死体遺棄事件の公訴時効
死体遺棄事件の公訴時効について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
~事例~
大阪市北区に住む会社員のA子は、10年前、特定の人と交際していたわけではありませんでしたが、妊娠してしまいました。
シングルマザーとして一人で育てていこうと決意していたA子でしたが、病院に通うこともできず、自宅の浴室で出産することになってしまいました。
子どもは死産となってしまい、このままでは面倒なことになると考えたA子は子どもの遺体をバケツにコンクリート詰めにしてしまいました。
先日、近所の人がたまたまバケツの中から見えていた子どもの身体の一部を発見し、大阪府天満警察署に通報しました。
その後、大阪府天満警察署の警察官がA子の自宅を訪れ、A子は死体遺棄の疑いで逮捕されることになってしまいました。
(この事例はフィクションです)
死体遺棄罪(刑法第190条)
刑法第190条には、死体損壊等の罪として、死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊、遺棄、領得した場合について規定しています。
この中で、死亡した人の身体(死体)を遺棄した場合に成立する罪が死体遺棄罪です。
死体遺棄罪の対象となるのは「死体」で、身体の一部や、人の形体を備えた死胎を含むとされています。
「遺棄」とは通常、場所的移転を伴い、死体の現存する場所から他の場所に移動させて放棄することを指しますが、ほかにも、葬祭の義務を有する者が社会通念上埋葬と認められない方法で放棄することも含まれます。
死体遺棄罪の罰則は「3年以下の懲役」が規定されています。
公訴時効
「公訴時効」とは、犯罪を終わった時から一定期間を過ぎると公訴を提起できなくなる、つまり起訴できなくなることをいいます。
平成22年に,殺人罪など「人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪」については公訴時効が廃止されましたが、それ以外の罪に関しては今でも公訴時効があり、公訴時効を過ぎれば、刑事罰に処せられることはありませんので、事実上、逮捕されることはありません。
では、今回の事例にある死体遺棄罪の公訴時効について検討してみましょう。
公訴時効は定められている刑によって変わり、刑事訴訟法第250条に規定されています。
今回の死体遺棄罪の法定刑は「3年以下の懲役」ですので、刑事訴訟法第第250条第2項第6号に規定されている「5年未満の懲役にあたる罪」ですので、公訴時効は3年ということになります。
今回の事例は10年前の出来事ですので、死体遺棄事件では公訴時効が成立しているのではないかと疑問を持った方もいるかもしれません。
逮捕された女性が、子供を遺棄したのが、10年前であれば確かに公訴時効は成立しています。
しかし、女性が3年以内の間に転居していたりすると、どうなるでしょう。
転居時に遺体をコンクリート詰めにしたバケツを新居に移動させて、再び新居で死体遺棄行為に及んだと解されて逮捕されてしまう可能性があります。
つまり、遺体の入ったバケツを新居に移動させたことで、新たな死体遺棄罪が成立すると判断されることがあるのです。
このように一見公訴時効が成立しているように思えても、新たな行為によって別罪となってしまっていたり、時効の計算が始まる時期が考えていた時期とは違ったりすることがありますので、専門家である弁護士に相談しましょう。
大阪の刑事事件でお困りの方、死体遺棄事件に強い弁護士をお探しの方、公訴時効に詳しい弁護士をお探しの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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