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~刑法を解説~ 第37章 詐欺及び恐喝の罪 ~①~
本日と明日の二日間にわたっては、第37章詐欺及び恐喝の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
詐欺及び恐喝の罪
第37章詐欺及び恐喝の罪には
第246条 詐欺罪
第246条の2 電子計算機使用詐欺罪
第247条 背任罪
第248条 準詐欺罪
第249条 恐喝罪
が規定されています。
まず第246条の詐欺罪は、人を金品を騙し取ることによって成立する犯罪です。
ここ数年は、振り込め詐欺や還付金詐欺など、いわゆる特殊詐欺事件が世間を騒がせており、ニュースなどでもよく報道されていますが、身近なものだと無銭飲食も詐欺事件となることがあります。
詐欺罪が成立するには
①騙す行為(欺罔行為)⇒②相手が騙される(欺罔に陥る)⇒③騙された相手が金品を交付する⇒④交付された金品を受け取る
といった、構成要件が必要とされ、それぞれには因果関係が必要とされています。
これらのうち一つでも欠けると詐欺罪は成立せず、成立するとしても詐欺未遂罪にとどまります。
例えば、AさんはBさんを騙して金を騙し取ろうとして、Bさんに嘘をついてお金を要求したが、Bさんは、Aさんの嘘に気付いた。がしかし、お金に困窮しているAさんを憐れんだBさんは、騙されたふりをして、Aさんにお金をあげた。
こういった事件の場合、少なくとも上記した構成要件の①(AさんがBさんに嘘をついてお金を要求する欺罔行為)は認められますが、②(Bさんが騙されるといった錯誤に陥る)には至っていません。
しかし結果的にAさんはBさんからお金の交付を受けているので、一見すると詐欺罪の既遂のようにも思えますが、少なくともBさんは錯誤に陥っていないので、詐欺の構成要件を欠くことになり、詐欺の未遂罪を構成するにとどまるのです。
また詐欺罪の客体となるのはお金や物といった財物に限られません。
第246条2項には、人を騙して、財産上不法の利益を得たり、人に得させることで成立する詐欺罪が規定されています。(2項詐欺)
そして第246条の2では、電子計算機使用詐欺罪が規定されています。
電子計算機使用詐欺罪は、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報または不正な指令を与えて、財産権の得喪、変更にかかる不実な電磁的記録を作り、または財産権の得喪もしくは変更にかかる虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得る、または他人にこれを得させることによって成立する犯罪です。
電子計算機使用詐欺罪でいう、電子計算機とは、他人のコンピューターのことです。
本日最後に解説するのは、第247条に規定されている背任罪です。
背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図りまたは本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた場合に成立する犯罪です。
背任罪を分かりやすく言うと、会社員が会社を裏切って会社の利益にならない行動を起こすことによって成立する犯罪です。
ちなみに会社の取締役や支配人など、一定の地位にある人が背任罪に当たる行為をした場合は特別背任罪となります。
特別背任罪は、刑法ではなく会社法に定められている犯罪です。
~次回に続く~
~刑法を解説~ 第36章 窃盗及び強盗の罪~②~
~刑法を解説~47回目の本日は、第36章窃盗及び強盗の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
第36章窃盗及び強盗の罪~①~は こちらをクリック
窃盗及び強盗の罪~②~
本日は、第36章窃盗及び強盗の罪に規定されている犯罪の中から、強盗に関する罪について解説します。
第236条 強盗罪
第237条 強盗予備罪
第238条 事後強盗罪
第239条 昏酔強盗罪
第240条 前段 強盗致傷罪 強盗傷人罪
後段 強盗致死罪 強盗殺人罪
第241条 前段 強盗強制性交等罪
後段 強盗強制性交等致死罪
本日は、数多くの犯罪を規定している刑法の中でも、凶悪事件として分類されている強盗に関する犯罪について解説します。
まず第236条に規定されているのが、暴行又は脅迫を用いて、他人の占有する財物を強取することによって成立する強盗罪です。
また他人の占有する財物を強取するだけでなく、財産上不法の利益を得たり、他人に得させたりした場合も強盗罪となります。(2項強盗)
タクシードライバーに暴行する等して、タクシー料金を踏み倒した場合が2項強盗に当たります。
強盗罪は、暴行や脅迫を用いて他人の財産を得るという点では、恐喝罪とよく似てますが、暴行や脅迫の程度が恐喝罪とは異なります。
また強盗は、予備行為も処罰の対象となります。(第237条)
強盗の予備行為とは、強盗するための準備行為を意味し、どういった行為が予備行為に当たるかは非常に幅が広く、強盗に押し入る店舗を下見するだけでも強盗予備罪になる可能性があります。
