姻関係にあるということから、このような関係性にある男女で強制性交等罪が成立するかが問題となります。
裁判所は今回と同じような事案で、婚姻関係にある男女の間では、性行為を求める権利とそれに応じる義務があるとした上で、実質的に婚姻関係が破たんしていると言える場合には、そのような関係にあるとは言えず強姦罪(現行法では強制性交等罪)も成立するとしています。

この判例に照らして考えると、Aさんの行為が強制性交等罪として処罰されるかどうかは、Bさんとの婚姻関係が破たんしていたかどうかにかかってくると言えそうです。
もっとも、婚姻関係が破たんしているかどうかは、別居の期間・セックスレスの期間・日常生活での接触の頻度など様々な点を考慮して、ケースバイケースで判断されますので非常に判断が難しいと言えます。
また、婚姻関係にあれば暴行・脅迫を用いた合意なき性交渉も許されると考えているようにも読める前述の裁判所の判断が、本当に妥当であるのかどうかという点について疑問が残ります。

このようなケースに遭遇した場合、できるだけ早く法律の専門家である弁護士に相談するのが良いでしょう。

ケース2

Aさんは、以前から恨みをもっていたBさん(25歳)を長年の恨みを晴らすべく大阪市住吉区の廃墟に無理矢理連れ込み、言うことを聞かないと硫酸をかけると脅し、服を脱がせ全裸にさせたうえその姿態をスマートフォンで撮影しました。

Aさんには強制わいせつ罪が成立するでしょうか?
(フィクションです)

(問題となる条文)
【強制わいせつ罪(刑法176条)】
「13歳以上の者に対し」「暴行又は脅迫を用いて」「わいせつな行為をした」場合、及び「13歳未満の者に対し」「わいせつな行為をした」場合、「6カ月以上10年以下の懲役」になります。

(解説)
わいせつな行為とは、性交等以外の性的羞恥心を害する行為をいい、全裸にさせ、その姿態を撮影する行為は、性的羞恥心を害する行為として、わいせつな行為に当たります。

そして、今回のケースで特に問題となるのは、Aさんが自身の性的欲求を満たすためではなく、Bさんに対する恨みをはらすために暴行を用いてわいせつな行為に及んだ点です。
すなわち、この場合にも強制わいせつ罪が成立するのかが問題となります。

この点について、裁判所は、強制わいせつ罪が成立するには、加害者に性的欲求を満たす意図が必要であり、もっぱら被害者に対する報復や侮辱、虐待する目的で行ったような場合には、強制わいせつ罪は成立しないとしています。
とすると、Aさんの行為は強制わいせつ罪に当たらないと言えそうです。
しかし、近年の裁判では、わいせつ目的の有無が問題となった事件について、行為自体がわいせつ性を持っている場合には目的の有無を論じることなく強制わいせつにあたるとしたものもあり、わいせつ目的がなかったとしても強制わいせつ罪に問われる可能性があります。

もっとも、今回のケースのように、加害者に性的欲求を満たす意図があるとは言えず、報復等の意図で被害者に対してその意思に反するわいせつ行為をさせた場合、強制わいせつ罪に当たらないとしても強要罪に当たると言えるでしょう。
強要罪については、別ページで解説がありますのでそちらをお読みください。
また、強制わいせつ罪についても別ページ(痴漢)で解説してありますので、そちらも合わせてご覧ください。

強制性交等・強制わいせつ事件における弁護活動

1 強制性交等・強制わいせつ不成立の主張

強制性交等・強制わいせつ事件として警察が捜査を始めても、実際にはわいせつ行為や性行為をしていない、あるいは同意の上での行為であった場合など、強制性交等罪・強制わいせつ罪に当たらないにもかかわらず捜査対象となり、取調べや逮捕が行われる場合があります。

そのような場合、弁護士は、捜査機関に対して強制性交等罪・強制わいせつ罪の成立を否定する客観的な証拠を提出したり、捜査機関の見解が十分な証拠に基づくものではないことを主張したりして、不起訴処分・無罪判決を勝ち取るように尽力します。

また、依頼者の方に対しては取調べ対応などについての的確なアドバイスをして、捜査機関により思いがけず不利な証拠を作られてしまわないようにします。

2 早期の示談成立

強制性交等・強制わいせつ事件は、被害者がいる事件ですから、事件の早期解決に示談が非常に有効です。
近年の刑法改正で、いずれの事件についても非親告罪化、つまり、告訴が無くても起訴ができるようになりました。

しかし、早期に示談ができ、被害者が刑事処罰を求めない意思を示してくれている場合は、被害者の意向も加味して不起訴処分を得られる可能性があります。

また、刑事裁判になってしまっても、示談が成立していれば、量刑の判断に影響し、減刑や執行猶予付き判決を受けられる可能性があります。

3 早期の身体解放

強制性交等・強制わいせつ事件で逮捕されると、その後釈放・保釈を受けることは非常に難しいです。

しかし、早期の身体解放を実現できなければ、それだけ元の生活を取り戻すことが困難になりますし、被疑者の方やそのご家族の苦労も増えてしまうでしょう。
そこで弁護士は、検察官や裁判官に積極的に働きかけることで、釈放・保釈を勝ち取り身体拘束が長期化しないように尽力します。

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