~刑法を解説~ 第10章 出水及び水利に関するの罪

~刑法を解説~10回目の本日は、第10章出水及び水利に関するの罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

出水及び水利に関するの罪

第10章には出水及び水利に関するの罪について規定されています。
規定されている内容は

第119条 現住建造物等浸害罪
第120条 非現住建造物等浸害罪
第121条 水防妨害罪
第122条 過失建造物等浸害罪
第123条 水利妨害及び出水危険罪

まず第119条の現住建造物等浸害罪についてですが、この法律は、出水によって現住建造物等を浸害することで成立する犯罪です。
出水とは、制限されている水の自然力を解放させて氾濫させることです。
つまりこの法律を分かりやすく言うと、意図的に水害を起こして、現住建造物等を流失させたり損壊させる他、建造物の効用を減損させることで成立する犯罪です。
また、ここでいう現住建造物等については、以前解説した、現住建造物等放火罪と同じです。
そして客体が非現住建造物等になると、第120条の非現住建造物等浸害罪が成立します。
非現住建造物等浸害罪の成立には、出水によって公共の危険が生じなければ犯罪は成立しません。
続いて第121条の水防妨害罪について解説します。
水防妨害罪は、感覚的には消火妨害罪とよく似ており、水害の際に、水害防止の道具を隠匿したり、損壊する等して、水害の被害拡大措置を妨害することで成立する犯罪です。
第122条の過失建造物等浸害罪ですが、この法律は、不注意(過失)によって出水させてしまって、建造物等を流失させたり損壊させる他、建造物の効用を減損させることで成立する犯罪で、その成立には公共の危険が生じていることが必要となります。
第123条の水利妨害及び出水危険罪ですが、堤防や水門を破壊して水利を妨害したり、出水させた場合に成立する犯罪です。
あまり聞きなれない罪名ですが、今年、福岡県では、水利妨害罪を適用された事件が発生しています。⇒こちらをクリック

出水及び水利に関するの罪の罰則

現住建造物等浸害罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは3年以上の懲役」です。
非現住建造物等浸害罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
水防妨害罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
過失建造物等浸害罪「20万円以下の罰金」です。
水利妨害及び出水危険罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金」です。

「~刑法を解説~第11章往来を妨害する罪」に続く

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