大麻の密輸について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
◇事件◇
大阪市生野区で貿易業を営んでいるAさんは、5年ほど前に、商品の仕入れでヨーロッパに出張した際に、初めてマリファナを使用しました。
マリファナを使用した時の快感を忘れらないAさんは、その後、海外に出張するたびにマリファナを使用するようになり、3年前からは、海外で購入したマリファナを、手荷物に隠して日本に持ち込んで、日本で密売を始めました。
インターネットの掲示板で希望者を募って、事前に代金を銀行口座に振り込んでもらい、指定されば住所にマリファナを郵送する手口でマリファナの密売をしていたAさんは、マリファナの密売でこれまで500万円ほどの利益を得ています。
海外で購入したマリファナを、海外から直接郵送することもあれば、一度、日本に持ち帰って郵送することもありました。
これまで、近畿麻薬取締局によって内偵捜査されていることを知らなかったAさんは、海外から密輸入した1キロもの大麻を、大阪市生野区の自宅に隠し持っており、3日前に、捜査員に踏み込まれて逮捕されてしまいました。
現在、Aさんは、半年ほど前に、大阪府内の男性に大麻を密売した容疑で、逮捕、勾留されていますが、今後のことが不安で、薬物事件に強いと評判の弁護士を選任しました。
(フィクションです)
◇麻薬特例法◇
~麻薬特例法とは~
麻薬特例法とは「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」の略称です。
この法律は、薬物犯罪による薬物犯罪収益等をはく奪すること等により、規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を国際的な協力の下に排除することの重要性にかんがみ、並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り、及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、薬物犯罪を規制する法律に定めるもののほか、これらの法律その他の関係法律の特例その他必要な事項を定めるものです。
◇麻薬特例法で規制されている薬物◇
麻薬特例法で規制されている薬物とは、麻薬及び向精神薬取締法で規定されている麻薬及び向精神薬、大麻取締法に規定されている大麻、あへん法に規定されているあへん及びけしがら並びに覚せい剤取締法に規定されている覚せい剤です。
麻薬特例法でいう「薬物犯罪」とは、業として行う密輸入等の罪、規制薬物としての物品の輸入等の罪、あおり又は唆しの罪等です。
◇大麻の密輸入◇
昨日、解説したように、営利の目的で大麻を外国から密輸入すれば、大麻取締法でいう、営利の目的の大麻輸入罪に抵触します。
しかし、この行為を反復継続することによって、麻薬特例法でいうところの「業として行う大麻の輸入」となる可能性が高いです。
『大麻取締法でいう「営利の目的」』=『麻薬特例法でいう「業として」』
ではありませんが、営利目的の大麻輸入事件の犯人が、麻薬特例法違反で起訴された事件があるほど、営利目的の大麻輸入と、業として行う大麻輸入は非常に近いものです。
そして、ここで大きく違うのはその罰則です。
麻薬特例法が適用された場合、その法定刑は「無期又は5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」が適用されます。
裁判員裁判の対象事件となる非常に厳しい法律違反です。