第238条では事後強盗罪が規定されています。
事後強盗罪は、窃盗犯人が、窃取した財物を取り返されるのを防いだり、逮捕を免れたり、罪証を隠滅するために、暴行や脅迫をした時に成立する犯罪です。
例えば、万引き犯人が、犯行を目撃した店員に捕まりそうになった際に、捕まるのを免れるために店員に暴行した場合などに成立する犯罪です。
当然、その際に相手に怪我をさせると次に解説する強盗致傷罪となります。
続いて第239条に規定されている昏酔強盗罪について解説します。
昏酔強盗は、昏酔させた人から財物を盗ることによって成立する犯罪です。
昏酔とは、意識喪失又は意識や運動機能に障害を生じさせることで、そういった状態にさせる方法に制限はありませんが、麻酔等の薬物を用いるのが一般的でしょう。
そして強盗の際に相手に怪我をさせると第240条の前段に規定されている強盗致傷(傷人)罪となります。
強盗致傷罪と、強盗傷人罪の違いは、相手に怪我を負わせる意思があったかどうかです。
犯行当初から、相手に怪我をさせる意思はなく強盗行為に及んだが、結果的に相手に怪我をさせてしまった場合は、強盗致傷罪となり、そもそも相手に怪我をさせる意思をもって強盗行為に及んだ場合は強盗傷人罪となります。
同じく第240条の後段には、強盗致死(殺人)罪が規定されています。
ここでも相手に対する殺意の有無で罪名が区別されています。
強盗致傷罪と強盗傷人罪、強盗致死罪と強盗殺人罪は同じ条文に規定されていますが、どういった刑事罰が科せられるかは、当然、相手に怪我を負わせたり、殺してしまう意思があったかどうかが大きく影響します。
窃盗及び強盗の罪~②~の罰則
①強盗罪、事後強盗罪、昏酔強盗の法定刑は「5年以上の有期懲役」です。
②強盗予備罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。
③強盗致傷罪、強盗傷人罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」です。
④強盗致死罪、強盗殺人罪の法定刑は「死刑又は無期懲役」です。
⑤強盗強制性交等罪の法定刑は「無期又は7年以上の懲役」です。
⑥強盗強制性交等致死罪の法定刑は「死刑又は無期懲役」です。
「~刑法を解説~第37章詐欺及び恐喝の罪~①~」に続く
~刑法を解説~ 第36章 窃盗及び強盗の罪~①~
~刑法を解説~46回目の本日は、第36章窃盗及び強盗の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
窃盗及び強盗の罪~①~
本日は、第36章窃盗及び強盗の罪に規定されている犯罪の中から、窃盗罪と不動産侵奪罪について解説します。
第235条 窃盗罪
第235条の2 不動産侵奪罪
について解説します。
まず第235条に規定されているのが窃盗罪です。
第235条の条文を引用すると、窃盗罪は、他人の財物を窃取することによって成立する犯罪です。
簡単に言うと、窃盗罪とは、人の物を盗むことで、皆さんが一番身近に感じる犯罪の一つではないでしょうか。
スーパー等のお店の商品を盗む万引きや、自転車を盗む自転車盗、人ごみの中で人を財布を盗むスリ、そして自転車のカゴに入っているカバンを盗む引ったくり、留守の家に忍び込んで盗む空き巣など、これらは全て窃盗罪です。
そして同じ窃盗罪でも、有罪となった場合に科せられる刑罰は様々です。
例えば万引きのような比較的被害額が少額な窃盗事件であれば、そもそも刑事罰が科せられない不起訴という結果で手続きが終結することも珍しくありませんが、被害額が高額となりがちな侵入窃盗事件や、自動車盗など、また犯情が悪質な引ったくりやスリなどは、初犯であっても厳しい刑事罰が科せられる可能性があるのが特徴です。
ちなみに窃盗罪の客体となるのは、他人の占有する他人の財物です。
お金や物などが代表的ですが、電気など無体物であっても窃盗罪の客体となり、この事は刑法第245条に明記されています。
※刑法第245条
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
そして第235条のに規定されているのが不動産侵奪罪です。
不動産侵奪罪は、他人の不動産を侵奪することによって成立する犯罪ですが、あまり適用されることのない罪名なために、聞いた事がない方も多いのではないでしょうか。
不動産侵奪罪でいうところの「侵奪」とは、不動産に対する他人の占有を排除し、これを自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
窃盗及び強盗の罪~①~の罰則
①窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
②不動産侵奪罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第36章窃盗及び強盗の罪~②~」に続く
~刑法を解説~ 第35章 信用及び業務に対する罪
~刑法を解説~45回目の本日は、第35章信用及び業務に対する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
