大学生A(22歳)は奈良県に旅行中、記念を残そうと公衆トイレの壁一面にスプレーで大きな落書きをしました。
後日、奈良県奈良西警察署に建造物損壊罪で逮捕されたAの両親は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼しました。(フィクションです。)
建造物損壊罪【刑法第260条前段】
他人の建造物を損壊すれば「建造物損壊罪」に当たり、建造物損壊罪で起訴されて有罪が確定すれば「5年以下の懲役」が科せられます。
ここにいう「損壊」とは物理的に建造物を壊してしまうことだけでなく、その建造物の景観を著しく壊したり、使用価値を減損する場合も含まれます。
つまり落書きや過剰なビラ貼り行為についても「損壊」に当たることがあり、建造物損壊罪となる可能性があるのです。
ちなみに、一見建造物の一部に見えても、容易に取り外すことができる物を損壊した場合は、建造物損壊罪ではなく、器物損壊罪に当たる可能性があります。
Aの事件においても、落書きした箇所によっては建造物損壊罪ではなく器物損壊罪に当たる場合もあります。
器物損壊罪の罰則規定は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」ですので、建造物損壊罪の罰則規定と比べると軽いものです。
器物損壊罪は親告罪で、告訴権者の告訴がなければ起訴を提起することができないので、起訴されるまでに示談して告訴を取り下げてもらうことができれば、不起訴処分となり、刑事罰を受けることはありません。
しかし建造物損壊罪は、非親告罪ですので、例え被害者等の告訴がなくても刑事罰を受ける可能性があるので注意してください。
軽い気持ちでした落書きが、その程度や対象物によって、ただのイタズラではすまず、刑事事件へと発展するだけでなく、厳しい刑事罰の対象となります。