~刑法を解説~39回目の本日は、第30章遺棄の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
遺棄の罪
本日は、第30章遺棄の罪に規定されている法律の中から
第217条 遺棄罪
第218条 保護責任者遺棄罪
第219条 遺棄致死傷罪、保護責任者遺棄致死傷罪
について解説します。
この章では、「遺棄」に関する犯罪が規定されています。
遺棄とは、保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことです。
まず第217条に規定されている遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを遺棄した場合に成立する犯罪です。
この法律の主体には制限がありませんが、客体となるのは、条文に列挙されているとおり・老年・幼年・身体障害又は疾病で扶助を必要とする者に限られます。
遺棄とは、前で解説したように保護を必要とする者を保護のない状態にさらすことですが、遺棄罪でいうところの遺棄行為は、被遺棄者を場所的に移転させることが必要とされます。
続いて第218条の保護責任者遺棄罪について解説します。
保護責任者遺棄罪の客体となるのは、遺棄罪と同様に老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちですが、主体が、こういった人たちを保護する責任のある人たちとなります。
つまり保護責任者遺棄罪は、老年や幼年、身体障害や病気で扶助を必要とする人たちを保護する責任のある者が遺棄した場合に成立する犯罪で、その行為は、生存に必要な保護をしないことです。
遺棄罪のように、被遺棄者を場所的に移転させるだけでなく、場所的な移転をしなくてもその場所で生存に必要な措置をせずに放置すれば保護責任者遺棄罪が成立する可能性があるのです。
そして遺棄罪や、保護責任者遺棄罪の行為によって、被遺棄者を死傷させた場合に成立するのが、第219条の遺棄致死傷罪や、保護責任者遺棄致死傷罪といった犯罪です。
遺棄の罪の罰則
①遺棄罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②保護責任者遺棄罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
③遺棄致死傷罪や保護責任者遺棄致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
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「~刑法を解説~第31章逮捕及び監禁の罪」に続く