具体例
ケース1
大阪市阿倍野区在住のAさんは、自分で使用する目的で大麻草を自宅で栽培していました。
しかし、近畿厚生局麻薬取締部(いわゆるマトリ)から自宅の捜索を受け、大麻草を栽培していた鉢植えなどが押収され、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)
(問題となる条文)
【大麻草の栽培の規制に関する法律24条1項】
「大麻草をみだりに栽培した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。」した」場合、「5年以下の懲役」となります。
(解説)
大麻に関する犯罪は、これまで大麻取締法という法律で処罰されてきました。
令和6年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の一部が施行され、大麻について、その栽培に関する規制を「大麻草の栽培の規制に関する法律」で、それ以外の大麻の、輸入、輸出、製造、所持、譲り受け、譲り渡し及び使用といった行為は「麻薬及び向精神薬取締法」により処罰されることになりました。
大麻の栽培は、単純な栽培が1年以上10年以下の懲役、営利目的の栽培が1年以上の有期懲役若しくは情状により500万円以下の罰金又はその両方が科されることになります。
大麻に関する犯罪は、若者を中心に逮捕件数が非常に多くなっています。
また再犯者が非常に多いことも特徴です。
このような現状から、大麻に対する規制を強化するために、これまで大麻関係を規制していた大麻取締法が改正されました。
ケース2
大阪市北区に在住のBさんは、アメリカ村で友人らと大麻リキッドを吸引していたところを、大麻の臭いがするとの通報を受けて駆け付けた警察官から職務質問を受け、大阪府南警察署まで連行され、所持していた大麻リキッドから大麻成分が検出されて、逮捕されました。その後、採尿した尿からも大麻成分が検出され、大麻の所持と使用の罪で大阪地方検察庁に送致されました。
(フィクションです)
(問題となる条文)
【麻薬及び向精神薬取締法66条1項】
「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第六十九条第四号若しくは第五号又は第七十条第五号に規定する違反行為をした者を除く。)は、七年以下の懲役に処する。」
【麻薬及び向精神薬取締法66条の2第1項】
「第二十七条第一項又は第三項から第五項までの規定に違反した者は、七年以下の懲役に処する。」
(解説)
これまで、大麻は麻薬とはされていませんでしたが、令和6年12月12日からは、麻薬及び向精神薬取締法で、大麻も麻薬として規制されることになりました。
そのため、大麻の単純所持はこれまで5年以下の懲役でしたが、今後は7年以下の懲役まで科せるということになり、処罰が重くなります。
また、大麻の使用については、大麻取締法では規制されていませんでしたが、今後は使用についても処罰の対象となります。(なお、麻薬及び向精神薬取締法では「使用」のことを「施用」と表現しています。)
今後は、大麻の現物が見つからなかったとしても、採尿の結果、尿から大麻成分か検出されれば、大麻使用(施用)として処罰されることになるでしょう。
大麻における弁護活動
1 違法薬物であることの認識がなかったことを主張する
大麻事件では、犯行当時違法薬物であることの認識があったかどうかが重要なポイントになります。 大麻などの薬物の存在に気づいていなかった・違法薬物とは思わなかったといった事情を客観的な証拠に基づいて主張・立証します。
こうした主張が認められると、大麻所持などの犯罪が成立していないとして不起訴処分や無罪判決を勝ち取れる可能性があります。
2 捜査段階で重大な違法行為があったことを主張する
仮に大麻を所持等していたとしても、違法な捜査で収集した証拠では被告人を有罪にすることは出来ません。
ですから、職務質問・所持品検査・採尿・採血・捜索・差押え・逮捕・取調べなど捜査機関が行う刑事捜査の過程で看過しがたい重大な違法行為があれば、その点を指摘し、違法な捜査に基づき収集した証拠を裁判で使用しないよう、主張します。この主張が認められれば、不起訴処分や無罪判決を勝ち取ることができます。
3 情状弁護
違法に大麻を所持や使用したことに争いがない場合、違法行為の成立を争わずできる限り量刑を軽減するように弁護活動を行います。
具体的には、大麻への依存や常習性がないこと・再犯の防止策を講じていること・共犯事件の場合あくまで従属的な立場であったことなどを客観的証拠に基づいて主張します。
減刑や執行猶予付き判決を獲得するには、ご家族や周囲の方の協力を得ながら、薬物犯罪に2度と手を染めない具体的な対策の実施や環境づくりが重要です。
4 身体解放活動
逮捕・勾留されてしまった場合、証拠隠滅や逃亡を疑うに足りる相当な理由がないこと・逮捕手続が違法であったことなどを主張し、早期の釈放・保釈を目指します。