昨年、覚せい剤使用事件の刑事裁判で、採尿における任意捜査のあり方が争点となり、大阪府警察の違法捜査が認められて無罪判決が言い渡されました。
この事件を、大阪の刑事事件に強い弁護士が解説します。
~事件~
覚せい剤の使用を疑われた男が警察官に職務質問され任意採尿を求められたが、男はこれを拒否した。
警察官は強制採尿令状を請求する手続きを開始すると共に、男を動静監視した。
その後、男は自ら要請した救急車で病院に搬送されたが、病院まで警察官が付いてきて動静監視を続けた。
男は、その場から立ち去ろうと走り出したが、すでに強制採尿令状が裁判所から発付されていたために、動静監視していた警察官に羽交い絞めにされて取り押さえられた。
そしてその後、強制採尿の令状を示された男は自ら尿を提出し、覚せい剤の使用で逮捕された。(大阪地方裁判所 平成29年3月24日の判決文参考)
~任意捜査の範囲を超える違法捜査~
任意採尿を拒否すると、警察官は強制採尿の令状を、最寄りの裁判所に請求することがあります。
その場合、裁判所までの距離にもよりますが、強制採尿の令状が発付されるまでに要する時間は、警察官が裁判所に提出する請求書類を準備する時間も含めて、軽く2時間以上はかかります。
その間、採尿を求められている人を拘束する法的な根拠はなく、警察官も強制的に対象者をとどめおくことはできません。
しかし、任意捜査の範囲であれば、警察官が対象者の動静監視することは認められています。
今回の事件では、強制採尿の令状を執行するまでに、警察官が男を羽交い絞めにする等、とどめおく方法が著しく任意捜査の範囲を超えているとして、警察官の行為が違法と認定されました。
~無罪の獲得~
刑事裁判では、大阪府警察の警察官が、任意捜査の範囲を超えた違法捜査だと認定され、その後に採尿した尿を違法収集証拠とし、尿の鑑定書の証拠能力を否定しました。
覚せい剤使用事件の刑事裁判で、任意捜査の違法性が争われることがよくありますが、違法性を立証するのは非常に困難ですし、違法性が認定されたとしても、それが無罪判決に結び付くとは限りません。
大阪府警察の捜査に疑問のある方、覚せい剤使用事件で無罪判決を望む方は、刑事事件に強い、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。