傷害事件の教唆犯

2018-12-30

~事件~

Aさんは、高石市で従業員十数人の建設会社を経営しています。
先日、居酒屋で従業員全員が参加して忘年会を開催したところ、酒に酔った若い従業員二人が口論を始めました。
この二人は普段から仲が悪く、仕事中にもよくトラブルを起こしており、そのことにうんざりしていたAさんは、二人の従業員を居酒屋の外に連れ出しました。
そして「二人とも思う存分殴り合え。勝った方を来年から現場監督にしてやる。やらないなら二人ともクビだ。」と言って、二人に殴り合いの喧嘩をさせたのです。
二人は、お互いに殴り合い全治2週間の傷害を負いました。
この話を聞いた従業員の家族が激怒し、この出来事を大阪府高石警察署に届け出ました。
(フィクションです。)

◇強要罪~刑法第223条~◇

今回のAさんの行為が強要罪に当たることは間違いないでしょう。
暴行、脅迫を用いて他人に義務なきことを強要するのが「強要罪」です。
Aさんの「やらないなら二人ともクビだ。」という発言は、脅迫に当たると考えられます。
そして、この脅迫を用いて、従業員の二人に殴り合いさせているので、強要罪が成立する可能性は非常に高いでしょう。
強要罪の法定刑は3年以下の懲役です。

◇間接正犯と教唆犯◇

間接正犯教唆犯は、他人を利用して犯罪を実行させるという点では共通の性格を有していますが、間接正犯は、人を道具として犯罪を実行させていることから、原則的に実際に犯行を行った者は刑事責任を負わず、刑事責任を問われるのは利用者だけです。
その反面、教唆犯は、責任能力のある他人を教唆して、特定の犯罪の実行を決意させ、かつ実行させるもので、その刑事責任は、行為者と利用者の両方に科せられる、いわゆる共犯の一形態です。
それでは、犯罪を強要した場合、強要した者にどのような刑事責任が及ぶのかを検討します。
①強要に至る脅迫が、相手方の意思決定の自由を失わせるものであるときは、実行された犯罪(今回の事件の場合は傷害罪)の間接正犯と強要罪の刑責を負うでしょう。
②強要に至る脅迫が、意思決定の自由を抑圧するに至らないときは、実行された犯罪(今回の事件の場合は傷害罪)の教唆犯と強要罪の刑責を負うでしょう。
 
今回の事件でAさんは、「やらないなら二人ともクビだ。」と言って従業員を脅迫しています。
この脅迫が、二人の従業員の意思決定にどの程度影響したのかによりますが、この程度の脅迫で、二人が意思決定の自由を失ったとは考えるのは難しいでしょう。
実際にこの様な形態の間接正犯の成立を認めた判例は少なく、例えば殺傷能力の高い凶器を突き付けられて脅迫された場合や、実際に暴行されて、従わななければ更にひどい危害を加えられるかもしれないときなどのように、意思決定の自由を強度に抑圧する場合において、間接正犯が認められるものと解されています。
つまり今回の事件を考えると、Aさんに強要されて殴り合いをした二人の従業員は、傷害罪の刑責を免れることは難しく、お互いに傷害罪の刑責を負うことになります。

◇Aさんの刑事責任◇

Aさんは、傷害罪の教唆犯と、強要罪の刑責を負うことになり、この二つの罪は観念的競合となる可能性が非常に高いでしょう。
観念的競合は、刑を科する上で一罪として扱われ、数個の罪のうち、最も重い罪の法定刑によって処断されます。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は、50万円以下の懲役」で、脅迫罪の法定刑は上記のとおり「3年以下の懲役」です。
重い方の傷害罪の法定刑が適用されるので、Aさんは、起訴されて有罪が確定すれば15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。

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大阪府高石警察署までの初回接見費用:38,200円