信用及び業務に対する罪
本日は、第35章信用及び業務に対する罪に規定されている
第233条 信用毀損罪・偽計業務妨害罪
第234条 威力業務妨害罪
第234条の2 電子計算機損壊等業務妨害罪
について解説します。
第233条には、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いて人の信用を毀損することによって成立する信用毀損罪と、虚偽の風説を流布したり、偽計を用いて人の業務を妨害することによって成立する偽計業務妨害罪が規定されています。
ここでいう「虚偽の風説を流布」とは、真実と異なった内容の事項を不特定又は多数の人に伝播させることを意味します。
これは分かりやすく言うと「嘘の情報を世間に流すこと」です。
続いて「偽計を用いる」とは、人を騙したり、人の錯誤、不知を利用したり、人を誘惑したりする他、計略や策略を講じるなど、業務妨害罪では、威力以外の不正な手段を用いることを意味するとされています。
また信用毀損罪の「信用」とは、経済的な側面における人の社会的な評価、つまり経済的な信用を指しますが、サービスの品質や、商品そのものの信用も含まれるとされています。
また業務妨害罪の成立に当たっては、実際に業務遂行が妨害されることまでは必要とされておらず、妨害の結果が発生する可能性があれば業務妨害罪が成立するとされています。
そして、偽計ではなく威力を用いて人の業務を妨害することによって成立するのが、第234条の威力業務妨害罪です。
ここでいう「威力」とは、暴行や脅迫は当然のこと、それらに至らないまでも、人の意思を制圧するような勢力を意味します。
そしてこの章の最後に解説するのが第234条の2に規定されている電子計算機損壊等業務妨害罪です。
この法律は、電子計算機、いわゆるコンピューターに対して何らかの加害を加えることによって、人の業務を妨害することによって成立します。
信用及び業務に対する罪の罰則
①信用毀損罪・偽計業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
②威力業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
③電子計算機損壊等業務妨害罪の法定刑は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第36章窃盗及び強盗の罪」に続く
~刑法を解説~ 第34章 名誉に対する罪
~刑法を解説~44回目の本日は、第34章名誉に対する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
名誉に対する罪
本日は、第34章名誉に対する罪に規定されている
第230条 1項 名誉毀損罪
2項 死者名誉毀損罪
第231条 侮辱罪
について解説します。
この章では、名誉に対する罪である(死者)名誉毀損罪と、侮辱罪について規定されています。
インターネットが普及し、SNSの利用者の増加に伴って、ネット上において本章に規定されている犯罪が社会問題となり、度々、テレビや新聞等で特集が組まれるほど話題になっています。
まず第230条の名誉毀損罪について解説します。
名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。
ここで摘示する事実は、真実であろうと虚偽であろうと、名誉毀損罪の成立には影響しません。
また2項の死者名誉毀損罪は、死者の名誉を毀損することによって成立する犯罪ですが、死者名誉毀損罪は、摘示した事実が虚偽の場合にしか処罰の対象となりません。
ここでいう「公然」とは、不特定又は多数人が認識できる状態を意味し、また摘示される事実は、真実、虚偽にはとらわれませんが、少なくとも人の社会的評価を害する内容でなければならず、ある程度具体的な内容を含まなければならないとされています。
他方、第231条に規定されている侮辱罪は、公然と侮辱することによって成立する犯罪で、事実を摘示することまで必要とされていません。
ネット上における誹謗中傷事件
最近ではインターネットの匿名性を利用した誹謗中傷が、侮辱罪として刑事事件化されることが珍しくありません。
インターネットでは、誰もが目にすることのできる掲示板等に、誰もが簡単に投稿できるので、投稿した内容によっては人を傷つけることもあり、大きなネットトラブルに発展する危険性もひめています。
ここ数年の間に、そんな事件が多発しており、侮辱罪が見直されました。
そして今年の7月7日から侮辱罪の罰則が強化されています。
名誉に対する罪の罰則
①(死者)名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」です。
②侮辱罪の法定刑は「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
「~刑法を解説~第35章信用及び業務に対する罪」に続く
~刑法を解説~ 第33章 略取、誘拐及び人身売買の罪~②~
