歩行者とバイクの交通事故で歩行者が書類送検

2021-09-27

歩行者とバイクの交通事故で歩行者が書類送検された事件を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

交通事故は、車やバイクを運転する方であれば、誰しもが巻き込まれる可能性のある刑事事件の一つです。
通常、車やバイクの運転手が注意義務を怠り、人に怪我をさせた交通事故の場合、車やバイクの運転手には、過失運転致死傷罪や、危険運転致死傷罪等の法律が適用されることになり、そこで科せられた刑事罰は、前科や前歴になってしまいます。
しかし今回、バイクと歩行者の交通事故で、バイクの運転手ではなく、歩行者が書類送検されたのです。
本日は、この交通事件を大阪の刑事事件を専門に扱っている弁護士が解説します。
なおこの記事は、新聞等で報道されている内容を参考に作成しています。

事故の状況

50代の男性が、信号のある交差点の横断歩道を、赤信号を無視して横断中、青信号に従って交差点に進入してきたバイクと接触した事故。
接触によって、バイクは転倒し、運転していた30代の男性が手首を骨折する重傷を負ったが、歩行者の男性に大きな怪我はなかった。

重過失傷害罪

歩行者の男性は重過失傷害罪で送検されました。
重過失傷害罪とは、刑法第211条の後段に規定されている法律で、その条文によると「重大な過失により人を死傷させる」ことによって成立する犯罪です。
また重過失傷害罪の法定刑は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。
起訴されて有罪が確定すれば、この法定刑内の刑事罰を科せられることになるのですが、懲役とは刑務所等に収容されて労役が科せられますが、禁錮は刑務所等に収容されるだけで強制的な労役は科せられません。
また罰金とは国にお金を収める刑罰で、懲役、禁錮、罰金は全て前科になります。

重過失傷害罪は、自転車同士や、自転車と歩行者の交通事故で、人が死傷した場合などに、自転車の運転手に対してよく適用される法律ですが、歩行者に適用されるのは極めて異例ではないでしょうか。

重大な過失とは

まず「過失」について解説します。
過失とは、行為時の客観的状況下において、結果の発生を予見し、これを回避するために何らかの作為又は不作為に出るべき注意義務があるのに、これを怠ることです。
「重大な過失」の、「重大な」とは、注意義務違反の重大性を意味し、結果の重大性を意味するものではありません。
今回の事故を当てはめてみると、歩行者の男性は「赤信号に従わずに横断歩道を横断した」という注意義務を怠っただけでなく、周囲の安全確認を怠ったという注意義務違反を犯しています。
この行為が、重過失傷害罪でいうところの「重大な過失」に当たると判断されたということになります。

重過失傷害罪で書類送検されるとどうなるの

書類送検=有罪ではありません。
書類送検とは、在宅捜査されていた被疑者の関係書類を検察庁に送致することです。
書類送検されたということは、警察の捜査が終了している場合がほとんどですが、書類送検後も、検察官の指示等で補充の捜査が行われることがあり、それら全ての捜査が終結した段階で、検察官は起訴するかどうかを判断します。
また書類送検時の罪名(今回の場合だと「重過失傷害罪」)については、警察で判断されることがほとんどですので、書類送検後に適用罪名が変更されることもあります。
今回の事件の場合ですと、送致を受けた検察官が、警察署から送致された書類を精査することになり、歩行者男性を呼び出して取調べをする等して、男性の行為が重過失傷害罪に該当するか否かを検討することになるでしょう。
また該当するにしても、こういった交通事故で歩行者に対して刑事罰を科せるといった前例が少ないことから、男性に対して刑事罰を科すことが妥当かどうかも検討することになるのではないでしょうか。

弁護士の見解

法律的には、重過失傷害罪が適用されてもおかしくはないと思います。
ただこういった交通事故で歩行者に対して刑事罰が科せられるのは非常に珍しいケースなので、検察官は証拠書類だけでなく、過去の裁判例と比較して、どの様な処分にするのかは慎重に検討する必要があると思います。
刑事事件を専門に扱う弁護士として、男性が不起訴を望むのであれば、まずはバイクの運転手との示談を勧めることになるのではないでしょうか。