これまで5回にわたって独占禁止法について、大阪の刑事事件に強い弁護士が解説してきましたが、最終回は、JR東海のリニア談合事件を解説します。
~市場【一定の取引分野があるのか】~
今回のリニア工事は現在のところ品川から名古屋までしかなく、しかも起訴されたのは品川駅の工事のみということなので、一見すると市場がないかのように見えます。
限られた範囲であっても、発注者が特定の相手と直接契約した(随意契約)でなく入札方式によった場合、自由な競争により受注獲得を目指す状況があります。
すなわち、受注希望者のうちの一社が価格を上げれば発注者が他の会社を選ぶため価格を上げることができないという状態ですので、市場があるといえます。
「一定の取引分野」というからには、ある程度の規模が想定されます。
リニア工事は一ヶ所ではなく、複数の工事に分かれており、其々で入札が行われていますが、今回起訴されたのは品川駅の3カ所の工事に関するもののみです。
およそ今後のリニア工事について話し合いすることが決まって、個別の工事で調整することになっていたとすれば、「相互にその事業活動を拘束」する基本ルールの合意があったといえ、リニア工事全体を「一定の取引分野」とし、品川駅の工事については個別の受注における「遂行」であり、品川駅の工事についてだけ起訴したとしても、刑事罰に問うことはできるでしょう。
しかし、このようにして刑罰を科すには基本合意があったことを検察官が立証する必要があります。
基本合意を立証できず、品川駅の3カ所の工事の個別合意だけ立証できたとして、この工事が「一定の取引分野」といえるのは厳しいかと思われます。
~大手ゼネコンにしかできないのではないか~
リニア工事のような先端技術の工事は技術力も資金力も大手ゼネコンでしかできないと言われています。
入札によれば、技術力のない会社が異常に安い価格で受注してしまうとも言われています。
しかし、日本遊技銃協同組合事件(東京地裁平成9年4月9日)や大阪バス協会事件(審判決定平成7年7月10日)などの下級審裁判・審決例で問題となった例は、事業者団体が一定の基準を作り、そこに至らないものを排除するものでした。
本来国会や地方議会ら立法がするべきことを勝手にやったというものです。
今回のリニア談合は特定の業者に受注させるよう話し合ったもので典型的な談合であり、競争制限を目的としたもので、正当化の余地はありません。
今現在大手ゼネコン以外が割高であったり技術に不安がある場合でも、入札や受注を通して技術の向上や価格の低下があり得ます。
そもそも、現在大手ゼネコンしか技術や資金がないのも、これまでの談合により、談合企業内で競争が行われなかったり、他の会社が排除されて競争がなかったことも一因です。大手ゼネコンのみが技術や資金を有するとの主張は、これまでのそして今後の談合を容認するものでしかありません。
以上のような観点から、JR東海のリニア建設を巡る談合事件は、不当な取引制限に該当し、独占禁止法違反で有罪判決となる可能性が非常に高いといえます。
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