正当防衛を主張している大阪府福島警察署の傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
正当防衛を主張している傷害事件
土木作業員んをしているAさんは、先日、仕事仲間と共に飲みに行き、JR福島駅周辺の飲食店を何軒かはしご酒しました。
そして終電がなくなりタクシーで帰ろうとタクシー乗り場に並んで順番を待っていたところ、若者がその列に割り込んできたため、Aさんは、きちんと列の最後尾に並ぶように注意したのです。
すると若者が逆上し、Aさんの胸倉を掴んで身体を押してきたため、Aさんは若者の手を振り払い、顔面を数回殴り付けました。
若者がすぐに逃げていったので、その後、Aさんはタクシーに乗って帰宅しましたが、それから数日して、大阪府福島警察署の警察官から、Aさんの自宅に電話がかかってきました。
警察官から「若者から被害届が提出されたので、傷害罪として捜査している。取調べをするので出頭して欲しい。」と言われたAさんは、自分の行為は正当防衛だと主張し、出頭を拒否しています。
(フィクションです。)
傷害罪
傷害罪とは、暴行によって他人に傷害を負わせる犯罪です。
若者の顔面を数発殴るというAさんの行為は、当然のこと「暴行行為」に当たることは間違いありません。
また警察官から「傷害罪で捜査している。」と言われていることから、若者が傷害を負っていることは間違いないでしょう。
被害者が傷害を負っているかどうかは、医師の診断書の有無で判断されることがほとんどです。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
起訴されて有罪が確定すれば、この法定刑内の刑事罰が科せられることになりますが、偶発的な犯行で被害者が軽傷な場合は、略式起訴による罰金刑になることはほとんどです。
また起訴されるまでに被害者との示談が成立していれば不起訴になる可能性が高くなります。
ただ被害者が重傷を負った場合や、武器を使用しての暴行の場合などは、示談が成立したとしても起訴されることがあります。
正当防衛
正当防衛とは、急迫不正な侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するために、やむを得ずにした行為は、罰しないとした法律です。
よく「先に殴られたから殴り返したので正当防衛だ。」と勘違いしている方がいますが、先にやられたからやり返すというのは正当防衛ではありません。
正当防衛でいうところの、やむを得ずにした防衛行為は、必要最小限でなければなりません。
Aさんが、若者に胸倉を捕まれたのは、正当防衛でいうところの急迫不正な侵害に当たるでしょうから、これに対して若者の手を振り払う程度の暴行であれば正当防衛として認められる可能性があります。
しかしその後、顔面を数発殴打したのは単なる一方的な暴行行為になり、正当防衛どころか、過剰防衛としても議論されない可能性が高いでしょう。
若者が軽傷で済んでいれば、この暴行に至る経過が考慮されて、Aさんに対して厳重な刑事罰が科される可能性は低いと考えられますが、Aさんの主張する正当防衛は認められないでしょう。
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