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~刑法を解説~ 第36章 窃盗及び強盗の罪~①~
~刑法を解説~46回目の本日は、第36章窃盗及び強盗の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
窃盗及び強盗の罪~①~
本日は、第36章窃盗及び強盗の罪に規定されている犯罪の中から、窃盗罪と不動産侵奪罪について解説します。
第235条 窃盗罪
第235条の2 不動産侵奪罪
について解説します。
まず第235条に規定されているのが窃盗罪です。
第235条の条文を引用すると、窃盗罪は、他人の財物を窃取することによって成立する犯罪です。
簡単に言うと、窃盗罪とは、人の物を盗むことで、皆さんが一番身近に感じる犯罪の一つではないでしょうか。
スーパー等のお店の商品を盗む万引きや、自転車を盗む自転車盗、人ごみの中で人を財布を盗むスリ、そして自転車のカゴに入っているカバンを盗む引ったくり、留守の家に忍び込んで盗む空き巣など、これらは全て窃盗罪です。
そして同じ窃盗罪でも、有罪となった場合に科せられる刑罰は様々です。
例えば万引きのような比較的被害額が少額な窃盗事件であれば、そもそも刑事罰が科せられない不起訴という結果で手続きが終結することも珍しくありませんが、被害額が高額となりがちな侵入窃盗事件や、自動車盗など、また犯情が悪質な引ったくりやスリなどは、初犯であっても厳しい刑事罰が科せられる可能性があるのが特徴です。
ちなみに窃盗罪の客体となるのは、他人の占有する他人の財物です。
お金や物などが代表的ですが、電気など無体物であっても窃盗罪の客体となり、この事は刑法第245条に明記されています。
※刑法第245条
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
そして第235条のに規定されているのが不動産侵奪罪です。
不動産侵奪罪は、他人の不動産を侵奪することによって成立する犯罪ですが、あまり適用されることのない罪名なために、聞いた事がない方も多いのではないでしょうか。
不動産侵奪罪でいうところの「侵奪」とは、不動産に対する他人の占有を排除し、これを自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
窃盗及び強盗の罪~①~の罰則
①窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
②不動産侵奪罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第36章窃盗及び強盗の罪~②~」に続く
~刑法を解説~ 第35章 信用及び業務に対する罪
~刑法を解説~45回目の本日は、第35章信用及び業務に対する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
信用及び業務に対する罪
本日は、第35章信用及び業務に対する罪に規定されている
第233条 信用毀損罪・偽計業務妨害罪
第234条 威力業務妨害罪
第234条の2 電子計算機損壊等業務妨害罪
について解説します。
第233条には、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いて人の信用を毀損することによって成立する信用毀損罪と、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いて人の業務を妨害することによって成立する偽計業務妨害罪が規定されています。
ここでいう「虚偽の風説を流布」とは、真実と異なった内容の事項を不特定又は多数の人に伝播させることを意味します。
これは分かりやすく言うと「嘘の情報を世間に流すこと」です。
続いて「偽計を用いる」とは、人を騙したり、人の錯誤、不知を利用したり、人を誘惑したりする他、計略や策略を講じるなど、業務妨害罪では、威力以外の不正な手段を用いることを意味するとされています。
また信用毀損罪の「信用」とは、経済的な側面における人の社会的な評価、つまり経済的な信用を指しますが、サービスの品質や、商品そのものの信用も含まれるとされています。
また業務妨害罪の成立に当たっては、実際に業務遂行が妨害されることまでは必要とされておらず、妨害の結果が発生する可能性があれば業務妨害罪が成立するとされています。
そして、偽計ではなく威力を用いて人の業務を妨害することによって成立するのが、第234条の威力業務妨害罪です。
ここでいう「威力」とは、暴行や脅迫は当然のこと、それらに至らないまでも、人の意思を制圧するような勢力を意味します。
そしてこの章の最後に解説するのが第234条の2に規定されている電子計算機損壊等業務妨害罪です。
この法律は、電子計算機、いわゆるコンピューターに対して何らかの加害を加えることによって、人の業務を妨害することによって成立します。
信用及び業務に対する罪の罰則
①信用毀損罪・偽計業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
②威力業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
③電子計算機損壊等業務妨害罪の法定刑は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第36章窃盗及び強盗の罪」に続く
~刑法を解説~ 第34章 名誉に対する罪
~刑法を解説~44回目の本日は、第34章名誉に対する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
名誉に対する罪
本日は、第34章名誉に対する罪に規定されている
第230条 1項 名誉毀損罪
2項 死者名誉毀損罪
第231条 侮辱罪
について解説します。
この章では、名誉に対する罪である(死者)名誉毀損罪と、侮辱罪について規定されています。
