MDMAを密輸 麻薬特例法違反・関税法違反で逮捕

MDMAを密輸 麻薬特例法違反・関税法違反で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。

事例

大阪府寝屋川市に住んでいるAさんは、インターネットを通じ、外国からMDMAを国際郵便で輸入できるということを知りました。
Aさんは、「MDMAを密輸して売りさばいて稼いでいこう」と思い立ち、インターネットを経由して外国の売人と連絡を取り、自分あての国際郵便でMDMAを送ってもらいました。
しかし、荷物が関西国際空港に到着した際、近畿厚生局麻薬取締部と大阪税関の検査で荷物の中身がMDMAであることが発覚。
Aさんは、近畿厚生局麻薬取締部に麻薬特例法違反関税法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんと離れて暮らしていたAさんの両親は、Aさんが逮捕されたことを知り、Aさんの力になれないかと考え、弁護士に相談してみることにしました。
(フィクションです。)

MDMAの密輸で成立し得る犯罪

MDMAとは、合成麻薬のことで、その所持や使用は麻薬取締法という法律で禁止されています。
MDMAは、見た目はカラフルな錠剤であることが多く、特に若者などが軽い気持ちで手を出してしまいやすいと言われています。

今回のケースのAさんは、そのMDMAを販売する目的で外国から国際郵便を利用して密輸したようです。
こうした場合に成立し得る犯罪は、Aさんの逮捕容疑にもなっている、麻薬特例法違反と関税法違反の他、麻薬取締法違反が考えられます。

そもそもMDMAは、先ほど触れたように麻薬取締法によって所持や輸入が禁止されています。
ですから、MDMAの密輸についても、麻薬取締法違反となることが考えられます。

麻薬取締法第65条
第1項 次の各号の一に該当する者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
第1号 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、本邦若しくは外国に輸入し、本邦若しくは外国から輸出し、又は製造した者(第69条第1号から第3号までに該当する者を除く。)
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

「ジアセチルモルヒネ」とは、いわゆるヘロインのことを指し、MDMAなどはそれ以外の麻薬として規制を受けています。
ですから、今回のAさんのようにMDMAを販売する目的=営利の目的で密輸したような場合には、まずは麻薬取締法第65条第2項に違反する罪の成立が考えられます。

しかし、この麻薬取締法違反のケースのうち、特定の事情に当てはまる場合には、今回登場した麻薬特例法という法律に違反することになります。
麻薬特例法とは、正式名称を「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」という法律のことを指しています。

例えば、麻薬特例法には、以下のような条文が定められています。

麻薬特例法第5条
次に掲げる行為を業とした者(これらの行為と第八条の罪に当たる行為を併せてすることを業とした者を含む。)は、無期又は5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。
第1号 麻薬及び向精神薬取締法第64条、第64条の2(所持に係る部分を除く。)、第65条、第66条(所持に係る部分を除く。)、第66条の3又は第66条の4(所持に係る部分を除く。)の罪に当たる行為をすること。

麻薬特例法第5条第1号の対象には、先ほどMDMAの輸入で成立するだろうとした麻薬取締法第65条の条文も含まれていますから、MDMAの輸入が「業として」行われた場合にはこの条文に違反する可能性が出てくるということになります。
「業として」とは、大まかにいうと反復継続してこれを行うことを指します。
「業として」MDMAの輸入が行われていたのかどうかは、これまで輸入行為が繰り返されてきたのかどうか、今後も継続される予定があったのかどうか、計画性はあったのかどうか、組織的犯行だったのかどうかといった様々な事情から判断されることになります。

これらに加えて、MDMA密輸事件では、関税法違反という犯罪が成立すると考えられます。
関税法は、関税に関連した手続や貨物の輸出入など、税関手続きに関することを定めた法律です。
適正な税関手続のために、関税法の中では輸入してはいけないものを定めています。

関税法第69条の11第1項
次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
第1号 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚醒剤(覚醒剤取締法にいう覚醒剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。

前述のとおり、麻薬取締法などでもMDMAなどの麻薬といった違法薬物の輸入に関する禁止が定められていますが、関税法でもMDMAなどの違法薬物を輸入することは禁止されています。
そして、この輸入の禁止に違反した場合には、以下の条文に該当します。

関税法第109条
第1号 第69条の11第1項第1号から第6号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第3号 前二項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。
第4号 第一項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、5年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

こうしたことから、MDMA密輸事件では、麻薬取締法違反あるいは麻薬特例法違反と関税法違反が成立し得るということになるのです。
違法薬物の密輸事件、特に営利目的で行われた密輸事件は、設定されている刑罰が重いこともあり、刑事裁判に向けて十分な準備が必要とされます。
だからこそ、早めに弁護士に相談し、刑事手続の始まりから入念に弁護活動に取り組んでもらうことが大切でしょう。


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部では、MDMA密輸事件などの薬物事件にも、刑事事件を数多く取り扱う弁護士が対応します。
逮捕された方には、初回接見サービスをご利用ください。

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