具体例
ケース1
Aさんは、大阪府内のJR阪和線を走行していた電車内で女子高生のスカートの中を盗撮しました。
その様子を見ていた他の乗客がAさんを取り押さえ、次の駅で駅員に引き渡されました。
Aさんは、どのような罪に問われるでしょうか?
(フィクションです)
(問題となる条文)
【大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例6条1項1号、15条1項1号(いわゆる迷惑防止条例)】
「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で」「衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影」した場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」になります。
(ただし、これは大阪府の条例の場合です。他の都道府県の場合、異なることがありますのでご注意ください)
ケース2
Aさんは、大阪市港区の自宅内の浴室で交際中のBさんと性行為している様子を、Bさんの承諾なく動画撮影していました。
Aさんの行為は、罪に問われるでしょうか?
(フィクションです)
(問題となる条文)
【大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例6条3項2号、15条1項1号(いわゆる迷惑防止条例)】
「住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し」「みだりに、姿態を撮影」した場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」になります。
(ただし、これは大阪府の条例の場合です。他の都道府県の場合、異なることがありますのでご注意ください)
解説
ケース1及びケース2のいずれにおいてもAさんの盗撮行為が問題となります。
しかしながら、適用される規定が異なる点に注意が必要です。
このような違いが生まれるのは、上記の規定がそれぞれ異なる場面での盗撮行為を処罰対象としているからです。
迷惑防止条例は、「公衆に」とあるように、もともと「公共の場所又は公共の乗物」における盗撮行為を処罰していました。
しかし、令和3年の改正により、盗撮行為については「公共の場所又は公共の乗物」という限定が取り払われています。また、浴室などの人が通常衣服をつけない場所における盗撮行為については、「著しく羞恥させる」又は「不安を覚えさせる」方法によらない場合にも処罰の対象となっています。
また、大阪府の場合平成29年4月20日に改正条例が施行され、これまで「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」だった罰則が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に引きあがっています。
さらに、盗撮目的で人に写真機等を向け、又は設置する行為についても規制され、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に問われることになります。
もっとも、ケース2については、もう少し解説が必要かと思います。
今回のケースでAさんとBさんは交際関係にあるため、「みだりに」と言えるか疑問に思われるでしょう。
法解釈上、「みだりに」とは「正当な理由なく」とほぼ同じ意味と考えられます。
そして、盗撮行為における正当な理由とは、少なくとも撮影行為をされることを許容しているといった事情がある場合と考えられます。
そうすると、何かしらBさんも承諾の上であったという事情がない限り、正当な理由はないというべきでしょう。
なお、令和3年の改正前は、自宅浴室内での盗撮について迷惑防止条例ではなく軽犯罪法を適用して処罰していました。
しかし、軽犯罪法では「拘留又は科料」という非常に軽い刑罰しか与えることができなかったため、迷惑防止条例の適用範囲を広げることで公共の場所とは言えない場所における盗撮行為についても、公共の場所における盗撮と同様に処罰できるようになりました。
盗撮・のぞき事件における弁護活動
1 無実の証明
盗撮・のぞき行為をしていないにもかかわらず盗撮・のぞき事件の容疑をかけられてしまう場合があります。
そのような場合は、すぐに弁護士にご相談ください。
弁護士による適切なアドバイスなどを受けられなかった結果、一度でも虚偽の自白をしてしまえば、実際には盗撮やのぞきをしていないのに無実の罪を負うことになります。
盗撮・のぞき事件での冤罪を防ぐためには、被害者やその他目撃者の供述の信用性を争い、捜査機関が十分な証拠なく立件しようとしていることを強く主張していくことが必要です。
また、決して虚偽の自白をしてしまわないように注意する必要があります。
そこで、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所-大阪支部では、逮捕後すぐに容疑をかけられた本人のもとに向かい、取調べにおける適切な対応をアドバイスすると同時に、独自の捜査により新たな目撃者やその他の客観的証拠を探し出し、依頼者の無実を証明します。
2 早期の示談成立
盗撮・のぞき行為をしてしまったことについて争いがない場合でも、被害者と交渉し早期に示談が成立することで、事件化を防ぐことや、不起訴処分によって前科がつかずに済む可能性があります。
示談交渉をする際、通常、被害者が加害者本人や加害者家族に直接会ってくれることはありません。
ですから、基本的に弁護士を通じて示談交渉を行うことになります。
また、仮に被害者の方が会ってくれたとしても、再び加害者と会うことによって恐怖や怒りを増幅させてしまうことが往々にしてあります。
それではかえって逆効果になってしまいますから、やはり示談交渉は弁護士に任せるのが良いでしょう。
3 早期の身体解放
盗撮・のぞき事件で逮捕されてしまった場合、その身体拘束期間が長ければ長いほど事件のことが周りに知れ渡ってしまい、事件前の生活を取り戻すことは難しくなります。
そこで、逮捕されてしまった場合は、勾留されることを阻止し長期にわたる身体拘束を回避することが重要です。
そのためには、早期に弁護士に相談し適切な取調べ対応についてアドバイスを受けるとともに、早く身体解放してもらえるように検察官や裁判官に交渉してもらうことが必要です。
また、身元引受人の存在や反省の意思・更生の意欲があることの主張も早期釈放には効果があります。