インターネットが普及し、SNSの利用者の増加に伴って、ネット上において本章に規定されている犯罪が社会問題となり、度々、テレビや新聞等で特集が組まれるほど話題になっています。
まず第230条の名誉毀損罪について解説します。
名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。
ここで摘示する事実は、真実であろうと虚偽であろうと、名誉毀損罪の成立には影響しません。
また2項の死者名誉毀損罪は、死者の名誉を毀損することによって成立する犯罪ですが、死者名誉毀損罪は、摘示した事実が虚偽の場合にしか処罰の対象となりません。
ここでいう「公然」とは、不特定又は多数人が認識できる状態を意味し、また摘示される事実は、真実、虚偽にはとらわれませんが、少なくとも人の社会的評価を害する内容でなければならず、ある程度具体的な内容を含まなければならないとされています。
他方、第231条に規定されている侮辱罪は、公然と侮辱することによって成立する犯罪で、事実を摘示することまで必要とされていません。
ネット上における誹謗中傷事件
最近ではインターネットの匿名性を利用した誹謗中傷が、侮辱罪として刑事事件化されることが珍しくありません。
インターネットでは、誰もが目にすることのできる掲示板等に、誰もが簡単に投稿できるので、投稿した内容によっては人を傷つけることもあり、大きなネットトラブルに発展する危険性もひめています。
ここ数年の間に、そんな事件が多発しており、侮辱罪が見直されました。
そして今年の7月7日から侮辱罪の罰則が強化されています。
名誉に対する罪の罰則
①(死者)名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。
②侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
「~刑法を解説~第35章信用及び業務に対する罪」に続く
~刑法を解説~ 第33章 略取、誘拐及び人身売買の罪~②~
~刑法を解説~43回目の本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
略取、誘拐及び人身売買の罪~①~については⇒⇒こちらをクリック
略取、誘拐及び人身売買の罪~②~
本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪に規定されている中から
第226条の2 1項 人身買受け罪
2項 未成年者買受け罪
3項 営利人身買受け罪
4項 人身受渡し罪
5項 所在国外移送人身売買罪
第226条の3 被略取者等所在国外移送罪
第227条 1項 営利拐取等幇助目的被拐取者引渡し罪
2項 身代金拐取者幇助目的被拐取者引渡し罪
3項 営利被拐取者引渡し罪
4項 身代金被拐取者収受罪、収受者身代金取得罪
について解説します。
まず第226条の2では人身売買について規定されています。
第1項では、人を買い受けることによって成立する「人身買受け罪」が、第2項では、未成年者を買い受けることによって成立する「未成年者買受け罪」が規定されいます。
そして第3項では、営利、わいせつ、結婚、海外目的で人を買受けることによって成立する営利等人身買受け罪が規定されており、第4項では人を売り渡すことによって成立する人身受渡し罪が、第5項では、所在国外に移送する目的で人身売買することによって成立する所在国外移送人身売買罪が規定されています。
第226条の3では、略取・誘拐されたり、人身売買された人を所在国外に移送することによって成立する被略取者等所在国外移送罪が規定されています。
第227条1項では、略取や誘拐、人身売買等の犯人を幇助(助ける)する目的で、こういった事件の被害者を、収受、輸送したり、蔵匿、隠避した場合に成立する営利拐取等幇助目的被拐取者引渡し罪が規定されています。
第227条2項は、身代金目的略取罪・誘拐罪の犯人を幇助(助ける)する目的で、こういった事件の被害者を、収受、輸送したり、蔵匿、隠避した場合に成立する身代金拐取者幇助目的被拐取者引渡し罪を規定しており、第227条3項は、営利やわいせつ、加害目的で、略取、誘拐、人身売買された被害者を引き渡したり、収受、輸送、蔵匿することによって成立する営利被拐取者引渡し罪が規定されています。
そして第227条の最後、4項に規定されているのが、身代金目的略取・誘拐の目的で略取・誘拐された被害者を収受した場合に成立する身代金被拐取者収受罪です。
また4項には、身代金目的略取・誘拐の目的で略取・誘拐された被害者を収受した者が、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、財物を交付させたり、財物を要求した場合に成立する収受者身代金取得罪も規定されています。
略取、誘拐及び人身売買の罪の罰則~②~
①人身買受け罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
②未成年者買受け罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
③営利人身買受け罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
④人身受渡し罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
⑤所在国外移送人身売買罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
⑥被略取者等所在国外移送罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
⑦営利拐取等幇助目的被拐取者引渡し罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