~刑法を解説~43回目の本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪~②~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
略取、誘拐及び人身売買の罪~①~については⇒⇒こちらをクリック
略取、誘拐及び人身売買の罪~②~
本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪に規定されている中から
第226条の2 1項 人身買受け罪
2項 未成年者買受け罪
3項 営利人身買受け罪
4項 人身受渡し罪
5項 所在国外移送人身売買罪
第226条の3 被略取者等所在国外移送罪
第227条 1項 営利拐取等幇助目的被拐取者引渡し罪
2項 身代金拐取者幇助目的被拐取者引渡し罪
3項 営利被拐取者引渡し罪
4項 身代金被拐取者収受罪、収受者身代金取得罪
について解説します。
まず第226条の2では人身売買について規定されています。
第1項では、人を買い受けることによって成立する「人身買受け罪」が、第2項では、未成年者を買い受けることによって成立する「未成年者買受け罪」が規定されいます。
そして第3項では、営利、わいせつ、結婚、海外目的で人を買受けることによって成立する営利等人身買受け罪が規定されており、第4項では人を売り渡すことによって成立する人身受渡し罪が、第5項では、所在国外に移送する目的で人身売買することによって成立する所在国外移送人身売買罪が規定されています。
第226条の3では、略取・誘拐されたり、人身売買された人を所在国外に移送することによって成立する被略取者等所在国外移送罪が規定されています。
第227条1項では、略取や誘拐、人身売買等の犯人を幇助(助ける)する目的で、こういった事件の被害者を、収受、輸送したり、蔵匿、隠避した場合に成立する営利拐取等幇助目的被拐取者引渡し罪が規定されています。
第227条2項は、身代金目的略取罪・誘拐罪の犯人を幇助(助ける)する目的で、こういった事件の被害者を、収受、輸送したり、蔵匿、隠避した場合に成立する身代金拐取者幇助目的被拐取者引渡し罪を規定しており、第227条3項は、営利やわいせつ、加害目的で、略取、誘拐、人身売買された被害者を引き渡したり、収受、輸送、蔵匿することによって成立する営利被拐取者引渡し罪が規定されています。
そして第227条の最後、4項に規定されているのが、身代金目的略取・誘拐の目的で略取・誘拐された被害者を収受した場合に成立する身代金被拐取者収受罪です。
また4項には、身代金目的略取・誘拐の目的で略取・誘拐された被害者を収受した者が、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、財物を交付させたり、財物を要求した場合に成立する収受者身代金取得罪も規定されています。
略取、誘拐及び人身売買の罪の罰則~②~
①人身買受け罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
②未成年者買受け罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
③営利人身買受け罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
④人身受渡し罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
⑤所在国外移送人身売買罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
⑥被略取者等所在国外移送罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
⑦営利拐取等幇助目的被拐取者引渡し罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
⑧身代金拐取者幇助目的被拐取者引渡し罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
⑨営利被拐取者引渡し罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑩身代金被拐取者収受罪、収受者身代金取得罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
「~刑法を解説~第34章名誉に対する罪」に続く
~刑法を解説~ 第33章 略取、誘拐及び人身売買の罪~①~
~刑法を解説~42回目の本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
略取、誘拐及び人身売買の罪~①~
本日は、第33章略取、誘拐及び人身売買の罪に規定されている中から
第224条 未成年者略取罪・誘拐罪
第225条 営利目的等略取罪・誘拐罪
第225条の2 1項 身代金目的略取罪・誘拐罪
2項 拐取者身代金取得罪・拐取者身代金要求罪
第226条 所在外国移送略取罪・誘拐罪
について解説します。
この章では、略取罪と誘拐罪について規定されいます。
