かつて、大阪府東警察署の警察官が、遺失物横領罪で取調べ中の容疑者に対して違法な取り調べをしたとして、脅迫罪で有罪判決を受けました。
当時、この事件はテレビのニュース等の大きく報道され、警察の取調べが社会問題にもなりました。
この事件がきっかけとなって全国の警察では、被疑者の取調べの適正化が強化され、取調べに際しての規則が見直されました。
これが「被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則」です。
この規則によりますと
①やむを得ない場合を除き、身体に接触すること
②直接または間接に有形力を行使すること
③殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること
④一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること
⑤便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること
⑥人の尊厳を著しく害するような言動をすること
を監督対象行為と位置づけ、基本的に取調べで行ってはいけないとしています。
また、許可なく
①午後10時~翌午前5時の取調べ
②一日につき8時間を超える取調べ
を禁止しています。
はたして今の警察の取調べにおいてこれらのルールが守られているのでしょうか?
ある元大阪府警の刑事によりますと「東署の事件以降、取調べに対する内部規則が強化されたことは確かで、捜査を担当しない係の者が取調室を覗き見て監督しています。しかし、まったく違法な取り調べが行われていないかと言えば、そうでもないでしょう。実際に、東署の事件以降も、行き過ぎた取調べが問題になったことは何度もあります。」とのことです。
確かに、大阪府東警察署の事件以降もテレビのニュース等で違法な取り調べが報じられたこともありますし、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、「取調べで刑事から脅された。」などといった相談がよくあります。
一番よく耳にするのが、警察官から「認めたら逮捕しないからとい言われたので、仕方なく認めました。」という話です。
後の裁判で、警察の取調べにおいて作成された供述調書の内容を争うことができますが、一度、署名、指印してしまった供述調書の内容を覆すことは非常に困難なことです。