~刑法を解説~37回目の本日は、第28章過失傷害の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
過失傷害の罪
本日は、第28章過失傷害の罪に規定されている法律の中から
第209条 過失傷害罪
第210条 過失致死罪
第211条 業務上過失傷害罪、業務上過失致死罪
重過失傷害罪、重過失致死罪
について解説します。
この章では、「故意」による犯罪を原則としている刑法では珍しく「過失」を処罰するための法律が規定されています。
まず第209条に規定されている過失傷害罪は、過失によって人に傷害を負わせた場合に成立する犯罪です。
過失とは、行為時の客観的状況下において、結果の発生を予見し、これを回避するために何らかの対処をすべきだったにもかかわらず、そういった対処を怠ること、いわゆる不注意を意味します。
簡単に言うと、きちんと注意して行動していたら、人が怪我をすることはなかったであろう時に成立するのが過失傷害罪です。
過失傷害罪は親告罪ですので、被害者等の刑事告訴がない場合は起訴されることはありません。
そして過失によって人を死亡させた場合に成立するのが、第210条に規定されている過失致死罪です。
過失傷害罪が親告罪であるのに対して、過失致死罪は非親告罪ですので、被害者等の告訴がなくても起訴されることがあります。
そして第211条に規定されているのが、業務上過失傷害罪と業務上過失致死罪(前段)、そして重過失傷害罪と重過失致死罪(後段)です。
まず業務上過失傷害罪と業務上過失致死罪について解説します。
これらの犯罪は、行為者の過失が業務上のものである場合に成立する犯罪です。
ここでいう「業務」とは、本来、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であり、かつ、その行為は他人の生命、身体に危害を加えるおそれのあることを要しますが、収入を得るための行為である必要はありません。
続いて重過失傷害罪と重過失致死罪について解説します。
これらは、重大な過失によって人に怪我をさせたり、人を死亡させたりした場合に成立する犯罪です。
ここでいう「重大な過失」とは、過失が重大なことを意味し決して、結果の重大なることをいうのではありません。
過失傷害の罪の罰則
①過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金又は科料」です。
②過失致死罪の法定刑は「50万円以下の罰金」です。
③業務上過失傷害罪、業務上過失致死罪、重過失傷害罪、重過失致死罪の法定刑は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第29章堕胎の罪」に続く