~ケース~
大阪市内において、特定の民族の名誉を毀損する内容の街宣活動を行ったとして、活動団体の幹部Aが、名誉毀損罪で起訴されました。(この事件は、平成30年4月24日の京都新聞の掲載記事を参考にしたフィクションです。)
近年、ヘイトスピーチが社会問題になっていますが、先日、ある活動団体のヘイトスピーチに対して名誉毀損罪が適用され、同団体幹部が名誉毀損罪で在宅起訴されました。
この事件を、大阪の刑事事件に強い弁護士が解説します。
1 街宣活動
政治、宗教、人種、思想等に関して、自らの主張をしながら、街中を街宣する街宣車を目撃した事のある方も多いと思います。
街宣活動自体は、日本国憲法が保障する基本的人権『集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由』で認められており、道路上で街宣活動を行う場合には、きちんと警察に届け出て、管轄警察署長の許可を得た上で、定められたルール内で行う事には問題ありません。
ただ、無許可で街宣活動を行えば、道路交通法違反に抵触するおそれがあり、街宣の音量や、その態様によっては、各都道府県の迷惑防止条例等に抵触するおそれがあるのです。
2 ヘイトスピーチ
そんな街宣活動の中でも特に、過激な表現を用いて、特定の集団に対して攻撃的な発言をする事をヘイトスピーチと言います。
その内容は、人種や民族、宗教等に関して差別する内容が多く、近年、日本では社会問題化されており、平成28年には、ヘイトスピーチ規制法(解消法)【正式名称:本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律】が施行されています。
ただ、この法律はヘイトスピーチを禁止したり、ヘイトスピーチに対して罰則を定めているものではありません。
そのため、現行の法律で、ヘイトスピーチを取り締まるには侮辱罪や、名誉毀損罪を適用するしかないのです。(街宣活動のやり方によっては、威力業務妨害罪が適用された事もある。)
3 名誉毀損罪【刑法第230条】
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損すれば名誉毀損罪に抵触し、起訴されて有罪が確定すれば「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」が科せられる事となります。
過去には、街宣活動やヘイトスピーチで、威力業務妨害や侮辱罪に問われた事件はありますが、名誉毀損罪で立件するのは珍しい事です。