阪神タイガースがリーグ優勝を果たし、ここ大阪は大いに盛り上がっています。
今後は、リーグ終了後に行われるクライマックスシリーズや、日本シリーズを観戦するために甲子園球場に足を運ぼうと考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで問題となるのがチケットを購入できるかです。
既にクライマックスシリーズ進出を決めている阪神タイガースの公式ホームページによりますと、クライマックスシリーズのチケットは10月8日よりインターネットで販売が開始されるようですが、激しい争奪戦が予想されます。
こういった人気のスポーツ観戦チケットについては、高額転売が予想されるため、転売行為が法律で厳しく制限されています。
そこで、今回のコラムではスポーツ観戦などの、人気チケットを高額転売すれば、どのような犯罪に抵触し、それによって追うことになるリスクについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

チケット不正転売禁止法
令和元年6月、人気のあるコンサートやスポーツイベント等のチケットを高額転売することを規制する法律、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(略称チケット不正転売禁止法)が施行されました。
この法律は、人気チケットを高額転売して利益を得ることを目的にして、チケットを購入するいわゆる転売ヤーが増え、本当にコンサートやスポーツ観戦をしたいが観戦できないというファンが増えたことを背景に、、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定に寄与するとともに、心豊かな国民生活の実現に資することを目的として施行された法律です。(一部は文化庁のホームページより引用)

対象となるチケット
まず、チケット不正転売禁止法を解説する前に、この法律が対象としているチケットについて解説ます。
法律の中で、対象としているチケットを「特定興行入場券」としています。
それでは「特定興行入場券」とは、どのようなチケットなのでしょうか。
まず前提が、興行入場券であって、不特定又は多数の者に販売されているチケットであることです。
※「興行」というのは、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせることを意味します。(同法第2条1項より引用)
先述した前提を満たした上で、以下の全てを満たすチケットが「特定興行入場券」となります。
①販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、その旨が券面(電子チケットは映像面)に記載されている。
②興行の日時・場所、座席(又は入場資格者)が指定されたものであること。
③例えば、座席が指定されている場合、購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)を確認する措置が講じられており、その旨が券面に記載されていること。
(内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン より引用)
禁止行為と罰則
それでは、チケット不正転売禁止法で規制されている禁止行為について解説します。
チケット不正転売禁止法で規制されているのは
①特定興行入場券の不正転売
②特定興行入場券の不正転売を目的とした譲り受け
です。
不正転売とは、事前に興行主から転売することの同意を得ないで、特定興行入場券を業として転売(有償譲渡)することであって、当該特定興行入場券の販売価格を超える価格で転売することです。
ここでいう「業として」とは、業者であるという意味や、転売を仕事としているという意味ではなく、反復継続する意思をもってという意味です。
これらの禁止行為を行ったとして有罪と認定されると、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又は拘禁刑と罰金刑の両方が科せられます。
チケット不正転売禁止法違反となるケース
このように、単に、コンサートやスポーツ観戦等のチケットをネット等で転売したからといって、必ずチケット不正転売禁止法違反となるわけではありません。
まず転売したチケットがチケット不正転売禁止法でいうところの、「特定興行入場券」に該当するかどうかが、問題となり。
「特定興行入場券」に該当していた場合は、その転売が、チケット不正転売禁止法でいうところの「不正転売」に当たるかどうかがポイントとなるのです。
「特定興行入場券」に該当しないチケットを、不正転売したとしても、チケット不正転売禁止法違反は成立しませんし、逆に「特定興行入場券」に該当するチケットだったとしても、公式に購入した際の金額や、それより安い金額で転売している場合は、この法律でいう不正転売に該当しないので、当然、チケット不正転売禁止法違反は成立しません。
過去の事件

