背任罪の刑事弁護活動について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
◇事件◇
Aさんは、東大阪市の近鉄布施駅近くにある信用金庫に勤めています。
Aさんは、この信用金庫で融資担当課長の職にあります。
Aさんは、布施駅近くで工務店を営んでいる友人に数年前から融資をしています。
融資を開始した当初は毎月利息が返済されていましたが、業績が悪化し始めた5年ほど前からは、返済が滞っていました。
しかし友人に懇願されて断ることができなかったAさんは、単に既存の貸付金の回収を図るとの名目(救済融資)で、その後も約50回にわたって合計8000万円を無担保で貸し付けました。
その後、友人の工務店が倒産し、救済融資を含めて全ての貸付金の回収ができなくなったことによって、Aさんの不正融資が信用金庫で問題視されてAさんは、信用金庫から調査を受けています。
信用金庫が、背任罪での刑事告訴を検討していることを知ったAさんは、大阪で刑事事件に強いと評判の、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用しました。
(フィクションです)
◇背任罪~刑法第247条~◇
背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立します。
背任罪の法定刑は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
~主体~
背任罪の主体は「他人のためにその事務を処理する者」ですが、株式会社の発起人、取締役、会計参与、監査役、執行役等の役職員が背任行為に及べば、刑法第247条に定められた背任罪ではなく、会社法第960条に定められた「特別背任罪」の適用を受けます。
特別背任罪の法定刑は「10年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその併科」と、背任罪に比べると非常に厳しいものです。
Aさんの身分は、信用金庫の融資担当課長ですので、特別背任罪の主体にはなり得ず、背任罪が適用されます。
~図利加害目的~
背任罪が成立するには、その背任行為に「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的」が必要となります。
これを図利加害目的といいます。
背任罪が財産犯であることを考えると、ここでいう「利益」「損害」は、財産上のものに限るという説もありますが、判例では、自己の社会的地位、信用、面目、経営権等を保全、維持することなどの身分上の「利益」、これらを失墜させる「損害」など、財産上に限られず身分上の「利益」「損害」も含むとされています。
~Aさんの事件を検討【融資】~
上記のように、背任罪の成立には図利加害目的が必要となります。
つまり、本人の利益を図る目的で行為に及んだ場合は背任罪を構成しない場合もあるのです。
本来、信用金庫の業務における「融資」は、融資先と信用金庫の利益を図る目的で行われるものですが、同時に、それまでの融資の焦げ付きを防ぐなどの本人の利益を図る目的が、自己又は第三者の利益を図る目的と併せて認められることがあります。
このような場合には、目的の主従により背任罪の成否が決定することになるのです。
その目的がなければ当該行為に出なかったようなものが主たる目的と認められますが、本人の利益を図る目的が決定的な動機ではない場合には、背任罪の図利加害目的が認められてしまうでしょう。
本日は、背任罪の主体と、図利加害目的について解説しました。
明日は、Aさんの行為が背任罪に当たるかどうかについて検討したと思います。
背任罪が成立するかどうかの判断は、法律の専門知識を有している弁護士であっても非常に難しいとされています。