略取罪と誘拐罪は、人をその本来の生活環境から離脱させて自己又は第三者の実力支配下に移すことによって成立する犯罪ですが、その手段が異なります。
誘拐罪は、その手段が欺罔や誘惑に限られており、それ以外の手段が用いられた場合は略取罪となります。
第224条では、未成年を略取、誘拐することで成立する、未成年者略取・誘拐罪が定めらています。
未成年者略取罪・誘拐の客体となるのは民法第4条に規定されている「未成年」ですので、18歳未満の者を意味します。
また未成年者本人の承諾があったとしても、親など保護監督権のある者の許可なく、未成年を本来の生活環境から離脱させて自己又は第三者の実力支配下に移すと、未成年者略取罪・誘拐が成立するので注意が必要です。
そして第225条の営利目的等略取罪・誘拐罪では、営利やわいせつ、結婚や生命や身体に対して危害を加えることを目的にした略取、誘拐行為を禁止しています。
第225条の2では、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、その財物を交付させる目的で、人を略取・誘拐することによって成立する、身代金目的略取罪・誘拐罪が規定されています。
最近はあまり発生することがなくなりましたが、戦後間もない昭和30年代には、身代金目的に略取・誘拐する事件が頻発しており、前条の営利目的等略取罪と区別し、よりも厳しく処罰するためにできた法律だと言われています。
また身代金目的略取罪・誘拐罪は、予備行為も処罰の対象となります。(第228条の3)
そして第225条の2第2項で規定されている、拐取者身代金取得罪・拐取者身代金要求罪は、略取・誘拐した犯人が、近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じて、財物を交付させたり、財物を要求した場合に成立します。
本日最後となる第226条の所在外国移送略取罪・誘拐罪は、所在国外に移送する目的で、人を略取・誘拐することによって成立する犯罪です。
略取、誘拐及び人身売買の罪の罰則~①~
①未成年者略取罪・誘拐罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
②営利目的等略取罪・誘拐罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
③身代金目的略取罪・誘拐罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
④拐取者身代金取得罪・拐取者身代金要求罪の法定刑は「無期又は3年以上の懲役」です。
⑤所在外国移送略取罪・誘拐罪の法定刑は「2年以上の有期懲役」です。
「~刑法を解説~第33章略取、誘拐及び人身売買の罪~②~」に続く
~刑法を解説~ 第32章 脅迫の罪
~刑法を解説~41回目の本日は、第32章脅迫の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
脅迫の罪
本日は、第32章脅迫の罪に規定されている
第222条 脅迫罪
第223条 強要罪
について解説します。
この章では、脅迫罪と強要罪が規定されています。
脅迫罪とは、生命、身体、自由や名誉、財産に危害を加える旨を告げて、人を脅迫することで成立する犯罪で、告知相手の親族の生命、身体、自由や名誉、財産に危害を加える旨を告げて脅迫した場合も成立します。
脅迫罪は個人の意思の自由を保護法益をしており、脅迫行為そのものを規制するための法律なので、脅迫によって相手が畏怖したかどうかは、脅迫罪の成立に影響を与えません。
ただ脅迫の内容は、相手を畏怖させる程度の内容が必要とされており、不快感や困惑、気味悪さ等を感じるにとどまる内容の場合は、脅迫罪とならないこともあります。
ちなみに相手への告知方法は、言葉によるもの、手紙等による文書であるものでも脅迫罪は成立し、最近ではSNSや、ネット上の掲示板への投稿が脅迫罪となる事件が増加傾向にあります。
続いて223条の強要罪について解説します。
強要罪とは、前条の脅迫罪に該当するような脅迫行為や、暴行を用いて、人に義務のないことをさせたり、人が権利を行使することを妨害することによって成立する犯罪で、未遂についても処罰の対象とされています。
「土下座を強要する」といった内容の強要事件をよく耳にしますが、相手に土下座をさせただけでは、単に義務なきことをその人の意思に反してやらせているだけで、必ず強要罪が成立するとは限りません。
ただ土下座をさせる際に、相手や相手の親族に対する脅迫行為や、暴行行為があれば間違いなく強要罪が成立するでしょう。
脅迫の罪の罰則
①脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
②強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」です。
「~刑法を解説~第33章略取、誘拐及び人身売買の罪」に続く
~刑法を解説~ 第31章 逮捕及び監禁の罪
~刑法を解説~40回目の本日は、第31章逮捕及び監禁の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
逮捕及び監禁の罪
