~刑法を解説~22回目の本日は、第19章の2不正指令電磁的記録に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
不正指令電磁的記録に関する罪
第19章には不正指令電磁的記録に関する罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。
第168条の2 不正指令電磁的記録作成罪・不正指令電磁的記録供用罪
第168条の3 不正指令電磁的記録取得罪
この章で規定されている犯罪は、平成23年の刑法改正によって新設された刑法の中では比較的新しい法律です。
世の中にパソコンやインターネットが急速に普及し、コンピューターウィルスによって電子計算機で使用者の意図に反する情報処理がなされることを防止することを目的に、この章ではコンピューターウィルスの作成や提供、使用等の行為を規制しています。
この章で規定されている犯罪の保護法益は、コンピューターウイルスの被害にあったコンピューターの使用者だけでなく、社会的法益である世の中のコンピューターの安全性に対する信用とされています。
まず第168条の2では、正当な理由なく、他人のコンピューターに対して、使用者の意図に反する情報処理を行わせることを目的で、そういった情報処理をさせるソフト(コンピューターウィルス)を作成したり、そういった類のソフトを提供することを禁止しています。
他人のコンピューターに対して、使用者の意図に反する情報処理を行わせるソフト(不正指令電磁的記録)とは、俗にいう「コンピューターウィルス」のことです。
分かりやすく言うと、コンピューターウィルスを作成したり、提供したりするのを規制しているのが、第168条の2の「不正指令電磁的記録作成罪」「不正指令電磁的記録供用罪」なのです。
当然ですが、コンピューターウィルスを他人のコンピューターに対して実行する行為も処罰の対象となります。
また不正指令電磁的記録作成罪や不正指令電磁的記録供用罪は未遂の場合も処罰の対象となります。(第168条の2第3項)
そして第168条の3の不正指令電磁的記録取得等罪では、コンピューターウィルスを取得したり保管したりすることを禁止しています。
不正指令電磁的記録に関する罪の罰則
①不正指令電磁的記録作成罪・不正指令電磁的記録供用罪の法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
②不正指令電磁的記録取得等罪の法定刑は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
「~刑法を解説~第20章偽証の罪」に続く