⑧身代金拐取者幇助目的被拐取者引渡し罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
⑨営利被拐取者引渡し罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑩身代金被拐取者収受罪、収受者身代金取得罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
「~刑法を解説~第34章名誉に対する罪」に続く
~刑法を解説~ 第33章 略取、誘拐及び人身売買の罪~①~
~刑法を解説~42回目の本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
略取、誘拐及び人身売買の罪~①~
本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪に規定されている中から
第224条 未成年者略取罪・誘拐罪
第225条 営利目的等略取罪・誘拐罪
第225条の2 1項 身代金目的略取罪・誘拐罪
2項 拐取者身代金取得罪・拐取者身代金要求罪
第226条 所在外国移送略取罪・誘拐罪
について解説します。
この章では、略取罪と誘拐罪について規定されいます。
略取罪と誘拐罪は、人をその本来の生活環境から離脱させて自己又は第三者の実力支配下に移すことによって成立する犯罪ですが、その手段が異なります。
誘拐罪は、その手段が欺罔や誘惑に限られており、それ以外の手段が用いられた場合は略取罪となります。
第224条では、未成年を略取、誘拐することで成立する、未成年者略取・誘拐罪が定めらています。
未成年者略取罪・誘拐の客体となるのは民法第4条に規定されている「未成年」ですので、18歳未満の者を意味します。
また未成年者本人の承諾があったとしても、親など保護監督権のある者の許可なく、未成年を本来の生活環境から離脱させて自己又は第三者の実力支配下に移すと、未成年者略取罪・誘拐が成立するので注意が必要です。
そして第225条の営利目的等略取罪・誘拐罪では、営利やわいせつ、結婚や生命や身体に対して危害を加えることを目的にした略取、誘拐行為を禁止しています。
第225条の2では、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させる目的で、人を略取・誘拐することによって成立する、身代金目的略取罪・誘拐罪が規定されています。
最近はあまり発生することがなくなりましたが、戦後間もない昭和30年代には、身代金目的に略取・誘拐する事件が頻発しており、前条の営利目的等略取罪と区別し、よりも厳しく処罰するためにできた法律だと言われています。
また身代金目的略取罪・誘拐罪は、予備行為も処罰の対象となります。(第228条の3)
そして第225条の2第2項で規定されている、拐取者身代金取得罪・拐取者身代金要求罪は、略取・誘拐した犯人が、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、財物を交付させたり、財物を要求した場合に成立します。
本日最後となる第226条の所在外国移送略取罪・誘拐罪は、所在国外に移送する目的で、人を略取・誘拐することによって成立する犯罪です。
略取、誘拐及び人身売買の罪の罰則~①~
①未成年者略取罪・誘拐罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
②営利目的等略取罪・誘拐罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
③身代金目的略取罪・誘拐罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
④拐取者身代金取得罪・拐取者身代金要求罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
⑤所在外国移送略取罪・誘拐罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
「~刑法を解説~第33章略取、誘拐及び人身売買の罪~②~」に続く
~刑法を解説~ 第32章 脅迫の罪
~刑法を解説~41回目の本日は、第32章脅迫の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
脅迫の罪
本日は、第32章脅迫の罪に規定されている
第222条 脅迫罪
第223条 強要罪
について解説します。
この章では、脅迫罪と強要罪が規定されています。
脅迫罪とは、生命、身体、自由や名誉、財産に危害を加える旨を告げて、人を脅迫することで成立する犯罪で、告知相手の親族の生命、身体、自由や名誉、財産に危害を加える旨を告げて脅迫した場合も成立します。
脅迫罪は個人の意思の自由を保護法益をしており、脅迫行為そのものを規制するための法律なので、脅迫によって相手が畏怖したかどうかは、脅迫罪の成立に影響を与えません。
ただ脅迫の内容は、相手を畏怖させる程度の内容が必要とされており、不快感や困惑、気味悪さ等を感じるにとどまる内容の場合は、脅迫罪とならないこともあります。
ちなみに相手への告知方法は、言葉によるもの、手紙等による文書であるものでも脅迫罪は成立し、最近ではSNSや、ネット上の掲示板への投稿が脅迫罪となる事件が増加傾向にあります。
続いて223条の強要罪について解説します。
強要罪とは、前条の脅迫罪に該当するような脅迫行為や、暴行を用いて、人に義務のないことをさせたり、人が権利を行使することを妨害することによって成立する犯罪で、未遂についても処罰の対象とされています。
「土下座を強要する」といった内容の強要事件をよく耳にしますが、相手に土下座をさせただけでは、単に義務なきことをその人の意思に反してやらせているだけで、必ず強要罪が成立するとは限りません。
ただ土下座をさせる際に、相手や相手の親族に対する脅迫行為や、暴行行為があれば間違いなく強要罪が成立するでしょう。
脅迫の罪の罰則
①脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
②強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第33章略取、誘拐及び人身売買の罪」に続く
~刑法を解説~ 第31章 逮捕及び監禁の罪
~刑法を解説~40回目の本日は、第31章逮捕及び監禁の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
逮捕及び監禁の罪
本日は、第31章逮捕及び監禁の罪に規定されている法律の中から
第220条 逮捕罪・監禁罪
第221条 逮捕致死(傷)罪・監禁致死(傷)罪
について解説します。
この章では、逮捕と監禁に関する法律が規定されています。
逮捕罪も監禁罪も、個人の行動の自由を保護法益としている法律です。
それではまず第220条に規定されているのが、逮捕罪と監禁罪について解説します。
不法に人を逮捕した場合に成立するのが逮捕罪で、不法に監禁した場合に成立するのが監禁罪です。
逮捕とは、人の身体に対して直接的な拘束を加えて、その行動の自由を奪うことで、監禁とは、人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にして、その行動の自由を奪うことを意味します。
分かりやすく説明すると、人の身体をロープで縛るなど、有形力を用いる方法によって自由を奪うのが「逮捕」に当たり、鍵を閉めて部屋に閉じ込めたりして、行動の自由を場所的に制限するのが「監禁」に当たると言えます。
ちなみに監禁罪の成立は、必ずしも、その場所から脱出することが不可能であることまでは必要とされておらず、著しく困難である程度で足りるとされています。
例えば、バイクの後部に乗せた人がバイクから降車したがっているのに、そのままバイクを停止させずに走行を続けていれば、監禁罪が成立する可能性があるのです。
逮捕、監禁行為によって人を死傷させると、第221条の逮捕致死(傷)罪や監禁致死(傷)罪が成立します。
逮捕・監禁致死(傷)罪が成立するには、逮捕、監禁行為と人の死傷との間に因果関係が必要です。
因果関係さえ認められれば、人を死傷することの故意まで必要とされないので、例えば、建物の2階の部屋に閉じ込めていた被害者が、逃走するために2階の窓から飛び降りて傷害を負った場合などは、監禁致傷罪が成立することになります。
逮捕及び監禁の罪の罰則
①逮捕罪・監禁罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
②逮捕致死(傷)罪・監禁致死(傷)罪の法定刑は、傷害の罪と比較して、重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第32章脅迫の罪」に続く
~刑法を解説~ 第30章 遺棄の罪
~刑法を解説~39回目の本日は、第30章遺棄の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
遺棄の罪
本日は、第30章遺棄の罪に規定されている法律の中から
第217条 遺棄罪
第218条 保護責任者遺棄罪
第219条 遺棄致死傷罪、保護責任者遺棄致死傷罪
について解説します。
この章では、「遺棄」に関する犯罪が規定されています。
遺棄とは、保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことです。
まず第217条に規定されている遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを遺棄した場合に成立する犯罪です。
この法律の主体には制限がありませんが、客体となるのは、条文に列挙されているとおり・老年・幼年・身体障害又は疾病で扶助を必要とする者に限られます。
遺棄とは、前で解説したように保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことですが、遺棄罪でいうところの遺棄行為は、被遺棄者を場所的に移転させることが必要とされます。
続いて第218条の保護責任者遺棄罪について解説します。
保護責任者遺棄罪の客体となるのは、遺棄罪と同様に老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちですが、主体が、こういった人たちを保護する責任のある人たちとなります。
つまり保護責任者遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを保護する責任のある者が遺棄した場合に成立する犯罪で、その行為は、生存に必要な保護をしないことです。
遺棄罪のように、被遺棄者を場所的に移転させるだけでなく、場所的な移転をしなくてもその場所で生存に必要な措置をせずに放置すれば保護責任者遺棄罪が成立する可能性があるのです。
そして遺棄罪や、保護責任者遺棄罪の行為によって、被遺棄者を死傷させた場合に成立するのが、第219条の遺棄致死傷罪や、保護責任者遺棄致死傷罪といった犯罪です。
遺棄の罪の罰則
①遺棄罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②保護責任者遺棄罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
③遺棄致死傷罪や保護責任者遺棄致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
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「~刑法を解説~第31章逮捕及び監禁の罪」に続く
~刑法を解説~ 第29章 堕胎の罪
~刑法を解説~38回目の本日は、第29章堕胎の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
堕胎の罪
