万引き少年の審判について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所大阪支部が解説します。
公立高校に通うA君は、大阪市池田市のコンビニで菓子類を万引きして店員に捕まり警察に通報されました。
A君は、逮捕こそされていませんが、大阪府池田警察署に連行されて少年係の刑事さんに取調べを受けました。
実はA君は、今回の事件以外にも1カ月ほど前から万引きを繰り返して、今回捕まったコンビニ以外でも10件以上の事件を起こしています。
A君の両親は、被害届が出ていない事件も含めて全店舗に対して謝罪し、A君が万引きした商品の代金を支払いました。(フィクションです)
◇万引き◇
万引き事件は、窃盗罪となります。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですので、事件を起こしたのが成人であれば、起訴されて有罪が確定すると、この法定刑内の刑事罰が言い渡されることになります。
しかし、A君のような少年が起こした万引き事件ですと、刑事罰が科せられることはなく、少年法によって手続きが進み、最終的に審判で処分が決定します。
◇少年事件の処分◇
少年事件は、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されます。
A君の起こした万引き事件も、警察での捜査が終了すれば、一度、管轄の検察庁に送致されて、そこから家庭裁判所に事件が送致されます。
家庭裁判所では、調査官が少年本人・保護者・参考人と面接して、非行事実や審判条件について調査し、どのような処分が有効・適切かを調べます。
これを「調査」と言います。
そして、この調査結果を踏まえて審判で処分が決定するのです。
少年審判で決定する処分は以下のとおりです。
不処分
家庭裁判所は、審判の結果、保護処分に付することができないと認めた場合、または保護処分に付する必要がないと認めるときは、その旨の決定をしなければならないとされており、この決定を、不処分決定といいます。
保護観察
保護観察とは、少年を施設に収容することなく、社会の中で生活させながら、保護観察所の指導監督及び補導援護という社会内処遇によって、少年の改善更生を図ることを目的として行う保護処分のことをいいます。
児童自立支援施設等送致
児童自立支援施設送致が選択される少年は、少年院送致が選択される少年と比べると、非行性が進んでおらず、少年自身の素養よりも保護者が養育を放棄していたり、少年を虐待していたりするなど家庭環境等に問題がある場合です。
少年院送致
少年院では、特別の場合以外は外出を許さず、非開放的な施設で生活させ、規律ある生活に親しませて生活訓練を行い、規律に違反した者に対しては懲戒を行うなどして、少年に対して矯正教育を授ける施設です。
少年院送致は、少年の自由を拘束する点で保護処分のうち、最も厳しい決定といえます。
検察官送致(逆送)
家庭裁判所は、①調査あるいは審判の結果、本人が20歳以上であることが判明したとき、及び、②死刑、懲役または禁固に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分相当と認めるときは、事件を検察官に送致を決定しなければならないとされています。
◇審判不開始◇
ちなみに、調査の結果によって審判が行われない場合があります。
これを審判不開始と言います。
審判不開始を獲得するために行なう弁護活動は、以下のような活動が挙げられます。
・事件が家庭裁判所に送致される前に、弁護士が被害者と面談して、示談を成立させる。
・少年に対して指導を行い、少年の問題点を解消させる。
・事件が家庭裁判所に送致された段階で、弁護士がこれらの事情を記載した意見書を提出し、審判不開始にするよう求める。