~事件~
Aは、大阪市天王寺区の銀行ATM機の現金取り出し口から、前の客が取り忘れていた10万円を盗む窃盗事件を起こしました。
事件から10日ほどして、大阪府天王寺警察署に呼び出されて取調べを受けた際、Aは、警察官から弁護士を入れて、被害者と示談する事を勧められました。
Aは、大阪で刑事事件に強いと定評のある、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に被害者との示談を、相談しました。(フィクションです)
窃盗罪【刑法第235条】
人の物を盗れば窃盗罪となる事は誰でも知っていると思いますが、窃盗罪を法律的に読み解くと「他人の占有、所有する財物を、不法領得の意思を持って窃取する」事です。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に、その経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思をいいます。
例えば、自転車の所有者を困らせる目的で、自転車のサドルを盗る行為には、不法領得の意思が認められず窃盗罪は成立せず、器物損壊罪に当たるでしょう。
続いて「他人の占有、所有する財物」について考えてみたいと思います。
今回の事件でAが盗ったのは、前の客が取り忘れていた10万円です。
この客が、ATM機の前を去ってAが犯行に及ぶまでにどれくらいの時間があったのか等にもよりますが、この客がATM機に10万円を置き忘れた事を考えると、Aが盗った10万円は、前の客の占有を離れて、ATM機を管理する銀行に移行したと考えることができます。
その場合、Aは、銀行の占有する10万円を盗った事になるので、法律的にはAの起こした窃盗事件の被害者はATM機を管理する銀行になります。
しかし、今回の事件で、実質的な被害を被ったのはATM機に10万円を置き忘れた客です。
今回のように、法律的な観点から見た被害者と、実質的な損害を被った被害者が存在する場合、どちらと示談するべきなのでしょうか?
大阪の刑事事件に強い弁護士は「確かに、法律上の被害者と、実質的な被害者が存在するような刑事事件はよくあります。その場合、示談の相手は経済的損害を被った実質的な被害者となります。このような被害者に、被害弁済し、示談を締結することで、刑事処分が軽くなる可能性は十分に考えられます。」との見解です。