~刑法を解説~38回目の本日は、第29章堕胎の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
堕胎の罪
本日は、第29章堕胎の罪に規定されている法律の中から
第212条 堕胎罪
第213条 同意堕胎罪、同意堕胎致死傷罪
第214条 業務上堕胎罪、業務上堕胎致死傷罪
第215条 不同意堕胎罪
第216条 不同意堕胎致死傷罪
について解説します。
この章では、「堕胎」に関する犯罪が規定されています。
この章で規定されている法律は、胎児の生命、身体を保護するとともに、妊娠中の女性の生命、身体を保護しているものもあります。
まず各法律を解説する前に、この章でメインとなる「堕胎」について簡単に説明します。
刑法でいうところの「堕胎」とは、自然分娩に先だって人為的に胎児を母体から分離、排出させることで、その手段、方法は問われません。
それではまず、第212条の堕胎罪について解説します。
堕胎罪は、妊娠中の女性が、薬物を使用するなどして堕胎した場合に成立する犯罪です。
妊娠中の女性自らが堕胎行為に及んだ場合は当然ですが、第三者に堕胎を依頼して堕胎させた場合も女性に対しては堕胎罪が成立し、実際に堕胎した者には、同意堕胎罪や業務上堕胎罪が成立します。
第213条には同意堕胎罪が規定されています。
この法律は、妊娠中の女性から嘱託を受けたり、承諾を得て堕胎させることで成立する犯罪で、堕胎行為によって女性に死傷を負わせた場合は、同意堕胎致死傷罪が成立します。
そして、堕胎したのが、医師や助産師、薬剤師や医薬品販売業者の場合は、第214条の業務上堕胎罪等となります。
最後に解説する第215条に規定されている不同意堕胎罪は、これまでの規定と異なり妊娠している女性の嘱託や承諾なく堕胎することで成立する犯罪です。
ちなみに、不同意堕胎罪等については未遂であっても刑事罰の対象となります。
また不同意の堕胎によって、女性が死傷した場合は第216条の不同意堕胎致死傷罪が成立します。
堕胎の罪の罰則
①堕胎罪の法定刑は「1年以下の懲役」です。
②同意堕胎罪の法定刑は「2年以下の懲役」です。
③同意堕胎致死傷罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
④業務上堕胎罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」です。
⑤業務上堕胎致死傷罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑥不同意堕胎罪の法定刑は「6月以上7年以下の懲役」です。
⑦不同意堕胎致死傷罪の法定刑は傷害の罪と比較して重い刑によって処断されます。
傷害の罪~①~については こちらをクリック
傷害の罪~②~については こちらをクリック
「~刑法を解説~第30章遺棄の罪」に続く