会社員Aは、一般道で信号無視をして、横断歩道を歩いていた女性をはねて死亡させる死亡事故を起こしてしまいました。
逮捕から20日間の勾留を経て「危険運転致死傷罪」で起訴されたAは、刑事裁判に強い弁護士を弁護人として選任しました。
(この事件はフィクションです。)
昨日、「危険運転致死傷罪」と「過失運転致死傷罪」について、大阪の刑事事件に強い弁護士が解説しました。
さて本日、まずは「危険運転致死傷罪」でいう『危険な運転』について解説します。
危険な運転
危険運転致死傷罪では
①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で運転する行為
②制御することが困難な高速度で運転する行為
③制御する技能を有しないで運転する行為
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行車両の前に急な割り込みをしたり、幅寄せをして、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する行為
⑤赤信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する行為
⑥通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する行為
を「危険な運転」として定めています。
今年発生した「東名高速道でのあおり運転による夫婦死亡事故」は、この④に該当すると考えられます。
今回のAが起こした死亡事故は⑤に該当すると考えられます。
過失運転致死傷罪の量刑
昨日解説したように、危険運転致死傷罪には、相手を負傷させた事件で「15年以下の懲役」、死亡させた事件で「1年以下の有期懲役」の罰則規定があります。
危険運転致死傷罪の刑事裁判では、検察官は非常に重たい実刑判決を求刑し、その結果、非常に厳しい判決が言い渡されることが多くあります。
しかし、先に説明した『危険な運転』が立証されなければ、過失運転致死傷罪に訴因変更(罪名が変更されること)される場合もあり、その場合は、執行猶予付の判決であったり、求刑よりも極端に減刑される可能性が大です。
実際に、先日、大阪地方裁判所で開かれた危険運転致死罪の裁判員裁判では、当初検察官が懲役8年を求刑しましたが、その裁判で「危険な運転」であるか否か、つまり危険運転致死罪に該当するかが争われ、判決は過失運転致死罪で禁固刑が言い渡されました。