振り込め詐欺事件での逮捕について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
◇事件◇
Aさんは、証券会社の社員などを装って泉南市の80代女性に電話し、「社債の購入で名義を貸したのは犯罪だ。裁判所に差し押さえられるので、現金1,000万円を振り込んで欲しい」などと嘘を言いました。
Aさんの電話を信じた女性から振り込まれた1,000万円を、Aさんは仲間に、大阪府内のATM機から複数回に分けて引き下ろすように指示しました。
先日、この仲間が、泉南市のコンビニのATM機から現金を引き下ろしたことで大阪府警に逮捕されてしまいました。
Aさんは、振込め詐欺で逮捕されることをおそれて、大阪の刑事事件に強いと評判の弁護士に相談しました。
(フィクションです。)
◇振り込め詐欺とは◇
振り込め詐欺は、被害者に電話をかけ、被害者の配偶者や子供、孫など親族を装ったり、銀行員等を名乗って現金の支払いを要求する犯罪手法です。
振り込め詐欺はその名の通り、詐欺罪に該当し、刑法246条により、その法定刑は「10年以下の懲役」です。
また、このような犯罪を組織的に行った場合には組織的犯罪処罰法の適用によりさらに重い刑罰が科せられます。
振り込め詐欺のほとんどは、高齢者を対象としており、再三の警察取締りにも関わらず、増加の一途を辿っています。
そのため、振り込め詐欺で逮捕された場合は、厳罰傾向にあります。たとえ、犯罪の末端関与者であったとしても、厳しい判決が下されることが珍しくありません。
振り込め詐欺で逮捕された場合には、組織的な犯罪を疑われるので、関係者との通謀を防止するために、接見禁止処分が下される可能性が非常に高く、逮捕された方とは弁護士以外は面会ができません。
そのため、事件の解決には、弁護士による早期の介入が必要不可欠といえます。
◇振り込め詐欺の最近の傾向◇
振り込め詐欺は、「トバシ」と呼ぶ架空名義の携帯電話やプリペイド携帯電話、「イタ」と呼ぶ架空名義の預金口座を「道具屋」などに用意してもらい、犯行の役割分担は、被害者に電話をかけて騙す役の「かけ子」、振り込まれたお金をATMから引き出す「出し子」などに役割分担されています。
最近は、金融機関がATM機を監視するなどして、口座の使用が難しくなってきているので、被害者宅や被害者と一緒に銀行に出向き、手渡しで現金を受け取る「受け子」という役割が登場するケースも増えてきています。
◇振り込め詐欺における弁護活動◇
振り込め詐欺の弁護活動において、被害者との示談が重要となります。
ただ、振り込め詐欺は通常、被害者の人数、被害金額が共に大きいのが特徴です。
また、被害者の処罰感情も強いため、限られた時間の中で、振り込め詐欺の被害者全員との示談が困難であったり、示談金の準備が難しくなったりするケースがほとんどです。
また、振り込め詐欺の被害者は犯人に連絡先を教えたり、交渉、面会したりすることは拒否するでしょう。
そのため、振り込め詐欺の示談は、専門家である弁護士に依頼して示談交渉を進めるべきなのです。
実刑判決が科せられる可能性が非常に高い振り込め詐欺にあっても、無罪や執行猶予判決を獲得するケースもあります。先ほど述べたように、「道具屋」や「受け子」、「出し子」などの末端関与者など様々な役割がありますし、その役割に応じて適切な弁護活動が必要となります。
振り込め詐欺グループは、ピラミッド型に組織化していることもあり、その上層部のことを末端関与者が知らず、さらに、事件の内容も知らされず、知らない間に振り込め詐欺に関与している場合もあり、そのような受け子の犯意を否定し、無罪判決が言い渡されたケースもあります。