本日は、第31章逮捕及び監禁の罪に規定されている法律の中から
第220条 逮捕罪・監禁罪
第221条 逮捕致死(傷)罪・監禁致死(傷)罪
について解説します。
この章では、逮捕と監禁に関する法律が規定されています。
逮捕罪も監禁罪も、個人の行動の自由を保護法益としている法律です。
それではまず第220条に規定されているのが、逮捕罪と監禁罪について解説します。
不法に人を逮捕した場合に成立するのが逮捕罪で、不法に監禁した場合に成立するのが監禁罪です。
逮捕とは、人の身体に対して直接的な拘束を加えて、その行動の自由を奪うことで、監禁とは、人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にして、その行動の自由を奪うことを意味します。
分かりやすく説明すると、人の身体をロープで縛るなど、有形力を用いる方法によって自由を奪うのが「逮捕」に当たり、鍵を閉めて部屋に閉じ込めたりして、行動の自由を場所的に制限するのが「監禁」に当たると言えます。
ちなみに監禁罪の成立は、必ずしも、その場所から脱出することが不可能であることまでは必要とされておらず、著しく困難である程度で足りるとされています。
例えば、バイクの後部に乗せた人がバイクから降車したがっているのに、そのままバイクを停止させずに走行を続けていれば、監禁罪が成立する可能性があるのです。
逮捕、監禁行為によって人を死傷させると、第221条の逮捕致死(傷)罪や監禁致死(傷)罪が成立します。
逮捕・監禁致死(傷)罪が成立するには、逮捕、監禁行為と人の死傷との間に因果関係が必要です。
因果関係さえ認められれば、人を死傷することの故意まで必要とされないので、例えば、建物の2階の部屋に閉じ込めていた被害者が、逃走するために2階の窓から飛び降りて傷害を負った場合などは、監禁致傷罪が成立することになります。
逮捕及び監禁の罪の罰則
①逮捕罪・監禁罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
②逮捕致死(傷)罪・監禁致死(傷)罪の法定刑は、傷害の罪と比較して、重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第32章脅迫の罪」に続く
~刑法を解説~ 第30章 遺棄の罪
~刑法を解説~39回目の本日は、第30章遺棄の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
遺棄の罪
本日は、第30章遺棄の罪に規定されている法律の中から
第217条 遺棄罪
第218条 保護責任者遺棄罪
第219条 遺棄致死傷罪、保護責任者遺棄致死傷罪
について解説します。
この章では、「遺棄」に関する犯罪が規定されています。
遺棄とは、保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことです。
まず第217条に規定されている遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを遺棄した場合に成立する犯罪です。
この法律の主体には制限がありませんが、客体となるのは、条文に列挙されているとおり・老年・幼年・身体障害又は疾病で扶助を必要とする者に限られます。
遺棄とは、前で解説したように保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことですが、遺棄罪でいうところの遺棄行為は、被遺棄者を場所的に移転させることが必要とされます。
続いて第218条の保護責任者遺棄罪について解説します。
保護責任者遺棄罪の客体となるのは、遺棄罪と同様に老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちですが、主体が、こういった人たちを保護する責任のある人たちとなります。
つまり保護責任者遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを保護する責任のある者が遺棄した場合に成立する犯罪で、その行為は、生存に必要な保護をしないことです。
遺棄罪のように、被遺棄者を場所的に移転させるだけでなく、場所的な移転をしなくてもその場所で生存に必要な措置をせずに放置すれば保護責任者遺棄罪が成立する可能性があるのです。
そして遺棄罪や、保護責任者遺棄罪の行為によって、被遺棄者を死傷させた場合に成立するのが、第219条の遺棄致死傷罪や、保護責任者遺棄致死傷罪といった犯罪です。
遺棄の罪の罰則
①遺棄罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②保護責任者遺棄罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
③遺棄致死傷罪や保護責任者遺棄致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第31章逮捕及び監禁の罪」に続く
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