(ケース1)宝塚歌劇団のチケットを大量に不正転売し逮捕された事件
宝塚歌劇団の会員として正規で購入した公演チケットを、数か月間にわたってネット上で不正転売していた女性が逮捕された事件です。
逮捕された女性は、正規で購入した公演チケット3枚(計2万4000円)を転売サイトに出品し、に計11万5000円で転売した疑いで逮捕されましたが、ネット上には100枚以上売買した記録が残っているようです。
逮捕された女性は、警察の取調べに対して「簡単にネットで売れたので、ここまで大事になるとは思っていなかった」と供述しているようです。
(参考記事は こちら )
(ケース2)チケット転売で公務員が逮捕された事件
東京都の職員が、約3か月間にわたって、プロ野球オールスター戦や宝塚歌劇団のミュージカルのチケットを転売したとして逮捕された事件です。
この職員は、2万5,100円相当のチケットを5万6,500円で転売したとされています。
またこの職員は1,679回にわたって3,216枚のプロ野球やコンサートのチケットを転売し、約4,700万円の売上を得たとみられています。
(参考記事は こちら )
(ケース3)メジャーリーグの観戦チケットを不正転売して逮捕
メジャーリーグの、東京シリーズのチケットの不正転売が摘発された珍しい事件です。
逮捕された男性は、東京ドームで行われた ドジャース対巨人の定価8万円のチケットを、転売サイトを通じて応募した男性に1枚27万円で2枚、不正転売したようです。
この他にも逮捕された男性は、プロ野球や、ワールドベースボールクラシックのチケットを定価の約3倍の値段で不正転売した容疑があり、約140万円を売り上げたとみられるといいます。
(参考記事は こちら )
ここで紹介したのは、あくまでもチケット不正転売禁止法違反で警察に逮捕された事件の紹介で、その後の、逮捕された人たちがどういった刑事罰を受けたのか等の処分については分かりませんでした。
しかしどの事件も、ネット上で個人間取引していることを考えると、ネット上の、フリマサイトの履歴や、銀行口座の入出金状況、また購入者からの事情聴取によって不正転売の客観的証拠の裏付けは容易にできると考えられます。
そういう意味では、検察官が起訴し、公判を維持して有罪を得るだけの証拠は十分に存在することが予想されるので、何らかの刑事罰を受けているのではないでしょうか。
どうして刑事事件化するの?
先ほど紹介したのはニュースサイト等で公表されているチケット不正転売禁止法違反事件のごく一部です。
実際に、警察が検挙しているチケット不正転売禁止法違反事件は相当数に及ぶと予想できます。
そもそも双方(売り手と買い手)が納得して行われる個人間取引がどうして刑事事件にまで発展するのかという事に疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで、警察がチケット不正転売禁止法違反事件を取り締まる理由と、警察にチケット不正転売禁止法違反事件が発覚するケースについて解説します。
チケット不正転売禁止法違反事件を取り締まる理由
そもそもチケット不正転売禁止法は、興行入場券の適正な流通を確保することを目的の一つとして作られた法律です。
もしこの法律を無視して、人気のある興行のチケットの不正転売が横行してしまうと、当然、不正転売によって利益を得ることを目的にした転売ヤーによる買い占めが起こり、本当にチケットを必要とする人たちが正規にチケットを購入するのが困難になります。
そして、正規にチケットを購入できなかった人たちは、興行主が定めた正規の値段の何倍もするチケットを購入するしかなくなるのです。
そうなってしまうと、もはや興行主が定めた適正価格でチケットが流通しなくなり、ゆくゆくは興行そのものにも影響を及ぼしかねません。
そういった事態を避けるために警察はチケットの不正転売を取り締まっています。
チケット不正転売禁止法違反事件が発覚するケース
チケット不正転売禁止法違反事件を警察が捜査するきっかけとなるほとんどが、警察独自のサイバーパトロールと興行主等からの告発です。
チケットを転売する側としては、フリマサイトなどにチケットを売る旨の投稿をしなければ不特定多数の購入者を募るのができないので、どうしてもネットを利用せざるを得ないので、警察にも発見されやすくなってしまいます。
また興行主が、自身の興行チケットを不正転売されている事実を把握すれば、興行の運営のためにも警察に告発するのは当然のことです。
チケットを転売する際の注意点
まず前提として、最初から転売目的でチケットを購入しない方がよいでしょう。
そして、チケットを購入したがどうしても行けなくなった場合は、興行主の公式ホームページ等に掲載されている手続きに従って払い戻し等することが安全です。
それでも転売をする場合は、転売しようとするチケットが「特定興行入場券」に該当するかどうかをよく確認しましょう。
ただ、ご自身で手元にあるチケット(電子チケットを含む)に記載されている内容をよく読んでも、そのチケットが「特定興行入場券」に該当するかどうか判断できない場合があります。
そんな時は、興行主の公式ホームページ等で確認することが大切です。
購入者の刑事責任は?
ここまでチケットを不正転売した人にどういった刑事責任が及ぶ可能性があるのかや、不正転売を取り締まる法律、チケット不正転売禁止法違反について解説しました。
最後に、不正転売されたチケットを購入した側に及ぶ可能性のある刑事責任について解説していきます。
チケット不正転売禁止法には、不正転売されているチケットを、自分で利用する目的であれば、基本的に刑事責任を問われることはありません。
ただ不正転売されているチケットを購入し、そのチケットを利用することで刑事責任を問われる可能性が出てくるので注意しなければいけません。
例えば、不正転売されている、興行主から正規ルートで購入した人しか利用できない旨が記載されている「特定興行入場券」を利用して、購入者と偽ってその興行会場に入場しようとすれば、興行主を騙したとして詐欺罪に問われる可能性もありますし、そういった不正行為により会場にはいれば建造物侵入の罪に問われる可能性も出てきます。
またこういった刑事責任だけでなく、不正転売によって購入したチケットを利用することによって、興行主から入場を断られたりする可能性も出てきます。
近年、人気のあるコンサートやスポーツの会場では、入場時のチケット確認が非常に厳しくなっているので、注意が必要でしょう。
高いお金を払ったのに利用できなかったとなれば、経済的な損失は相当なものです。
チケット不正転売禁止法を扱っている弁護士
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部では、チケット不正転売禁止法違反など、刑事事件に関するご相談を初回無料で承っております。
ご自身の行為が何かの犯罪に抵触しているのでは?警察に呼び出されて取調べを受けている等、刑事事件に関するご相談であれば制限はありません。
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