【虞犯少年】犯罪を犯していなくても保護観察処分に・・・
虞犯少年で保護観察となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
大麻の共同所持で逮捕されるも釈放
守口市に住むA君は、幼なじみの友人と一緒にドライブをしていたところ、大阪府守口警察署の警察官に職務質問されました。
その際に、車のアタッシュケースの中に友人が隠し持っていた乾燥大麻が見つかってしまい、A君は友人と共に大麻の共同所持の容疑で現行犯逮捕されました。
しかし、A君は、乾燥大麻については全く知らず、逮捕直後から一貫して容疑を否認していました。
その結果、10日間勾留された後にA君は釈放されました。
しかし、虞犯少年として家庭裁判所に送致されたA君は、今後の手続や処分について不安になり、両親と共に、少年事件に強いと評判の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
虞犯少年とは
家庭裁判所は、非行があるとされている少年について、非行事実の有無を確定し、非行のある少年に対して、その性格や環境の問題に応じて、少年の更生に適した最終的な処分を選択します。
家庭裁判所が取り扱う非行があるとされている少年は、次の3つに分類されます。
①犯罪少年
罪を犯した少年のことです。
②触法少年
刑罰の定めのある法令に触れる行為をしたが、行為時に14歳未満であるため、刑法上罪を犯したことにならない少年のことです。
③虞犯少年
保護者の正当な監督に服しない、正当な理由がないのに家庭に寄りつかない、いかがわしい場所に出入りするなどといった一定の事由があり、その性格や環境からみて将来罪を犯すおそれのある少年のことをいいます。
家庭裁判所が、犯罪少年だけではなく、触法少年や虞犯少年も取り扱う対象としているのは、少年審判の目的が、罪を犯した者を非難し処罰することではなく、非行性を排除し将来罪を犯すことを防ぐことにあるためです。
このため、捜査機関は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、少年について犯罪の嫌疑がある場合のみならず、犯罪の嫌疑が認められない場合でも、虞犯に該当する場合には、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
虞犯少年についてもう少し詳しくみていきましょう。
虞犯少年は、少年法大3条1項3号のイ、ロ、ハ、ニの事由(これを「虞犯事由」といいます。)のいずれか1つ以上に該当し、かつその性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し(14歳以上の場合)、又は刑罰法令に触れる行為(14歳未満の場合)をするおそれ(これを「虞犯性」と呼びます。)のある少年のことです。
虞犯事由とは、次の4つです。
(イ)保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
(ロ)正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
(ハ)犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
(ニ)自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
将来少年が罪を犯す、又は刑罰法令に触れる行為を行うおそれである虞犯性については、知能性格等の本人の問題点や、家庭・学校・職場・交流関係などの非行の誘因・抑止双方に関係する環境的要因などを総合的に検討して判断されます。
保護観察処分に向けて
少年審判では、非行事実と要保護性について審理されます。
要保護性とは、①少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること、②保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性、③保護処分による保護がもっとも有効でかつ適切な処遇であること、の3つの要素により構成されるものです。
虞犯事件は、過去に問題行動が繰り返されていたり、複数の前歴があったりと、少年の要保護性が高いケースが少なくありません。
そのため、虞犯事件といえども、児童自立支援施設送致や少年院送致となる割合が高い傾向にあります。
虞犯事件においても、要保護性の解消に向けて十分な活動を行う必要があります。
保護観察処分とは、保護処分の1つで、少年を施設に収容せずに社会生活をさせながら、保護観察所の行う指導監督及び補導援護によって少年の改善更生を図る、社会内処遇です。
施設収容ではなく社会内での更生が可能であると審判で認められれば、保護観察が決定されることになります。
そのためには、審判の審理対象となる要保護性の解消に向けた活動が重要なポイントとなります。
少年自身の内省を深めるとともに、少年の家庭、学校、職場、交際関係などといった周囲の環境を改善し、再び非行に陥ることのないように整えていく必要があります。
このような活動は、少年本人とその保護者だけでは難しい場合が多く、付添人である弁護士の協力を仰ぎながら行うのがよいでしょう。