誤振込みのお金を引き出し逮捕
誤振込みのお金を引き出した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
大阪市平野区に住む大学生のAさんは、アルバイトの給料が振り込まれているかどうか確認するため、銀行の普通預金通帳をATM機に挿入し印字させたところ、本来、4万円振り込まれるはずのところ40万円が振り込まれていました。
Aさんは、これを見て間違って振り込まれたものだと気づきましたが、そのまま自分のものにしてしまおうと思い、再度、通帳をATM機に挿入して現金40万円を引き落としました。
すると、後日、Aさんは大阪府平野警察署から窃盗罪で出頭するよう電話を受けてしまいました。
Aさんは何のことかわからず出頭すると、先日の誤振込みで現金を引き出した件であることを教えてもらいました。
Aさんとしては一刻もはやく弁償して事件を解決したいと思っていますが、誰に、どうすればよいのかわからず、両親とともに刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです。)
~ 誤振込み ~
誤振込みとは、振込者本人や銀行側の手違いにより、本来振込みの相手方ではない人の預金口座に誤って振込みをすること、あるいは本来振り込むべきではない額を誤って振り込むこと、をいいます。
本当にこんなことが起きるのかと思うのですが、現在は、インターネット上でボタン一つで振込みを行うことができますので、振込先や振込額をよく確認しないまま振り込んでしまう、というケースが考えられます。
~ 誤振込みがあった場合の対応 ~
では、銀行から誤振込みがあった場合、振込みを受けた受取人(Aさん)はどのように対応すればよいのでしょうか?
この点、判例(最決平成15年3月12日)は、
銀行にとって、払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは、直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄であるといわなければならない。
これを受取人の立場から見れば、受取人においても、銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として、自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には、銀行に上記の措置を講じさせるため、誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務がある
としています。
つまり、誤振込みに気づいた場合は、まず、
銀行に誤振込みがありました
と告知する(知らせる)必要があります。
~ 知らせずに引き出すと? ~
上の判例は、銀行に誤振込みを知らせずに引き出した点について、
誤った振込みがあることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻しを請求することは、詐欺罪の欺罔行為に当たり、また、誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから、錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には、詐欺罪が成立する
と判断しています。
判例の事案は、直接、窓口で引き出した事案で、騙される人(窓口の人)が存在する事案でした。
他方、今回の事例のようにATM機を使って引き出した場合は騙す対象(人)が存在しませんから詐欺罪ではなく窃盗罪(刑法235条)が成立する可能性があるというわけです。
また、ATM機を使って自分の口座等に振り替えをした場合は電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が成立する可能性があります。
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