具体例
ケース1
愛知県在住のAさんは、大阪に仕事で出張した際、スマートフォンの出会い系アプリを介し16歳の少女V1と知り合い、大阪市東住吉区の近鉄南大阪線矢田駅近くのホテルでV1に対し2万円を渡し、性的な関係を持ちました。
(フィクションです)
ケース2
Aさんは、大阪を訪れた際、大阪府池田市内にあるホテルで17歳の少女V2と性的関係を持ちました。
そのときは、何ら金銭の授受などは行われませんでした。
V2は、Aさんが勤める会社の大阪支店でアルバイトをしており、以前、Aさんが大阪支店に出張で訪れた際に知り合いました。
それぞれのケースでAさんは、いかなる罪に問われるでしょうか?
(今回のケースは大阪で事件が発生していることに注意してください。その他の都道府県で事件が発生した場合は、条例の内容が今回のケースと異なる場合があります。)
(フィクションです)
問題となる条文
【児童買春・児童ポルノ禁止法4条、2条2項】
「児童買春をした」場合、「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」になります。
【児童福祉法34条1項6号、60条1項】
「児童に淫行させた」場合、「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」となります。また、場合によっては両方の刑が科される場合があります。
【大阪府青少年健全育成条例39条1号、同条2号、52条】
「青少年に金品その他の財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で、少年に対し性行為又はわいせつな行為を」した場合、又は「青少年に対し、威迫し、欺き、若しくは困惑させることその他の当該青少年の未成熟に乗じた不当な手段を用い、又は当該青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として性行為又はわいせつな行為を」した場合、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります。
もっとも、この規定は児童ポルノ法で規定される児童買春の適用がある場合には、適用されません。
解説
ここでいう「児童」・「青少年」とは18歳未満の人のことを指します。
「児童買春」とは、金銭等を渡し又はその約束をして、性交などをすることをいいます。
児童福祉法で「児童に淫行させた」というのは、児童に対して強い影響力を及ぼして性交した場合をいいます。
例えば教師が教え子に対して、その立場を利用して性行為を行った場合は児童福祉法違反に当たります。
青少年健全育成条例(淫行条例などと呼ぶこともあります)では、一般的に金銭の授受などがなくとも児童と淫行又はわいせつな行為を行っただけで処罰の対象とされることが多いです。
しかし、大阪府では財産上の利益やその他役務・職務の供与などを条例違反の要件にしていますので注意が必要です。
また、児童買春が問題となる場合、その行為態様によっては、別途刑法の不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪)や不同意性交罪(旧 強制性交等罪)に問われる可能性が出てきます。
例えば、児童が16歳未満であった場合や16歳以上の児童であっても同意なく性行為に及んだ場合などです。
まず、ケース1で、Aは、18歳未満の少女V1に、金銭2万円を支払ったうえ性的関係を持っています。
そこで、児童買春・児童ポルノ禁止法及び、大阪府青少年健全育成条例違反が問題となります。
このケースでは、児童買春に該当することになるので、大阪府青少年健全育成条例違反ではなく児童買春・児童ポルノ禁止法違反で処罰されることになります。
一方、ケース2で、Aは、同じく18歳未満の少女V2と性的関係を持っています。
しかし、池田市内のホテルでのAの行為について、Aは、V2に何ら金品等の供与、供与の約束などを行っていません。
そのため、児童買春・児童ポルノ禁止法違反には当たらないと言えます。
もっとも、V2と恋愛関係などになく、専ら自らの性的欲望を満足させるために性行為を行ったと認められる場合には、大阪府青少年健全育成条例39条2号に該当するため、罪に問われる可能性があります。
また、Aさんと少女との間にある種の上下関係があり、当人達がその認識の下で行為していた場合には、児童福祉法違反(強い影響力を及ぼした上での性交)に該当する可能性があると言えるでしょう。
児童買春・淫行条例違反事件における弁護活動
1 犯罪不成立の主張
18歳未満の児童と性的な関係を持ったという事実はないにもかかわらず、捜査機関からありもしない疑いをかけられ捜査対象になってしまう場合があります。
また、性的関係を持った相手が18歳未満であるとは知らずに、性行為をしてしまった場合もあります。
そのような場合には、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
弁護士が犯罪の不成立を主張し、不起訴処分の獲得や無罪判決の獲得に尽力します。
具体的には、客観的証拠を積み重ねることで、実際は被害児童と性的関係を持つに至らなかった、あるいは人違いである旨の主張をする、または実際に性的関係を持ったとしても18歳未満だとは知らなかった旨の主張をする、さらには18歳未満と知っていたが、単なる性的欲求を満たすために性的関係を持ったわけではなく結婚を前提に真剣に交際していた上での行為であった旨の主張をしていきます。
2 早期の示談成立
児童買春・淫行条例違反事件の場合、行為の相手方となった児童との示談は、事件解決にとって非常に大きな意味を持ちます。
示談が成立すれば、不起訴処分や執行猶予判決を受けやすくなったり、逮捕・勾留されていても早期に釈放される可能性が高くなったりします。
そのため、早期の社会復帰・職場復帰を実現しやすくなるのです。
ただし、児童買春・淫行条例違反事件の場合、相手方である児童は未成年ですので基本的に示談交渉の相手となるのは、児童の保護者ということになります。
一般的に被害者自身と示談交渉するのに比べて、その保護者と示談交渉する場合の方が交渉は難航します。
一般の方が自ら示談を成立させるのは非常に困難だといってよいでしょう。
早期の事件解決、早期の身体解放のためにも、示談交渉は法律の専門家である弁護士に任せること、特に刑事事件では刑事事件を多く扱っている弁護士に任せることが重要です。