~刑法を解説~17回目の本日は、第17章文書偽造の罪~①~について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
文書偽造の罪
第17章には文書偽造の罪について規定されています。
規定されている内容は以下のとおりです。
第154条 詔書偽造等の罪
第155条 公文書偽造等の罪
第156条 虚偽公文書作成等の罪
第157条 公正証書原本不実記載等の罪
第158条 偽造公文書行使等の罪
第159条から第161条の2は~次回に続く~
です。
この章では、主に文書の偽造について規定されており、対象とされている文書は公文書と私文書に分類され、またその中で、有印と無印で分類されています。
また偽造には、名義人以外の者が名義を冒用して文書を偽造する有形偽造と、名義人が虚偽の内容の文書を作成する無形偽造に分類されています。
それでは各条文を解説していきましょう。
まず第154条では、御璽・国璽・御名を使用して、詔書その他の文書を偽造し、または偽造した御璽・国璽・御名を使用して、詔書その他の文書を偽造することによって成立する詔書偽造罪等について規定されています。
第155条では、有印公文書偽造(変造)罪が規定されており、その内容は、行使の目的で
①公務所・公務員の印章・署名を使用して、公務所・公務員の作成すべき文書・図画を偽造・変造
②偽造した公務所・公務員の印章・署名を使用して、公務所・公務員の作成すべき文書・図画を偽造・変造
する犯罪です。
そして第156条では、虚偽公文書作成罪について規定されています。
ここでは、行使の目的をもって、公務員が有印・無印の公文書を作成することを規制されており、第155条が有形偽造であるのに対して、第156条は無形偽造になります。
第157条では、公務員に対して虚偽の申し立てをして、登記簿や戸籍簿等の公正証書の原本に不実の記載をさせる公正証書原本不実記載罪(第1項)と、免状・鑑札・旅券に不実の記載をさせる免状等不実記載罪(第2項)が規定されています。
第158条の偽造公文書行使等罪は、第154条~157条に規定された偽造・変造・虚偽作成・不実記載の文書・図画を行使したり、公正証書原本不実記載罪のうちの不実の記録のされた電磁的記録を公正証書の原本としてのように使用した場合に成立する犯罪です。
文書偽造の罪~①~の罰則
①詔書偽造罪・詔書変造罪の法定刑は「無期懲役または3年以上の懲役」です。
②有印公文書偽造・変造罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
③無印公文書偽造・変造罪の法定刑は「3年以下の懲役又は20万円以下の罰金」です。
④(有印)虚偽公文書作成罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
⑤(無印)虚偽公文書作成罪の法定刑は「3年以下の懲役又は20万円以下の罰金」です。
⑥公正証書原本不実記載罪の法定刑は「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
⑦免状等不実記載罪の法定刑は「1年以下の懲役又は20万円以下の罰金」です。
⑧偽造公文書行使等罪の法定刑は、行使した偽造文書等の法定刑によって処断されます。
「~刑法を解説~第17章文書偽造の罪~②~」に続く