~事件~
Aさんは、大阪市内で水道工事を手掛ける工務店を経営しています。
先日、トイレの配管工事で訪れた大阪市平野区の小学校の女子トイレに、盗撮用の小型カメラを設置しました。
カメラを設置したのは1週間前で、昨夜、小学校に忍び込んでカメラを回収しようとしましたが、カメラが無くなっていました。
Aさんは、警察に逮捕されるのではないかと不安で、大阪で刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に相談しました。
(フィクションです)
【盗撮行為】
大阪府迷惑防止条例(大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)で盗撮を禁止しています。
大阪府迷惑防止条例で禁止されている盗撮行為は
◇第6条第1項第2号◇
公共の場所、乗り物において衣類等で覆われている内側の人の身体又は下着を盗撮する行為。
スマートフォン等を使用して女性のスカートの中を盗撮すれば、この条文が適用されます。
◇第6条第1項第3号◇
特殊なカメラを使用して透視する方法で、衣類等で覆われている内側の人の身体又は下着を盗撮する行為。
◇第6条第2項◇
公衆浴場や、公衆トイレ、公衆の更衣室など、通常衣類の全部または一部を着けないでいる場所にいる人を盗撮する行為。
小学校のトイレも、この条文でいう公衆トイレに分類されます。
◇第6条第3項◇
上記第6条第1項に該当す公共の場所以外で、不特定多数の人が出入りする場所において、衣類等で覆われている内側の人の身体又は下着を盗撮する行為。
◇第6条第4項◇
上記の盗撮をする目的で、カメラ等の撮影機を人に向けたり、カメラを設置する行為。
です。
【盗撮行為の罰則規定】
大阪府迷惑防止条例(大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)で禁止されている上記5つの盗撮行為に対して
◇第6条第1項第2号・第6条第1項第3号・第6条第2項・第6条第3項◇
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
◇第6条第4項◇
6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
の罰則が規定されています。
初犯であっても、被害者と示談ができなければ略式起訴されて罰金刑が科せられる可能性が高く、再犯の場合は、起訴されて刑事裁判で処分が言い渡されます。
逆に、被害者と示談し許しを得ることができれば、再犯であっても不起訴処分といったかたちで前科を免れれる可能性があります。
【Aさんの事件】
Aさんの事件を検討します。
まず小学校の女子トイレにカメラを設置する行為が、大阪府迷惑防止条例の第6条第4項に抵触するでしょう。
またカメラを回収されているのでAさんは確認できていませんが、設置したカメラに生徒等人の姿が写っていれば、罰則規定の重い第6条第2項の適用を受けます。
~迷惑防止条例以外で抵触する可能性のある法律~
◇児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)◇
設置したカメラに小学生の排泄等の状況が撮影されていた場合は、児童ポルノ法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)に抵触する可能性があります。
児童ポルノ法では、衣類の全部または一部を着けない18歳未満の者の姿態であって、殊更に性的な部位が露出又は強調され、かつ性欲を興奮させ又は刺激するものを「児童ポルノ」と定義しています。
そして児童ポルノ法では、児童ポルノを密かに製造することを禁止しているのですが、小学生の排泄状況を盗撮する行為は、これに該当する可能性が大です。
児童ポルノ法違反が適用された場合の罰則規定は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」と、大阪府迷惑防止条例違反よりも重いものです。
◇建造物侵入罪(刑法第130条)◇
盗撮用のカメラを設置した際は、トイレの配管工事という名目があったので、建造物侵入罪でいう「正当な理由がない」に該当しないかも知れませんが、少なくとも、設置した盗撮用カメラを回収に小学校に忍び込んだ行為には「建造物侵入罪」が適用されるでしょう。
建造物侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。