複数の犠牲者が出た大阪北新地のビル火災について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部の弁護士にインタビューしました。
昨日、大阪北新地で発生したビル火災、発生から一日経った本日現在、犠牲者は少なくとも24人にもおよぶと報道されています。
警察によりますと、現場に居合わせた被害者の証言から、重体となって病院で治療を受けている男が放火した可能性が高いとして、現住建造物等放火と殺人の容疑で、大阪府天満警察署に捜査本部を設置したとのことです。
本日は、この事件について緊急で弁護士にインタビューしました。
Q.先生、大阪でとんでもない事件が起こってしまいましたが、事件のことをご存知ですか?
A.もちろんです。火災のあったビルは、私が勤務している事務所から数百メートルしか離れていないので本当に驚いています。
Q.弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部の近くなんですね。現場はどの様な所なんですか?
A.大阪屈指の歓楽街と言われている北新地の一角で、大阪市内を南北にはしっている四つ橋線筋という幹線道路沿いです。
地下には地下鉄四つ橋線の西梅田駅や、JRの北新地駅があるので、昼夜を問わず非常に通行量の多い場所でもあります。
Q.警察が、放火と殺人の容疑で捜査を進めているということですが、どう思われますか?
A.大阪府警の本部には、殺人事件等の重大事件を専門に扱う捜査一課という部署があり、その捜査一課には、こういった放火事件を専門に扱っている部署があります。
おそらくこういった部署が中心になって、これから捜査が進められていくと思いますが、火災の状況や、警察の発表からして放火事件であることは間違いないでしょう。
Q.容疑者の男は重体で入院しているという報道がありますが、今後、どのように捜査が進むのですか?
A.何よりも容疑者の治療が優先されるでしょうから、すぐに容疑者が逮捕されることはないと思います。
容疑者が入院している間に警察は、亡くなった方の死因を特定したり、火災現場を検証して火災の原因や、事件発生時の状況を特定する捜査を進めることになるでしょう。
また捜査が進むにつれて、容疑者とされている男の、火災発生前の行動がハッキリするでしょうから、その段階である程度の真相が明らかとなるでしょう。
Q.仮に容疑者とされている男が警察に逮捕されるとしたらどういった法律が適用されるのですか?
A.逮捕罪名は、現住建造物等放火罪、そして殺人罪、殺人未遂罪となるでしょう。
どれも法定刑に死刑が規定されている犯罪なので、起訴されると裁判員裁判で裁かれることになりますし、犠牲者の数からすれば、有罪と認定されると死刑になる可能性が非常に高いでしょう。
Q.先生がこういった事件で起訴された被告人の弁護人になったとしたら、どういった弁護活動を行いますか?
A.弁護活動というのは、被告人の意思に従って行わなければならず、被告人の意思に背いて行うことはできませんので、被告人の言い分が分からない状態では、その質問に対しては答えることはできません。
ただ一般論として、少なくとも犯行時の被告人の精神状態については徹底的に調べるでしょう。
Q.それはどうしてですか?
A.刑事責任能力という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、日本の法律では、被告人の精神状態が、犯行時に心神喪失や、心神耗弱であった場合は、罪に問われなかったり減軽されたりする可能性があるからです。
Q.最後に、過去に起こったこういった事件の裁判結果を教えてください。
A.大阪で起こった事件に限定すると、覚えている方もいるかもしれませんが、約13年前に深夜の個室ビデオ店が放火される事件がありました。この事件では、16人の犠牲者が出ており、被告人の起訴罪名は、殺人と殺人未遂そして、現住建造物等放火罪でした。
この被告人に対しては、すでに死刑判決が確定しています。
ただ、この事件の被告人は「無罪」を主張しており、現在も弁護団が再審請求をしています。