不同意性交等罪(旧 強制性交等罪・強姦罪・準強姦罪・集団強姦罪)・不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪)

具体例

ケース1

大阪市阿倍野区在住のAさんは、妻のBさんに性行為をするよう求めたものの、強く拒否されてしまいました。
そこで、Aさんは、Bさんの手を押さえるなど力ずくでBさんの抵抗を抑圧し、性行為を行いました。

このような場合、Aさんは不同意性交等罪に問われるのでしょうか?
(フィクションです)

(問題となる条文)
不同意性交等罪(刑法177条)】令和5年改正法
「前条(刑法176条)第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により」「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」「性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以上のことを「性交等」という)をした」場合、「婚姻関係の有無にかかわらず」「5年以上の有期拘禁刑(懲役)」となります。

「刑法176条1項各号に掲げる行為」には、①暴行・脅迫を用いたこと、②心身の傷害を生じさせたこと、③アルコールなどを摂取させること、④睡眠など意識が明瞭でない状態であること、⑤同意するいとまがないこと、⑥恐怖や驚愕させること、⑦虐待起因、⑧地位に基づく影響力などが挙げられています。

これまでは暴行や脅迫を用いた場合に限られていましたが、それ以外にも「同意ができない状態であるといえる場合に成立範囲が広がった」ことや、「膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」も性交等に含まれることになったことにも注意が必要です。

(解説)
不同意性交等罪というのは、暴行などの行為や事由により同意しないことが困難な状態にさせて性交等を行う行為を処罰するものです。
性犯罪の中でも最も法定刑が重く規定されており、罰金刑がないため起訴されれば正式裁判となり長期間身体を拘束される可能性が高く、また実刑判決を受ける可能性も高いと言えます。
近年では、出会い系サイトを通じて知り合った女性に対する事件や風俗店において禁止されている本番行為を行って事件となるケースも多発しています。

今回のケースでは、AさんとBさんが婚姻関係にありますが、裁判所は今回と同じような事案で、婚姻関係にある男女の間では、性行為を求める権利とそれに応じる義務があるとした上で、実質的に婚姻関係が破たんしていると言える場合には、そのような関係にあるとは言えず強姦罪も成立するとしていました。

令和5年に刑法が改正され、条文上も「婚姻関係の有無にかかわらず」という文言が追加されました。これまでの判例法理が明文化されたといえ、婚姻関係が破綻しているかどうかを問題にしない点で判例法理よりも一歩進んでいると捉えれるといえます。

同意ができる状態であったか否かが重要なポイントになるので、できるだけ早く法律の専門家である弁護士に相談するのが良いでしょう。

ケース2

Aさんは、以前から恨みをもっていたBさん(25歳)を長年の恨みを晴らすべく大阪市住吉区の廃墟に無理矢理連れ込み、言うことを聞かないと硫酸をかけると脅し、服を脱がせ全裸にさせたうえその姿態をスマートフォンで撮影しました。

Aさんには不同意わいせつ罪が成立するでしょうか?
(フィクションです)

(問題となる条文)
不同意わいせつ罪(刑法176条)】令和5年刑法改正
「1号から8号までに掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により」「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」「わいせつな行為をした」場合、「6カ月以上10年以下の拘禁刑(懲役)」になります。

1号から8号までに掲げる行為とは、ケース1に記載した①~⑧にあたる行為のことです。

(解説)
わいせつな行為とは、性交等以外の性的羞恥心を害する行為をいい、全裸にさせ、その姿態を撮影する行為は、性的羞恥心を害する行為として、わいせつな行為に当たります。

そして、今回のケースで特に問題となるのは、Aさんが自身の性的欲求を満たすためではなく、Bさんに対する恨みをはらすために暴行を用いてわいせつな行為に及んだ点です。
すなわち、この場合にも不同意わいせつ罪が成立するのかが問題となります。

この点について、近年の裁判では、わいせつ目的の有無が問題となった事件について、行為自体がわいせつ性を持っている場合には目的の有無を論じることなく強制わいせつにあたるとしたものもあり、わいせつ目的の有無にかかわらず強制わいせつ罪が成立する可能性があるという考え方が主流になっていました。

今回の刑法改正により強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に代わりますが、不同意わいせつ罪の重要なポイントは同意することが可能かどうかという点にあるため、わいせつ目的がなくても同意できる状態にない中でわいせつ行為にあたる行為をした場合には、不同意わいせつ罪として処罰される可能性が高くなったといえます。

また、今回のケースでは、仮に不同意わいせつ罪に当たらないとしても強要罪に当たると言えるでしょう。
強要罪については、別ページで解説がありますのでそちらをお読みください。

不同意性交等・不同意わいせつ(旧 強制性交等・強制わいせつ)事件における弁護活動

1 犯罪不成立の主張

警察が捜査を始めても、実際にはわいせつ行為や性行為をしていない、あるいは同意の上での行為であった場合など、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪に当たらないにもかかわらず捜査対象となり、取調べや逮捕が行われる場合があります。

そのような場合、弁護士は、捜査機関に対して不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の成立を否定する客観的な証拠を提出したり、捜査機関の見解が十分な証拠に基づくものではないことを主張したりして、不起訴処分・無罪判決を勝ち取るように尽力します。

また、依頼者の方に対しては取調べ対応などについての的確なアドバイスをして、捜査機関により思いがけず不利な証拠を作られてしまわないようにします。

2 早期の示談成立

不同意性交等・不同意わいせつ事件は、被害者がいる事件ですから、事件の早期解決に示談が非常に有効です。

早期に示談ができ、被害者が刑事処罰を求めない意思を示してくれている場合は、被害者の意向も加味して不起訴処分を得られる可能性があります。

また、刑事裁判になってしまっても、示談が成立していれば、量刑の判断に影響し、減刑や執行猶予付き判決を受けられる可能性があります。

3 早期の身体解放

不同意性交等・不同意わいせつ事件で逮捕されると、その後釈放・保釈を受けることは非常に難しいです。

しかし、早期の身体解放を実現できなければ、それだけ元の生活を取り戻すことが困難になりますし、被疑者の方やそのご家族の苦労も増えてしまうでしょう。
そこで弁護士は、検察官や裁判官に積極的に働きかけることで、釈放・保釈を勝ち取り身体拘束が長期化しないように尽力します。

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