わいせつ画像・児童ポルノ提供等

具体例

ケース

大阪府岸和田市在住のAさんは、出会い系アプリを通じて中学三年生の少女(15歳)と知り合いました。
何度かやり取りをする中で、Aさんは少女に対して裸の写真を送るよう要求しました。
少女は、Aさんの要求に素直に応じ、複数のわいせつ画像を撮影し、Aさんに送りました。
画像には、少女の胸や陰部が写っていました。
後日、Aさんは少女にもらった画像を自身のホームページ上にアップし、誰でも無料で閲覧可能な状態にしました。
また、Aさんは友人の1人にホームページ上にアップしたものと同じ画像を送信しました。

Aさんは、どのような罪に問われてしまうでしょうか?
(フィクションです)

(問題となる条文)
【わいせつ物頒布等罪(刑法175条)】
「わいせつな文書、図画、電磁的記録」などを「頒布し、又は公然と陳列した」場合、「2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科」となります。

また、インターネット上などで「電磁的記録その他の記録を頒布した者」も、同様となります。

さらに、「有償で頒布する目的で」「わいせつ物」などを「所持し」「保管した」場合も、同様です。

【児童ポルノ禁止法違反(同法7条)】
「児童ポルノを提供した」場合、「3年以下の懲役又は300万円の罰金」となります(第2項前段)。
児童ポルノを提供する目的で、「児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した」場合も、同様です(第3項前段)。

また、提供する目的がなくとも「児童ポルノを製造した」場合、同様に罰せられます(第4項)。

さらに、「児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した」場合、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれらの併科」となります(第6項前段)。
不特定若しくは多数の者に提供する目的、又は公然と陳列する目的で「児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、輸入し、輸出」した場合も、同様に罰せられます(第7項前段)。

わいせつ画像等要求罪(刑法182条)】令和5年7月13日より改正法施行

刑法改正により16歳未満の者に対する面会要求等が刑法によって処罰される対象になりました。

本件での少女は15歳で16歳未満の者にあたるため、胸や陰部といった性的な部位を露出した姿態を撮影させてその画像を送信することを要求する行為は1年以下の懲役(拘禁刑)又は50万円以下の罰金に処されることになります。

本件のAさんが少女にわいせつ画像を要求した上でその要求に応えた少女が画像を実際に送信してきた場合には、本罪ではなく上記児童ポルノ製造罪等が成立することになります。

そのため、本罪は児童ポルノ製造の未遂段階も処罰する規定といえるでしょう。

(解説)
ある文書、写真が、刑法上の「わいせつな文書」等にあたるかは、簡単に言うと全体としてみたときに主として読者の性的な興味に訴えるものと認められるかどうかという視点で判断されます。

一方「児童ポルノ」とは、18歳未満の者を対象とした性行為の様子・18歳未満の者の裸などが写った写真・電磁的記録などのことを言います(児童ポルノ禁止法第2条3項)。

ここからはAさんが行った行為について解説していきます。
問題となる行為としては、
①少女にわいせつな画像を撮影させたこと、
②わいせつ画像を自身のホームページにアップしたこと、
③わいせつ画像を友人に送信したこと
の3つが挙げられます。

まず、Aさんが、①少女にわいせつな画像を撮影させたことが法律上どのように評価されるかということですが、これは児童ポルノの「製造」に当たると考えられます。
たしかに、実際に撮影をしたのは少女自身ですが、法律の目的はあくまで児童を守ることであって児童を罰することではありませんから、Aさんが少女を利用してわいせつ画像を「製造」したと捉えて、児童ポルノ製造罪の成立を認めているのです。

次に、②わいせつな画像をホームページ上にアップするという行為についてですが、これは前述した2つの罪のいずれにおいても、「公然と陳列した」として罰せられます。
公然と陳列した」とは、わいせつ画像を「不特定又は多数の人に認識しうる状態に置くこと」をいいます。
通常、ホームページは、不特定多数の人がアクセスし閲覧できるものですから、そこに児童ポルノの画像をアップした以上「公然と陳列」したと言えるでしょう。

最後に、③友人にホームページにアップした物と同じわいせつ画像を送った行為についてですが、わいせつ物頒布罪には当たらないものの、児童ポルノ単純提供罪には当たるものと考えられます。
このような結論になる理由として、刑法上のわいせつ物の「頒布」罪は、「不特定又は多数の人に」画像を渡すことを意味するのに対して、児童ポルノ禁止法上の児童ポルノの「提供」罪は「特定の個人に対して渡すこと」だけで犯罪が成立するからです。

以上より、今回のケースでは、Aさんに児童ポルノ製造罪(児童ポルノ禁止法7条4項、2項)、児童ポルノ不特定多数提供罪(同条6項)、児童ポルノ単純提供罪(同条2項)、及びわいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項)が成立するということになるでしょう。

わいせつ画像・児童ポルノ提供事件などにおける弁護活動

1 犯罪不成立の主張

わいせつ画像・児童ポルノ提供事件などで、有罪とならないためには、捜査機関に対して、わいせつ画像の所持目的があくまで個人的な範囲に過ぎなかったことや画像に写っている対象者が18歳未満であると知らなかったこと、わいせつ画像を流出・流通させる意図がなかったことなどを客観的証拠に基づいて説得的に主張していかなければなりません。

そのためには、法律の専門家である弁護士を有効に活用していかなければなりません。
事件に巻き込まれてしまったら、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

2 早期の示談成立

わいせつ画像・児童ポルノ提供事件などでは、法律上の被害者ではないものの、被写体となった人との示談の成立は極めて重要な弁護活動となります。

示談による解決で事件化(警察介入)を防ぐことができ、また不起訴処分、無罪判決、執行猶予判決など事件前の生活を取り戻しやすい解決を得ることができます。
また、早期に示談が成立すれば、勾留を防ぐことができるなど早期の身体解放につながりやすくなります。

もっとも、被写体となった人が未成年である場合、実際に示談交渉する相手は、その児童の保護者ということになります。
こうした場合、一般的に本人との示談交渉よりも難航する場合が多いと言えます。

また無理に示談交渉を進めてしまうと、かえって本人やその保護者の方を傷つけてしまったり、怒らせてしまったりして状況を悪化させてしまうことがあります。
早期の示談をお望みの場合、できるだけ早く弁護士に依頼し、当事者双方ともに納得のいく解決を目指しましょう。

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