本日は、第29章堕胎の罪に規定されている法律の中から
第212条 堕胎罪
第213条 同意堕胎罪、同意堕胎致死傷罪
第214条 業務上堕胎罪、業務上堕胎致死傷罪
第215条 不同意堕胎罪
第216条 不同意堕胎致死傷罪
について解説します。
この章では、「堕胎」に関する犯罪が規定されています。
この章で規定されている法律は、胎児の生命、身体を保護するとともに、妊娠中の女性の生命、身体を保護しているものもあります。
まず各法律を解説する前に、この章でメインとなる「堕胎」について簡単に説明します。
刑法でいうところの「堕胎」とは、自然分娩に先だって人為的に胎児を母体から分離、排出させることで、その手段、方法は問われません。
それではまず、第212条の堕胎罪について解説します。
堕胎罪は、妊娠中の女性が、薬物を使用するなどして堕胎した場合に成立する犯罪です。
妊娠中の女性自らが堕胎行為に及んだ場合は当然ですが、第三者に堕胎を依頼して堕胎させた場合も女性に対しては堕胎罪が成立し、実際に堕胎した者には、同意堕胎罪や業務上堕胎罪が成立します。
第213条には同意堕胎罪が規定されています。
この法律は、妊娠中の女性から嘱託を受けたり、承諾を得て堕胎させることで成立する犯罪で、堕胎行為によって女性に死傷を負わせた場合は、同意堕胎致死傷罪が成立します。
そして、堕胎したのが、医師や助産師、薬剤師や医薬品販売業者の場合は、第214条の業務上堕胎罪等となります。
最後に解説する第215条に規定されている不同意堕胎罪は、これまでの規定と異なり妊娠している女性の嘱託や承諾なく堕胎することで成立する犯罪です。
ちなみに、不同意堕胎罪等については未遂であっても刑事罰の対象となります。
また不同意の堕胎によって、女性が死傷した場合は第216条の不同意堕胎致死傷罪が成立します。
堕胎の罪の罰則
①堕胎罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②同意堕胎罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。
③同意堕胎致死傷罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
④業務上堕胎罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
⑤業務上堕胎致死傷罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑥不同意堕胎罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑦不同意堕胎致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
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「~刑法を解説~第30章遺棄の罪」に続く
~刑法を解説~ 第28章 過失傷害の罪
~刑法を解説~37回目の本日は、第28章過失傷害の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
過失傷害の罪
本日は、第28章過失傷害の罪に規定されている法律の中から
第209条 過失傷害罪
第210条 過失致死罪
第211条 業務上過失傷害罪、業務上過失致死罪
重過失傷害罪、重過失致死罪
について解説します。
この章では、「故意」による犯罪を原則としている刑法では珍しく「過失」を処罰するための法律が規定されています。
まず第209条に規定されている過失傷害罪は、過失によって人に傷害を負わせた場合に成立する犯罪です。
過失とは、行為時の客観的状況下において、結果の発生を予見し、これを回避するために何らかの対処をすべきだったにもかかわらず、そういった対処を怠ること、いわゆる不注意を意味します。
簡単に言うと、きちんと注意して行動していたら、人が怪我をすることはなかったであろう時に成立するのが過失傷害罪です。
過失傷害罪は親告罪ですので、被害者等の刑事告訴がない場合は起訴されることはありません。
そして過失によって人を死亡させた場合に成立するのが、第210条に規定されている過失致死罪です。
過失傷害罪が親告罪であるのに対して、過失致死罪は非親告罪ですので、被害者等の告訴がなくても起訴されることがあります。
そして第211条に規定されているのが、業務上過失傷害罪と業務上過失致死罪(前段)、そして重過失傷害罪と重過失致死罪(後段)です。
まず業務上過失傷害罪と業務上過失致死罪について解説します。
これらの犯罪は、行為者の過失が業務上のものである場合に成立する犯罪です。
ここでいう「業務」とは、本来、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であり、かつ、その行為は他人の生命、身体に危害を加えるおそれのあることを要しますが、収入を得るための行為である必要はありません。
続いて重過失傷害罪と重過失致死罪について解説します。
これらは、重大な過失によって人に怪我をさせたり、人を死亡させたりした場合に成立する犯罪です。
ここでいう「重大な過失」とは、過失が重大なことを意味し決して、結果の重大なることをいうのではありません。
過失傷害の罪の罰則
①過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金又は科料」です。
②過失致死罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。
③業務上過失傷害罪、業務上過失致死罪、重過失傷害罪、重過失致死罪の法定刑は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第29章堕胎の罪」に続く
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